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第四章
第四章「いつだって」3
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涼也は忘れていた。
自分の行動がある人物に筒抜けであった事を。
そして、夜、その人物が突然やって来た。
「涼ちゃん。」
突然現れた雪美に涼也はようやく自分の失態に気づく。
「……。」
額を押さえ、涼也は自分の気持ちが揺らいだ事に今さらながら後悔する。
「雪姉…。」
「何よ、その顔は……。」
涼也の顔を見た雪美は脱力したようにその場にしゃがみこむ。
「雪姉、そんな所に座り込んだら汚いだろう。」
「誰の所為だと思っているのよ……。」
顔をくしゃくしゃにして見上げる雪美に涼也は、ああ、こんなにも自分を心配する人がいるなんて、と思わず胸が暖かくなる。
「俺の所為か?」
「そうよ。」
涼也は無意識に優しく笑い、雪美に手を差し出す。
「悪い。」
「…………何て、涼ちゃんも京ちゃんも、二人して自分で色々抱え込んじゃうのよ。」
「そうか?」
「そうだよ。」
涼也はあまり自覚していないのかピンと来ない表情を浮かべる。
「それにしても、雪姉、大丈夫なのか?」
「何が?」
「もうすぐ七時だぜ?」
「大丈夫。」
門限に煩い彼女の父親を思い出し、涼也は首を捻らす。
「何でそう言い切れるんだ?」
「うん、シズがなんか色々してくれてね。」
「帝さんが?」
「うん。シズが。」
涼也は地道に外堀を埋めている雫にそっと涙する。
「いやー、持つべきは便利な権力者ね。」
「………。」
雪美の言葉を聞いて涼也は先ほどとは違う意味で涙が零れそうになる。
(全然、届いていないよ、帝さん……。)
不憫な雫に涼也はきっと今後も彼は報われる事がないのではないかと、失礼な事を考えているのだった。
「それで、涼ちゃん、私に相談すべき事は?」
真剣な目で見てくる雪美に涼也は一度目を瞑り、苦笑を浮かべる。
「無いよ。」
「涼ちゃん。」
不満そうな顔をする雪美に涼也は視線を泳がせ、ようやくここがまだ玄関である事を思い出す。
「雪姉、中に入ろう。」
「……。」
雪美はまだ言いたげに睨んでくるが、いつまでも玄関にいる訳には行けないと分かっているのか渋々動く。
「涼ちゃん。」
「ん?」
「京ちゃんは?」
「部活の連中と飯食って帰るってさ。」
「遅いの?」
「まあまあ、だろうな。」
涼也は雪美と話していてフッと疑問を抱く。
「雪姉、あれを読んでいて知らないのか?」
「そこまで詳しくは書かれてないわ。」
「そうなんだ。」
「読んでみる?」
雪美の持っている小さな鞄からどうやってハードカバーの本が出てくるのかと、そっちの方に意識が持って行かれそうになった涼也は首を横に振った。
「読まないの?」
「ああ、自分の行動を文字で見るなんて、何の罰ゲームだよ。」
涼也の言葉に雪美は笑い、本を仕舞う。
「そっか。」
「雪姉。」
「何?」
「雪姉はさ、自分の中にある記憶で一部欠けていたら、どうする?」
「……。」
雪美はジッと涼也の顔を見て、自分の思っている事を口にする。
「そうだな、人って忘れていく生き物じゃない。」
「ああ。」
「正直、私だって、忘れている事の方が、多いと思う。でも、涼ちゃんが求めているのは、そんな答えじゃないよね?」
「……。」
黙り込む涼也にいつまでも涼也は涼也なのだと、どこか雪美は安心する。
「大切な、記憶だったんだね。」
優しい、声に、いつの間にか、涼也の頬に冷たい雫がつたる。
「忘れたくなかったんだね。」
雪美が頬に触れた事により、涼也は自分が泣いている事に初めて気づく。
口を開くが、嗚咽が涼也の口から漏れる。
「うん、泣いていいよ。」
ギュッと抱きしめてくれる、雪美からは家族としての愛情にあふれていた。
涼也は唇を噛み、首を振る。
「涼ちゃん?」
「雪姉、俺は大丈夫だから。」
遠慮なのか、拒絶なのか、見栄なのか、雪美には分からなかったが、一つだけ彼女が分かる事が一つあった。
涼也が頼ろうとする人は自分ではない、それだけは雪美は分かった。
「………。」
この時、雪美が恨みがましい目で涼也を見たのだが、本人である涼也は気づかなかった。
「……ごめん帰るね。」
涼也は自分を思いやっての言葉だと思って頷いた。
実際は違うと知るのはん年後の雫と飲んでいる時になるのだが、この時の涼也は知る由もなかった。
涼也の中で欠けてしまった欠片、それは何処に消えたのか、それを知るのは彼をこの時空まで連れて来た何かのみが、知る事だった。
自分の行動がある人物に筒抜けであった事を。
そして、夜、その人物が突然やって来た。
「涼ちゃん。」
突然現れた雪美に涼也はようやく自分の失態に気づく。
「……。」
額を押さえ、涼也は自分の気持ちが揺らいだ事に今さらながら後悔する。
「雪姉…。」
「何よ、その顔は……。」
涼也の顔を見た雪美は脱力したようにその場にしゃがみこむ。
「雪姉、そんな所に座り込んだら汚いだろう。」
「誰の所為だと思っているのよ……。」
顔をくしゃくしゃにして見上げる雪美に涼也は、ああ、こんなにも自分を心配する人がいるなんて、と思わず胸が暖かくなる。
「俺の所為か?」
「そうよ。」
涼也は無意識に優しく笑い、雪美に手を差し出す。
「悪い。」
「…………何て、涼ちゃんも京ちゃんも、二人して自分で色々抱え込んじゃうのよ。」
「そうか?」
「そうだよ。」
涼也はあまり自覚していないのかピンと来ない表情を浮かべる。
「それにしても、雪姉、大丈夫なのか?」
「何が?」
「もうすぐ七時だぜ?」
「大丈夫。」
門限に煩い彼女の父親を思い出し、涼也は首を捻らす。
「何でそう言い切れるんだ?」
「うん、シズがなんか色々してくれてね。」
「帝さんが?」
「うん。シズが。」
涼也は地道に外堀を埋めている雫にそっと涙する。
「いやー、持つべきは便利な権力者ね。」
「………。」
雪美の言葉を聞いて涼也は先ほどとは違う意味で涙が零れそうになる。
(全然、届いていないよ、帝さん……。)
不憫な雫に涼也はきっと今後も彼は報われる事がないのではないかと、失礼な事を考えているのだった。
「それで、涼ちゃん、私に相談すべき事は?」
真剣な目で見てくる雪美に涼也は一度目を瞑り、苦笑を浮かべる。
「無いよ。」
「涼ちゃん。」
不満そうな顔をする雪美に涼也は視線を泳がせ、ようやくここがまだ玄関である事を思い出す。
「雪姉、中に入ろう。」
「……。」
雪美はまだ言いたげに睨んでくるが、いつまでも玄関にいる訳には行けないと分かっているのか渋々動く。
「涼ちゃん。」
「ん?」
「京ちゃんは?」
「部活の連中と飯食って帰るってさ。」
「遅いの?」
「まあまあ、だろうな。」
涼也は雪美と話していてフッと疑問を抱く。
「雪姉、あれを読んでいて知らないのか?」
「そこまで詳しくは書かれてないわ。」
「そうなんだ。」
「読んでみる?」
雪美の持っている小さな鞄からどうやってハードカバーの本が出てくるのかと、そっちの方に意識が持って行かれそうになった涼也は首を横に振った。
「読まないの?」
「ああ、自分の行動を文字で見るなんて、何の罰ゲームだよ。」
涼也の言葉に雪美は笑い、本を仕舞う。
「そっか。」
「雪姉。」
「何?」
「雪姉はさ、自分の中にある記憶で一部欠けていたら、どうする?」
「……。」
雪美はジッと涼也の顔を見て、自分の思っている事を口にする。
「そうだな、人って忘れていく生き物じゃない。」
「ああ。」
「正直、私だって、忘れている事の方が、多いと思う。でも、涼ちゃんが求めているのは、そんな答えじゃないよね?」
「……。」
黙り込む涼也にいつまでも涼也は涼也なのだと、どこか雪美は安心する。
「大切な、記憶だったんだね。」
優しい、声に、いつの間にか、涼也の頬に冷たい雫がつたる。
「忘れたくなかったんだね。」
雪美が頬に触れた事により、涼也は自分が泣いている事に初めて気づく。
口を開くが、嗚咽が涼也の口から漏れる。
「うん、泣いていいよ。」
ギュッと抱きしめてくれる、雪美からは家族としての愛情にあふれていた。
涼也は唇を噛み、首を振る。
「涼ちゃん?」
「雪姉、俺は大丈夫だから。」
遠慮なのか、拒絶なのか、見栄なのか、雪美には分からなかったが、一つだけ彼女が分かる事が一つあった。
涼也が頼ろうとする人は自分ではない、それだけは雪美は分かった。
「………。」
この時、雪美が恨みがましい目で涼也を見たのだが、本人である涼也は気づかなかった。
「……ごめん帰るね。」
涼也は自分を思いやっての言葉だと思って頷いた。
実際は違うと知るのはん年後の雫と飲んでいる時になるのだが、この時の涼也は知る由もなかった。
涼也の中で欠けてしまった欠片、それは何処に消えたのか、それを知るのは彼をこの時空まで連れて来た何かのみが、知る事だった。
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