116 / 133
第三章
《贈り物 6》
しおりを挟む
「あら、カルくん、昨日は来てくれたのにいなくてごめんね。」
「あっ、女将さん、おはようございます。」
「おはよう、あの人ならまだ寝ているわよ。」
「マジか。」
「ええ、カルくんが面白い事を思いつてくれたから昨日も徹夜していたのよ、本当に中身はいつまで経っても子どもよね。」
「……。」
呆れた顔をしている女将さんに対し、カルムは何とも言えない顔をする。
「で、今日はどうしたの?」
「あー、実はあの髪飾りを見て、プレゼントしたいとい奴がいて。」
「……。」
女将さんはそれを聞いて何とも言えないかをする。
「あれは、カルくんが考えたものだからこちらとしては構わないのだけども、いいの?」
せっかく好いた女の子に上げたのに他の子にも似たようなものを作るのはカルムの努力を無にするようなそんな気持ちに女将さんはなってしまった。
「あー…。」
カルムは女将さんの気づかいに気づいて苦笑いを浮かべる。
「実はそれが贈った人で。」
「まあ。」
女将さんはそれを聞くと憤慨した顔をする。
「その子はカルくんの思いを踏みにじったの?」
「んー、そうとは違うんです。」
「……。」
女将さんはため息を零す。
「少しお話をしましょうか?」
「いや、あいつを待たせてて。」
「カルくん?」
ニッコリと笑う女将さんは何処か自分の母やセイラを訪仏させて、カルムの表情が強張ってしまう。
「えっと、その…。」
「カルくん?」
「す、少しなら。」
「ふふふ、じゃあ、ちょっと待っててね。」
意気揚々とお茶の準備を始める女将さんにカルムは項垂れる。
「負けた。」
「カルくん、甘いお茶でも大丈夫?」
「あー、はい。」
「昨日いただいたお茶が美味しかったからご馳走するわね。」
上機嫌でお茶を淹れる女将さんにカルムは顔を強張らせながら彼女の言葉を待つ。
「はい、どうぞ。」
出されたお茶からは確かに甘い匂いがして、カルムはその甘い匂いはセイラが好きそうだと思った。
「頂きます。」
カルムはカップを持ち、淵に口を付ける。
「甘いけど、美味しい。」
想像していたよりもずっと甘く、カルムは目を見張った。
「そうでしょ。」
ふふふ、と笑いながら女将さんはカルムと向かい合うように座る。
「さて、カルくんの想い人ってどういう子なの?」
「想い人って…。」
女将さんの言葉にカルムは困惑しながらも口を開く。
「……自分の事よりも、他人の事ばっかり考える、そんな奴だよ。」
「……。」
「だから、今回も俺が贈って申し訳なさそうな顔をしていたけど、受け取ってくれて。
まあ、多分嬉しかったから、自分の家族同然の奴らに同じようなものを贈りたいと思ったんだろうな。」
「……。」
「それに、そいつらもセイラに贈りたいと思っていたから同じものを返したいんだと思う。」
「カルくんには申し訳ないけど、本当に?」
「……。」
女将さんの言葉にカルムは怪訝な顔をする。
「何というか、カルくんの雇い主って色んな噂があるのよね。」
「噂?」
カルムは眉を跳ね上げる。
「聞いた話だと悪い噂が九割、良い噂が一割なのよね。」
「……。」
ガリっとカルムの口から音が漏れる。
「…………だから、正直カルくんが入れ込むようなそんな子がどうもそうぞうできないのよ。
うちの人は依頼者が信用できるのなら贈る相手はどんな相手でも気にしないけど…ね。」
「……………………………本当に、あいつの周りは敵が多いな。」
「カルくん?」
「どうせ、俺がいくらあいつの事を語っても腑に落ちないのなら、実際に見てください。
一つ、お願いがあります。」
「何かしら?」
「普通の客として扱ってください。」
「……。」
「嫌な噂ばっかりを聞いて疑うと思う、だけど、あいつはきっとそんな目で見られても仕方ないと、受け入れる。」
カルムはあの小さな背中を思い出す。
あの小さな背中には沢山の恨み辛みがのしかかっている。
彼女はただ小さな幸せしか望んでいないのに、見た目だけで彼女は沢山の負の念を背負わされている。
彼女は、それは仕方ない事だといって一人笑みを浮かべて受け入れている。
それがどうしても、許せなかった。
「あいつだって幸せになっていいのに、いつも、いつも、俺たちの事ばっかり。
あいつだって幸せになる権利があるのに。
努力だってしているのに…。
何であいつだけ。」
「……。」
「だから、色眼鏡を付けずにあいつを見て欲しい。」
「………………そうね、まだ、カルくんと同じくらいの年頃の子なのよね。」
「ああ。」
「そんな子が呪い殺すだなんて…ないわよね?」
「もし、あいつが呪い殺すとすれば、あいつ自身だ。」
カルムは目を瞑ると、そこには悲しそうに、今にも泣き出しそうなそんな顔なのに、無理やり笑みを浮かべているセイラの姿がそこにあった。
「万一あいつが他人を恨むとすれば、きっと、大切な人に害があった時だけだ。」
「……。」
女将さんは目を瞑り、どこか諦めたようにため息を吐く。
「分かった、連れてきなさい、その子を。」
「ありがとうございます。」
カルムは深く頭を下げた。
どうか、セイラにもっと理解者が出来るように。
カルムはそんな願いを込めて、ただ、頭を下げた。
