もう一度君と…

弥生 桜香

文字の大きさ
6 / 162
第一章

第一章「リスタート」3

しおりを挟む
「……しくったな。」

 焦っていたのかもしれない。
 間違いなくあの母や父の様子を見ていれば、あの時を思い出す。
 前の母と父が離婚する半年前くらいが今の状況と瓜二つだ、そうなれば経験したよりも早く離婚になるだろう。
 修復など無理なのだ、前にどんなに涼也と京也が頑張っても無駄だったのだ、そして、今だってそれとなく両親に離婚しないで、とアプローチをしたが間違いなく流された。

「はぁ……年だけ喰っても、子どもか……。」

 手で目を覆っていた涼也の耳に電話の音が届く。

「……はい、本城です。」
「涼ちゃん、駄目じゃない。」
「雪姉…。」

 電話の相手は雪美だった。

「タイムリーすぎる。」
「そりゃ、見てたもの。」
「……そっか。」

 今あの本は雪美の手元にあり、彼女はそれを読んで現状を把握しているのだ。

「日にちがないからって焦っちゃだめだよ。」
「後三年と少しかないんだ。」
「三年もあるよ。」
「……変えられないものがあるかもしれない…それが…怖いんだ。」
「うん…。」
「この離婚騒動だってそうだ。」
「だからって、まだしてもないのにあんな話は酷だよ。」
「……だから、今後悔している。」
「涼ちゃん。」
「何?」
「ちょっと会わない?」
「今か?」
「違うよ、次の休み、土曜日か日曜日か。」
「別に大丈夫だけど。」
「よかった、紹介したい人がいるんだ。」
「ふーん。」
「その人ちょっと変わっているけど、すごく勉強になるんだ。」
「……はぁ?」

 妙に弾んだ声に涼也は顔を引きつらせる。

「雪姉。」
「何?」
「……いや、やっぱり、何でもない。」
「変な涼ちゃん。」
「……土曜と日曜どっちにする?」
「日曜にしようか?」
「日曜な。」

 涼也は近くにあったメモ用紙に日付と曜日を書く。

「で、時間は?」
「一応午前中に待ち合わせする予定になっているけど、詳しくはまた電話するね。」
「了解。」

 涼也は頷くと微かに溜息を零す。

「どうしたの?」
「いや、携帯ないって不便だな~って。」
「仕方ないよ中学生だし。」
「前もそうだったけど、高校からだからな携帯持つの。」
「そうなんだ。」
「そう、本当に携帯があったらメールとかで用件が済むのにな。」
「でも、涼ちゃんが持ったら携帯代すごくかかりそう。」
「そんな事ねぇよ。」
「どうかな?」

 涼也は頭を掻くとカレンダーを見る。

「なあ。」
「何?」
「出かけるついでに欲しいものがあるんだけど、付き合ってくれるか?」
「へぇ、涼ちゃんがモノを欲しがるって珍しいね。」
「ああ、先輩が教えてくれたCDが発売されたの確か日曜日と同じ日だったからな。」
「……何か変じゃない?」

 涼也の言葉に引っ掛かりがあったのか雪美はそんな言葉を発する。

「ああ、先輩、前の俺が務めていた時に俺の新人教育してくれた先輩がCD貸してくれてさ、すごくいい曲だったからまた聞きたいと思って。」
「ふーん、その人にわたしも会ってみたいな。」
「俺もまた会いたいよ。」

 涼也はお世話になった先輩を思い出し、微笑んだ。
 その先輩は本当に自分をよく見ていたと思う、忙しくって食事や睡眠を犠牲にしようとした時もちゃんと叱ってくれた。
 ただ、彼の瞳だけはちゃんと見た事がなかった。彼は昔嫌な事が遭ってから人の目が怖くなったと言っていた。
 だから、自分を見てくれる時も前髪で隠れていたのだ。

「涼ちゃん。」
「ん?」
「それじゃ、日曜日にね?」
「了解、それじゃ、また日曜日にな。」

 受話器を置いて涼也は背伸びをする。

「ん~、宿題しないとな~。」

 正直前の俺だったら宿題なんてギリギリまでしなかった、だけど、今は時間がもったいない。
 今少しでも余裕があるうちに面倒なものを終わらせてしまえば、必要な時に時間が作れる。
 だから、彼は自分の為にも有限にしかない時間をうまく使おうとするのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

処理中です...