もう一度君と…

弥生 桜香

文字の大きさ
56 / 162
第五章

第五章「文化祭」28

しおりを挟む
 涼也は黙々と食べながら横目で二人を見る。
 パクパクと美味しそうに食べる碧にそれをじっと見つめ、そして、呆れた溜息を零す樹の姿があった。

「お前は食べるのが下手だな。」
「ん?」

 馬鹿にされた碧は器用に片眉を動かす。

「ほら、着いているだろう。」
「あっ。」

 碧の頬からパンくずを取った樹は摘まんだそれを碧に見せる。

「サンキュ。」

 お礼を言った碧は樹の指を舐める。

「なっ!」
「……。」

 指を舐められた樹はギョッとして後ろの下がり、それを見ていた涼也は衝撃のあまり箸を落としてします。

「ん?どうしたんだ?」
「どうしたの、じゃないだろう、何で名倉の指を舐めた?」
「あっ…あはは、つい。」
「ついって、お前。」
「いやー、ほら、俺が取ってやる側なんだけどさ、ついつい、食べちゃうんだよね。」
「笑い事じゃないだろうが。」
「まあ、同室の奴にもよく怒られるけど、食い物粗末にするのはよくないだろう?」
「それなら、もっと食べ方に注意しろ。」
「んー、まあ、その内?」

 涼也は、こいつは絶対に直さないだろうな、と思って可愛そうな樹を見る。
 樹は顔を真っ赤にさせて凍り付いていた。

「……。」

 ああ、面倒臭いな、涼也は半眼になりながら、落ちてしまった箸を拾い上げ、はし箱に直す。
 どうしたものかと、考えながら予備に持ってきている割り箸を鞄から抜き出した。

「ひっでぇ、もう食べているじゃん。」
「……。」
「って、何で名倉がいるんだよっ!」

 空気を破るようにして現れた悪友に涼也はぐっとこぶしを握る。
 よくやった、お前にしては百回に一度の奇跡のナイスタイミングだ、涼也は内心で拍手喝采を送った。

「いちゃ悪いかよ。」
「いやー、珍しいなって。」
「……。」
「ああ、碧がいたからか、そうだよな、相手役だし、仲良くしたんだよな。」
「違う。」
「そうなのか?」
「……。」

 憮然とした顔で昼食を食べ始める樹に倣って涼也も碧も食べ始める。

「そういやさ、衣装係が今日衣装合わせしたいってさ。」
「ふーん。」
「なんかさ、碧の衣装でもめてんだとさ。」
「ふえ?」
「碧、汚いから口に入れながらしゃべるな。」
「んぐ、分かってるよ。」
「どうだかな。」
「ひでーな。」

 フンと鼻を鳴らす樹に碧はじとりと睨みつける。

「二人って仲いいよな。」
「何処をどう見てそう言える。」
「違うのか?」
「違うだろうが。」
「……。」

 否定する碧と無言の樹を交互に見る悪友は首を傾げ、まっ、いいか、と言いながら最初の話に戻る。

「なんかさ、清楚な感じがいいという意見と、ここはど派手にっていうグループ、あと物語風の衣装が良いだろうっていう奴がいるだとさ。」
「あー…。」

 涼也は黙っていれば綺麗な顔立ちをしている碧を見て納得する。

「そんで、それぞれの衣装が作ったのを着せるって張り切っていたぞ。」
「うげー。」

 着せ替え人形化状態になると分かったのか、碧は顔を顰める。

「大丈夫、お前なら似合うから。」
「それ慰めの言葉じゃないからな。」
「そうか?」
「そうだろう。」

 痛む頭を押さえながら涼也は悪友に呆れる。

「うー……マジ勘弁。」
「諦めろ。」

 撃沈する碧に涼也は同情するが、実は涼也も一度通った道なのであくまで同情しかしていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

処理中です...