109 / 162
第八章
第八章「クリスマス」2
しおりを挟む
「で、涼ちゃん。」
「……。」
家に帰宅してから一時間もしないうちに雪美がやってきて、机の上にカタログを広げる。
「……でってなんだよ。」
「クリパ、だよ、クリパ。」
「……。」
何故かウキウキしている雪美に涼也は痛む頭を押さえる。
「何で雪姉がこんなもんを持ってうちに来るんだよって言っているんだよ。」
「えー、参加できないからさ、折角だから涼ちゃんのスーツくらいは一緒に選ばせてよ。」
「何で、そうなる……。」
脱力する涼也に雪美は出されたお茶とクッキーを食べる。
「んー、涼ちゃんのクッキー美味しい。」
「そりゃよかったな。」
「あっ、そうそう、こっちも見てもらいたんだけど。」
出された女性もののドレスの写真に涼也は身構える。
「あー、大丈夫だよ、これは涼ちゃんたちに着せるものじゃないから。」
「本当にか?」
「んー。」
雪美は頷きながらお茶を飲む。
「こっちは今度シズのところでクリパがあって、その為に着る服。」
「…一応聞いておくが、誰が。」
「わたしよ。」
「……。」
涼也は色々な複雑な思いを乗せて息を吐く。
「分かったよ。」
「やったー。」
「何で、自分で決めないんだよ。」
「んー、好きな色とさ似合う色って違うじゃない。」
「まあな。」
「そんでもって、シズの所ってお坊ちゃんの学校だよ。」
「……。」
「もし、変な格好してさ、シズに恥をかかせるわけにもいかないじゃない。」
珍しく雫を想っているような事を口にする雪美に涼也は目を見張る。
「雪姉。」
「もし、シズの価値を下げたらせっかくの攻めたちが可愛そうじゃない。」
「……。」
ああ、やっぱり、雪美は雪美だったと、涼也は脱力する。
「ああ、安心して、ちゃんと、涼ちゃんと京ちゃんの旦那さんも探してきてあげるからね。」
「ブレナイな、もう……。」
本当に色々と諦めないといけないと悟り出した涼也は遠い目をしながらそんな事を言う。
「そりゃそうでしょ。」
胸を張る雪美に涼也は溜息を零し、まず自分のスーツを見る。
「なあ、雪姉。」
「何かしら。」
「これブランドもんじゃねぇかよ。」
「そうね。」
「俺、金ねぇぞ。」
「ああ。大丈夫。」
ニッコリと笑う雪美に涼也は何か嫌な予感がする。
「キサキさんがこの前のハロウィンの儲けで買ってくれるんだって。」
「ちょっと。」
「ああ、正直涼也の写真の売れ行きは微妙だったんだけど、碧ちゃんだっけ?彼の売り上げがすさまじくてそのおまけって事で。」
「……。」
涼也は色々と言いたかった。
言いたかったがきっと肖像権など言っても彼女らは色々と言いくるめ、結局自分たちが撒ける未来しか見えなかった。
「訴えてもいいけど、受けて立つわよ?」
ニッコリと壮絶な笑みを浮かべる雪美に涼也は恐怖を覚える。
「いえ、しません。」
「よろしい、無駄な労力は使いたくないものね。」
「……。」
涼也はもう色々諦め、そして、カタログに目を落とす。
その中でダークグレーのスーツを彼は選び出した。
「ふーん。」
「何だよ。」
「まあ、いいじゃないかな?」
「……。」
なんか微妙に引っ掛かりのある言葉に涼也は口を出しそうになるが、面倒になる事、間違いなしなので、結局口を噤む。
「さーて、サイズはどうする。」
「ワンサイズ大きめでいいじゃねぇか?」
「何で?」
「高校で少しでかくなったし、これ以上大きくなるとぶかぶかで不格好になるからな。」
「了解。」
雪美はカタログに付箋をつけ、サイズをメモしておく。
「それじゃ、わたしの方を見てもらう。」
涼也は軽い気持ちで頷いてしまったが、これから軽い地獄を見る事になるとは思ってもみなかった。
「……。」
家に帰宅してから一時間もしないうちに雪美がやってきて、机の上にカタログを広げる。
「……でってなんだよ。」
「クリパ、だよ、クリパ。」
「……。」
何故かウキウキしている雪美に涼也は痛む頭を押さえる。
「何で雪姉がこんなもんを持ってうちに来るんだよって言っているんだよ。」
「えー、参加できないからさ、折角だから涼ちゃんのスーツくらいは一緒に選ばせてよ。」
