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第三章
《贈り物 1》
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「……やっとか。」
カルムは届いた手紙に口角を上げる。
「カルム、どうしたの?」
「いや、何でもない?」
くしで白磁の毛並みを整えていたセイラは不思議そうに首を傾げているが、カルムはそれを軽く首を振って誤魔化す。
「……何か困ったことがあったら言ってね。」
「それはお前もだろう?」
一番色々な物を抱えていそうなセイラにカルムはジトリと見る。
そんな事を気にしていないのか、それとも自覚していないのかセイラは首を傾げる。
「私はちゃんと言っているわ。」
「……。」
本当に無自覚の奴は、とカルムは胸の内でごちる。
「明日、悪いけど、別行動とるからな。」
「構わないけど、どうしたの?」
セイラは純粋に疑問に思っているのだとカルムも分かっているが、小さな隠し事をしているカルムにしたらその言葉はつらかった。
「頼んだものが出来たから、取りに行こうと思って。」
「そうなのね、剣?」
「あー、いや……ああ。」
口ごもるカルムにセイラは首を傾げるが、すぐにハッとする。
「ふふふ、分かったわ、私はおとなしく家に居とくわね。」
「……ああ。」
まさか、バレたのかとカルムは冷や汗を流す。
「きっと、喜ぶわ。」
「えっ?」
ニコニコと笑っているセイラにカルムは心臓を掴まれたかと思った。
「だって、貴方がそこまでして喜ばないだなんてありえないわ。」
「……。」
カルムの表情がだんだん悪くなる。
「えっ、カルム、大丈夫、貴方のお母さんには黙っているからね。」
あまりの顔の悪さにセイラはギョッとなり、慌てて手を振る。
「えっ?」
「……?カルムお母さんに贈り物をするのよね?」
「……。」
カルムは次の瞬間盛大に肺の中にためていた息を吐きだす。
「か、カルム?」
「何でもねぇ。」
「私、間違ったこと言ったかしら?」
「……。」
だんまりを決め込むカルムにセイラは一体何なのだと困惑するが、カルムはそれ以上何も言わない。
「何でもねぇよ、本当に。」
「本当に?」
「ああ。」
カルムはようやく落ち着いたのか、顔を上げ、まっすぐにセイラを見る。
「セイラはさ、髪をずっと下ろしたままだよな。」
「そうね。」
セイラは自分の髪を掴む。
「結わないのか?」
「似合わないでしょ?」
苦笑いを浮かべるセイラにカルムは眉を寄せる。
「何でそう思うんだ?」
「私のような人が髪飾りを付けていたら、不吉とか思って、お店の売り上げを下げてしまったら申し訳ないもの。」
寂し気に微笑むセイラにカルムは何か言いたげに口を開こうとするが、すぐに黙る。
「それに、私の髪飾りにお金をかけるくらいなら、ミラやレラの方にかけたいわ。」
「最近邪魔そうにしてるじゃねぇか。」
「そうね。」
セイラは自分の髪をいじり、そして、何かを思いついたように端切れを取ってくる。
「セイラ?」
「ないのなら、作るから大丈夫よ?」
カルムは何か言いたげな顔をするが、セイラは良い事を思いついたというように笑顔になる。
「大丈夫よ、工夫すれば幸せなのだから。」
「……。」
「明日はおとなしくしておくからね。」
「……分かった、もし、外に出て行くのなら絶対に双子を連れて行けよ。」
「分かっているわ。」
「約束だからな。」
「ええ、分かっているわ。」
過保護なカルムにセイラは苦笑しながら、端切れを手にしてどうしようかと考える。
カルムは届いた手紙に口角を上げる。
「カルム、どうしたの?」
「いや、何でもない?」
くしで白磁の毛並みを整えていたセイラは不思議そうに首を傾げているが、カルムはそれを軽く首を振って誤魔化す。
「……何か困ったことがあったら言ってね。」
「それはお前もだろう?」
一番色々な物を抱えていそうなセイラにカルムはジトリと見る。
そんな事を気にしていないのか、それとも自覚していないのかセイラは首を傾げる。
「私はちゃんと言っているわ。」
「……。」
本当に無自覚の奴は、とカルムは胸の内でごちる。
「明日、悪いけど、別行動とるからな。」
「構わないけど、どうしたの?」
セイラは純粋に疑問に思っているのだとカルムも分かっているが、小さな隠し事をしているカルムにしたらその言葉はつらかった。
「頼んだものが出来たから、取りに行こうと思って。」
「そうなのね、剣?」
「あー、いや……ああ。」
口ごもるカルムにセイラは首を傾げるが、すぐにハッとする。
「ふふふ、分かったわ、私はおとなしく家に居とくわね。」
「……ああ。」
まさか、バレたのかとカルムは冷や汗を流す。
「きっと、喜ぶわ。」
「えっ?」
ニコニコと笑っているセイラにカルムは心臓を掴まれたかと思った。
「だって、貴方がそこまでして喜ばないだなんてありえないわ。」
「……。」
カルムの表情がだんだん悪くなる。
「えっ、カルム、大丈夫、貴方のお母さんには黙っているからね。」
あまりの顔の悪さにセイラはギョッとなり、慌てて手を振る。
「えっ?」
「……?カルムお母さんに贈り物をするのよね?」
「……。」
カルムは次の瞬間盛大に肺の中にためていた息を吐きだす。
「か、カルム?」
「何でもねぇ。」
「私、間違ったこと言ったかしら?」
「……。」
だんまりを決め込むカルムにセイラは一体何なのだと困惑するが、カルムはそれ以上何も言わない。
「何でもねぇよ、本当に。」
「本当に?」
「ああ。」
カルムはようやく落ち着いたのか、顔を上げ、まっすぐにセイラを見る。
「セイラはさ、髪をずっと下ろしたままだよな。」
「そうね。」
セイラは自分の髪を掴む。
「結わないのか?」
「似合わないでしょ?」
苦笑いを浮かべるセイラにカルムは眉を寄せる。
「何でそう思うんだ?」
「私のような人が髪飾りを付けていたら、不吉とか思って、お店の売り上げを下げてしまったら申し訳ないもの。」
寂し気に微笑むセイラにカルムは何か言いたげに口を開こうとするが、すぐに黙る。
「それに、私の髪飾りにお金をかけるくらいなら、ミラやレラの方にかけたいわ。」
「最近邪魔そうにしてるじゃねぇか。」
「そうね。」
セイラは自分の髪をいじり、そして、何かを思いついたように端切れを取ってくる。
「セイラ?」
「ないのなら、作るから大丈夫よ?」
カルムは何か言いたげな顔をするが、セイラは良い事を思いついたというように笑顔になる。
「大丈夫よ、工夫すれば幸せなのだから。」
「……。」
「明日はおとなしくしておくからね。」
「……分かった、もし、外に出て行くのなら絶対に双子を連れて行けよ。」
「分かっているわ。」
「約束だからな。」
「ええ、分かっているわ。」
過保護なカルムにセイラは苦笑しながら、端切れを手にしてどうしようかと考える。
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