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第一章
第一章「リスタート」2
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涼也は退院後、習い事に精いっぱいである意味充実した日常を過ごしていた。
「涼也。」
「ん?」
お風呂上がりで肩にタオルをひっさげ、上半身裸でウロウロする涼也を京也が呼び止める。
「筋肉ついたな。」
「そうか?」
「そうだよ、僕と全然違う。」
「まあ、鍛えているからな。」
「そう言えば、突然始めた時はびっくりしたよ。まあ、涼也の事だからすぐに止めてしまうんじゃないかな、とか思ったけど、全部続いているんだね。」
「何だと?」
涼也はブスッという顔をしたと思ったらすぐに、ニヤリと笑い京也の後ろに回った。
「涼也?」
「そんな事を言う奴はこうだっ!」
「っ!…きゃははは…止めて……ははは…。」
じゃれつくように涼也は京也の脇腹を狙ってくすぐりはじめ、くすぐったいのが苦手な京也はすぐに涙を浮かべ笑い出す。
「きょーや。」
「ははは…何だよ…というか、いい加減に…止めて…苦しい……。」
「悪い、悪い。」
完全に息の切れた京也はジトリと涼也を睨む。
「もう、酷いな。」
「悪い、悪いって。」
「……もう、何なんだよ。」
怒ってもすぐに機嫌が戻ってしまう京也は肩を竦め涼也に聞く。
「何だよって?」
「さっき、僕の名前呼んだだろ。」
「あー、忘れかけてた。」
「忘れかけて立って。」
呆れた顔をする京也に涼也はクスクスと笑う。
「悪かったって。」
「で、用件は?」
「ああ……もし、お袋たちが離婚したらどうする?」
「……。」
少し言いにくそうに言う涼也だったが、その言葉はあまりにもまっすぐで京也は刃物で傷つけられたかのように痛みを感じた。
「そんなの……。」
「ない…訳じゃないの分かっているだろう?」
「……。」
涼也の言葉に京也は俯く。
「俺が入院している時からお袋たちの仲可笑しかっただろう?」
「……うん…。」
「それに、最近二人が顔合わすといつも喧嘩しているし。」
「………うん…。」
「多分、時間の問題だと思うんだ。」
「……何で、涼也はそんな冷静なの?」
傷ついた顔をする片割れに涼也は触れてしまえば砕けてしまうガラスのように綺麗にだけど、儚く笑った。
「りょう…や?」
「冷静か、そんなつもりはないんだがな…。」
どこか退院してから大人びた彼に京也は不安になる。彼が自分の知らない誰かになってしまうかのようで、怖かった。
「俺は親父についていこうと考えている。」
「そうなんだ。」
「ああ。」
「…涼也も、母さんも、父さんも皆酷いよ。」
「……。」
「ごめん……。」
「いや…。」
「僕、部屋に戻る。」
「ああ。」
よろよろと部屋から出ていく京也の後姿を見て、涼也は唇を噛んだ。
「涼也。」
「ん?」
お風呂上がりで肩にタオルをひっさげ、上半身裸でウロウロする涼也を京也が呼び止める。
「筋肉ついたな。」
「そうか?」
「そうだよ、僕と全然違う。」
「まあ、鍛えているからな。」
「そう言えば、突然始めた時はびっくりしたよ。まあ、涼也の事だからすぐに止めてしまうんじゃないかな、とか思ったけど、全部続いているんだね。」
「何だと?」
涼也はブスッという顔をしたと思ったらすぐに、ニヤリと笑い京也の後ろに回った。
「涼也?」
「そんな事を言う奴はこうだっ!」
「っ!…きゃははは…止めて……ははは…。」
じゃれつくように涼也は京也の脇腹を狙ってくすぐりはじめ、くすぐったいのが苦手な京也はすぐに涙を浮かべ笑い出す。
「きょーや。」
「ははは…何だよ…というか、いい加減に…止めて…苦しい……。」
「悪い、悪い。」
完全に息の切れた京也はジトリと涼也を睨む。
「もう、酷いな。」
「悪い、悪いって。」
「……もう、何なんだよ。」
怒ってもすぐに機嫌が戻ってしまう京也は肩を竦め涼也に聞く。
「何だよって?」
「さっき、僕の名前呼んだだろ。」
「あー、忘れかけてた。」
「忘れかけて立って。」
呆れた顔をする京也に涼也はクスクスと笑う。
「悪かったって。」
「で、用件は?」
「ああ……もし、お袋たちが離婚したらどうする?」
「……。」
少し言いにくそうに言う涼也だったが、その言葉はあまりにもまっすぐで京也は刃物で傷つけられたかのように痛みを感じた。
「そんなの……。」
「ない…訳じゃないの分かっているだろう?」
「……。」
涼也の言葉に京也は俯く。
「俺が入院している時からお袋たちの仲可笑しかっただろう?」
「……うん…。」
「それに、最近二人が顔合わすといつも喧嘩しているし。」
「………うん…。」
「多分、時間の問題だと思うんだ。」
「……何で、涼也はそんな冷静なの?」
傷ついた顔をする片割れに涼也は触れてしまえば砕けてしまうガラスのように綺麗にだけど、儚く笑った。
「りょう…や?」
「冷静か、そんなつもりはないんだがな…。」
どこか退院してから大人びた彼に京也は不安になる。彼が自分の知らない誰かになってしまうかのようで、怖かった。
「俺は親父についていこうと考えている。」
「そうなんだ。」
「ああ。」
「…涼也も、母さんも、父さんも皆酷いよ。」
「……。」
「ごめん……。」
「いや…。」
「僕、部屋に戻る。」
「ああ。」
よろよろと部屋から出ていく京也の後姿を見て、涼也は唇を噛んだ。
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