「何で、そうなる……。」
脱力する涼也に雪美は出されたお茶とクッキーを食べる。
「んー、涼ちゃんのクッキー美味しい。」
「そりゃよかったな。」
「あっ、そうそう、こっちも見てもらいたんだけど。」
出された女性もののドレスの写真に涼也は身構える。
「あー、大丈夫だよ、これは涼ちゃんたちに着せるものじゃないから。」
「本当にか?」
「んー。」
雪美は頷きながらお茶を飲む。
「こっちは今度シズのところでクリパがあって、その為に着る服。」
「…一応聞いておくが、誰が。」
「わたしよ。」
「……。」
涼也は色々な複雑な思いを乗せて息を吐く。
「分かったよ。」
「やったー。」
「何で、自分で決めないんだよ。」
「んー、好きな色とさ似合う色って違うじゃない。」
「まあな。」
「そんでもって、シズの所ってお坊ちゃんの学校だよ。」
「……。」
「もし、変な格好してさ、シズに恥をかかせるわけにもいかないじゃない。」
珍しく雫を想っているような事を口にする雪美に涼也は目を見張る。
「雪姉。」
「もし、シズの価値を下げたらせっかくの攻めたちが可愛そうじゃない。」
「……。」
ああ、やっぱり、雪美は雪美だったと、涼也は脱力する。
「ああ、安心して、ちゃんと、涼ちゃんと京ちゃんの旦那さんも探してきてあげるからね。」
「ブレナイな、もう……。」
本当に色々と諦めないといけないと悟り出した涼也は遠い目をしながらそんな事を言う。
「そりゃそうでしょ。」
胸を張る雪美に涼也は溜息を零し、まず自分のスーツを見る。
「なあ、雪姉。」
「何かしら。」
「これブランドもんじゃねぇかよ。」
「そうね。」
「俺、金ねぇぞ。」
「ああ。大丈夫。」
ニッコリと笑う雪美に涼也は何か嫌な予感がする。
「キサキさんがこの前のハロウィンの儲けで買ってくれるんだって。」
「ちょっと。」
「ああ、正直涼也の写真の売れ行きは微妙だったんだけど、碧ちゃんだっけ?彼の売り上げがすさまじくてそのおまけって事で。」
「……。」
涼也は色々と言いたかった。
言いたかったがきっと肖像権など言っても彼女らは色々と言いくるめ、結局自分たちが撒ける未来しか見えなかった。
「訴えてもいいけど、受けて立つわよ?」
ニッコリと壮絶な笑みを浮かべる雪美に涼也は恐怖を覚える。
「いえ、しません。」
「よろしい、無駄な労力は使いたくないものね。」
「……。」
涼也はもう色々諦め、そして、カタログに目を落とす。
その中でダークグレーのスーツを彼は選び出した。
「ふーん。」
「何だよ。」
「まあ、いいじゃないかな?」
「……。」
なんか微妙に引っ掛かりのある言葉に涼也は口を出しそうになるが、面倒になる事、間違いなしなので、結局口を噤む。
「さーて、サイズはどうする。」
「ワンサイズ大きめでいいじゃねぇか?」
「何で?」
「高校で少しでかくなったし、これ以上大きくなるとぶかぶかで不格好になるからな。」
「了解。」
雪美はカタログに付箋をつけ、サイズをメモしておく。
「それじゃ、わたしの方を見てもらう。」
涼也は軽い気持ちで頷いてしまったが、これから軽い地獄を見る事になるとは思ってもみなかった。
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
長年の恋に終止符を
mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。
そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。
男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。
それがあの人のモットーというやつでしょう。
どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。
これで終らせることが出来る、そう思っていました。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる