もう一度君と…

弥生 桜香

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第七章

第七章「ハロウィン」12

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「さて、時間ね。」

 しばらくぼんやりしていた碧は藍妃の言葉にハッとなる。

「時間って。」
「ふふふ、主役は遅れてくるものよ。」
「……。」

 碧は何だか嫌な予感がするのだが、もう逃げられない所まで来てしまっている事くらい彼だって理解していた。

「…逃げたい。」

 それでも、悪あがきのように呟かれる言葉に藍妃はとても、とても美しい笑みを浮かべる。

「だ・め・よ。」
「ですよね……。」

 分かっていた、分かっていたけれども、と碧は心の中で呟く。

「さーて、お披露目、お披露目。」

 ウキウキとして歩き出す藍妃はいつの間にか着替えたのか、どこか妖艶な女性で深紅のドレスがよく似合っていた。

「俺……どうなるのかな……。」

 碧の呟きに応える人は残念ながらここには誰にもいなかった。
 そして、ガヤガヤと騒がしい庭に向かう途中で碧は怖気出す。

「ちょっと、藍妃さん、俺無理。」
「大丈夫、綺麗よ。」
「無理無理無理。」
「平気よ、男には見えないんだしね。」
「それのどこが平気なんだよ。」

 涙目になりながら、碧は必死になって壁に張り付く。

「いい加減にしなさい。男でしょっ!」
「都合がいい時ばかり男扱いしないでくれよ。」
「もう、子どもね。」
「まだ義務教育だもん。」
「……。」

 碧は壁にへばりつく事に必死になっており、藍妃の様子に気づかない。

「仕方ないわね。」

 藍妃はパンパンと手を叩くとまるでくノ一なのかと突っ込みたくなるくらい見事にその場に数人の女子が現れる。

「いい加減にしなさいよね。」
「そうそう、ドレス皺寄っちゃうじゃない。」
「皆待っているんだからね。」
「つーか、さっさと観念しなさい。」
「うあああああっ!」

 力づくで壁からはがされた碧はズルズルと庭に出る出入り口までやってくる。

「さあ、碧出なさい。」
「いやーだーっ!」

 最期の悪あがきをした碧だったが、誰かが蹴とばすように碧を外に追いやった。
 その瞬間、雄たけび越えやら、黄色い悲鳴などが上がり、ただでさえ泣き出しそうだった碧は完全に目が潤んでいた。

「マジ……誰か助けて。」

 碧の必死の祈りが通じたのか、それとも、さらなる試練を彼に与えようとしているのか、一人の男が彼の傍に近寄った。
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