「あっ、女将さん、おはようございます。」
「おはよう、あの人ならまだ寝ているわよ。」
「マジか。」
「ええ、カルくんが面白い事を思いつてくれたから昨日も徹夜していたのよ、本当に中身はいつまで経っても子どもよね。」
「……。」
呆れた顔をしている女将さんに対し、カルムは何とも言えない顔をする。
「で、今日はどうしたの?」
「あー、実はあの髪飾りを見て、プレゼントしたいとい奴がいて。」
「……。」
女将さんはそれを聞いて何とも言えないかをする。
「あれは、カルくんが考えたものだからこちらとしては構わないのだけども、いいの?」
せっかく好いた女の子に上げたのに他の子にも似たようなものを作るのはカルムの努力を無にするようなそんな気持ちに女将さんはなってしまった。
「あー…。」
カルムは女将さんの気づかいに気づいて苦笑いを浮かべる。
「実はそれが贈った人で。」
「まあ。」
女将さんはそれを聞くと憤慨した顔をする。
「その子はカルくんの思いを踏みにじったの?」
「んー、そうとは違うんです。」
「……。」
女将さんはため息を零す。
「少しお話をしましょうか?」
「いや、あいつを待たせてて。」
「カルくん?」
ニッコリと笑う女将さんは何処か自分の母やセイラを訪仏させて、カルムの表情が強張ってしまう。
「えっと、その…。」
「カルくん?」
「す、少しなら。」
「ふふふ、じゃあ、ちょっと待っててね。」
意気揚々とお茶の準備を始める女将さんにカルムは項垂れる。
「負けた。」
「カルくん、甘いお茶でも大丈夫?」
「あー、はい。」
「昨日いただいたお茶が美味しかったからご馳走するわね。」
上機嫌でお茶を淹れる女将さんにカルムは顔を強張らせながら彼女の言葉を待つ。
「はい、どうぞ。」
出されたお茶からは確かに甘い匂いがして、カルムはその甘い匂いはセイラが好きそうだと思った。
「頂きます。」
カルムはカップを持ち、淵に口を付ける。
「甘いけど、美味しい。」
想像していたよりもずっと甘く、カルムは目を見張った。
「そうでしょ。」
ふふふ、と笑いながら女将さんはカルムと向かい合うように座る。
「さて、カルくんの想い人ってどういう子なの?」
「想い人って…。」
女将さんの言葉にカルムは困惑しながらも口を開く。
「……自分の事よりも、他人の事ばっかり考える、そんな奴だよ。」
「……。」
「だから、今回も俺が贈って申し訳なさそうな顔をしていたけど、受け取ってくれて。
まあ、多分嬉しかったから、自分の家族同然の奴らに同じようなものを贈りたいと思ったんだろうな。」
「……。」
「それに、そいつらもセイラに贈りたいと思っていたから同じものを返したいんだと思う。」
「カルくんには申し訳ないけど、本当に?」
「……。」
女将さんの言葉にカルムは怪訝な顔をする。
「何というか、カルくんの雇い主って色んな噂があるのよね。」
「噂?」
カルムは眉を跳ね上げる。
「聞いた話だと悪い噂が九割、良い噂が一割なのよね。」
「……。」
ガリっとカルムの口から音が漏れる。
「…………だから、正直カルくんが入れ込むようなそんな子がどうもそうぞうできないのよ。
うちの人は依頼者が信用できるのなら贈る相手はどんな相手でも気にしないけど…ね。」
「……………………………本当に、あいつの周りは敵が多いな。」
「カルくん?」
「どうせ、俺がいくらあいつの事を語っても腑に落ちないのなら、実際に見てください。
一つ、お願いがあります。」
「何かしら?」
「普通の客として扱ってください。」
「……。」
「嫌な噂ばっかりを聞いて疑うと思う、だけど、あいつはきっとそんな目で見られても仕方ないと、受け入れる。」
カルムはあの小さな背中を思い出す。
あの小さな背中には沢山の恨み辛みがのしかかっている。
彼女はただ小さな幸せしか望んでいないのに、見た目だけで彼女は沢山の負の念を背負わされている。
彼女は、それは仕方ない事だといって一人笑みを浮かべて受け入れている。
それがどうしても、許せなかった。
「あいつだって幸せになっていいのに、いつも、いつも、俺たちの事ばっかり。
あいつだって幸せになる権利があるのに。
努力だってしているのに…。
何であいつだけ。」
「……。」
「だから、色眼鏡を付けずにあいつを見て欲しい。」
「………………そうね、まだ、カルくんと同じくらいの年頃の子なのよね。」
「ああ。」
「そんな子が呪い殺すだなんて…ないわよね?」
「もし、あいつが呪い殺すとすれば、あいつ自身だ。」
カルムは目を瞑ると、そこには悲しそうに、今にも泣き出しそうなそんな顔なのに、無理やり笑みを浮かべているセイラの姿がそこにあった。
「万一あいつが他人を恨むとすれば、きっと、大切な人に害があった時だけだ。」
「……。」
女将さんは目を瞑り、どこか諦めたようにため息を吐く。
「分かった、連れてきなさい、その子を。」
「ありがとうございます。」
カルムは深く頭を下げた。
どうか、セイラにもっと理解者が出来るように。
カルムはそんな願いを込めて、ただ、頭を下げた。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる