もう一度君と…

弥生 桜香

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第五章

第五章「文化祭」17

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「大丈夫?」
「あんま……。」

 中庭の木陰に座り込み、涼也は頭を抱えている。

「うーん…。」
「……京也。」
「何?」
「嫌、聞きたいのはこっちだよ。何…つーか、何で俺の所に来たんだ?」
「あーうん、ちゃんとご飯食べれてる?」
「ああ、平気だよ。」
「本当に?」

 涼也は苦笑を浮かべ、昔を思い出す。
 昔は料理なんてものはやった事がなかったからコンビニ弁当ばっかりで、しょっちゅう雪美にも京也にも心配をされていたが、流石にそれじゃ駄目だと、大学の時から徐々に自炊をし始めたのだった。
 まあ、その料理の「り」の字も知らなそうな涼也に対して京也が心配するのも無理はなかっただろう。

「大丈夫、今の時代ネットとかあるんだし、簡単に調べられるし。」
「……出前?」
「違う、レシピの方。」
「涼也、自炊できるの?」
「失礼な。」

 本気で驚いている京也に涼也は唇を尖らせる。

「お前は俺をどう思っているんだよ。」
「………ははは。」

 苦笑いを浮かべる京也にまともな返事じゃないと事を悟った涼也は顔を顰める。

「そう言えば、涼也は何をするの?」
「男ばかりの白雪姫。」
「………へー。」

 何を想像したのか顔色を悪くした京也に涼也はクククと喉を鳴らす。

「お前の所は……鶴の恩返しだったか。」
「えっ?何で、涼也が知っているのっ!」

 何でそこまで驚いているのかと、涼也は逆に驚いていると、ふと、またしても昔の記憶がよみがえる。
 確か京也の所の劇は当日まで発表されなかった。
 何をするのかが分からない、を売りにして当日を迎え、美人な鶴役を演じた京也にお笑いか、という白雪姫を演じた自分を比較したくなく、記憶に鍵をしたのを今思い出す。

「あー…、どっかから聞いた気がするんだが、違ったのか?不味ったのか?」
「……そうだよね、ごめん、なんか皆が隠したがってたから、疑ったよ。」
「……疑うとか、本人の前で言うか、普通。」
「涼也だしね。」
「……。」

 いい性格をしているんじゃないかと、涼也は眉間に皺を寄せる。
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