今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

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第二章

《太陽の花 3》

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 老紳士がやってきたのは丘の上だった。
 そこに真っ白の石でできたお墓が一つだけあった。

「今年は遅くなってすまなかった。」

 目を細め、愛おしそうに墓石を撫でる。

「今年も君の好きだったヒマワリを持ってきたよ、ちゃんと十一本だ。」

 花束をそっと置き、老紳士は顔を上げる。

「ここは妻が好きだった景色なんだ。」
「分かる気がします。」

 丘の上からはセイラたちが住んでいる街が見渡せた。
 一つ一つの屋根の下に人の命がある。
 そして、同時に緑が見渡せるこの場所は心に響く景色だった。

「………………お嬢さんたちは幸せかな?」

 老紳士に問われ、思わず、セイラは隣を見てしまう。
 最近彼に言った言葉だった。

「私は私の側にいる人が幸せなら幸せだと思います。」
「……それは本当に君の幸せかな?」

 老紳士の言葉にセイラは微笑む。

「はい。」

 はっきりと言い切る彼女に老紳士はセイラとカルムを交互に見る。
 笑みを浮かべるセイラに対し、彼女の言葉を聞いたカルムは渋面を浮かべていた。

「そっちの彼はそう思っていないようだね。」
「……もう、そんな顔をしないでよ、カルム。」
「お前はいつも、いつも、他人ばっかり気にしやがって。」
「私の望みはしいて言えばのんびりと過ごす事よ、そして、寿命を全うするの、素敵でしょ?」

 セイラは「普通」にしていれば叶うだろう願いを口にする。
 だけど、その願いを聞き、カルムは唇を噛む。

「……そんな顔をさせたくなかったんだけどな。」

 カルムの顔を見てセイラは苦笑する。

「あの子たちも私が一日でも多く生き延びれれば幸せだと思ってくれるから、私は生きる事を投げ出さないから。」
「…セイラ。」
「……おじいさん、安心してください、私はこの命がある限り、あの子たちを見放したりしませんから。」

 セイラの言葉に老紳士は笑う。

「何の事かな?」
「何の事でしょうね?」
「………君はヒマワリの花言葉を知っているかね?」

 突然話を逸らす老紳士にカルムは怪訝な顔をする。

「「私はあなただけを見つめる」、「憧れ」、「崇拝」、「情熱」、「まっててね」ですね。」
「そうだね、だったら、十一本のヒマワリは?」
「分かりません。」

 素直に答えるセイラに老紳士は口元に笑みを浮かべる。

「「最愛」だよ。」
「最愛ですか。」
「わたしは妻を今も、そして、これからも一番に愛している、だけど、申し訳ないけど、彼女にはもう少し待っていて欲しいんだ。」
「……。」
「せめて、わたしが誤ってしまった事がどうなるか、見届けてからね。」
「………………そうですか。」
「ああ。」
「だったら、まだまだ先になりますよ。」
「そうだろうね。」
「私からは絶対に動きませんから。」
「それで構わないよ。」

 老紳士はそっとセイラに手を差し出す。

「君が何か困ったことがあればいつでも、声をかけてくれないか?」
「その日が来ない事を切に願っています。」

 そう言ってセイラは老紳士の手を握った。
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