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序章
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僕は念願の高校の前に立っていた。
握り拳を振り上げ、喜びを噛み締める。
長かった、僕がここに来れたのはひとえにあの小さい時の想いがあったからだ。
僕には幼い頃に離れ離れになった友達がいた、その子はいじめられっ子だった僕に優しい子で、いつも、僕を庇ってくれた。
だけど、そんな楽しい日々も、あの出来事で変わった。
いつもと同じように僕らは遊んでいた、でも、そこに招かざる侵入者が入り込む。
『シオを離せっ!』
僕を盾に自衛団に囲まれる敵に対し、その子は僕の首元に刃物を押し当てている敵を睨んでいた。
下手に近づけば僕を殺すだろう敵、自衛団も慎重になる。
でも、そんな時、自衛団の一人が零す言葉に状況は一変する。
『その人質の子どもどうやら、無能力者のようです。』
「無能力者」それは一割もいるかいないかの割合で生まれる能力を持たずに生まれてくる子ども。
現代の社会において能力が当たり前という常識の中で、「無能力者」と言うのは差別の対象だった。
だから、敵は僕を人質の価値を失い、殺そうと刃物を食いこませ、自衛団も「無能力者」の一人くらい傷つけても現状を打破しようと行動しようとした。
僕はあの時諦めていた。
殺される事はもう仕方がないと思ってしまった。
でも、あの子は違った。
『シオを傷つけるなっ!』
怒りで能力を暴発させる彼は本当に暴発させたのだろうか?
ビキビキと音を立てながら地面が凍り始め、敵の足まで一瞬にしてたどり着き、そして、その脚から徐々に凍らせる。
『うあああっ!』
驚いて思わず刃物を落とし、拘束する僕の腕の力を緩める敵に僕は彼の作ってくれた好機を逃す事無くもがき、運よく敵の顎に僕の手に持っていたシャベルがクリティカルヒットした。
『ぐっ!』
『ひょーちゃああああああんっ!』
敵の手から逃れた僕は地面に転がったが、すぐに飛び起きて自分を助けてくれた絶対的な味方に縋り付きながら泣きつく。
『大丈夫、大丈夫。』
僕を落ち着かせるように頭を撫でる彼に安心しきって僕はいつの間にか眠ってしまった。
次の日、僕の事を心配してくれて僕の家までやって来た彼は言った。
『あいつらは最低だ。』
僕は彼の言っている言葉の意味が分からず、ベッドの上で首を傾げた。
『なにが?』
『あいつらはお前が死んでいたかもしれないのに、お前が……お前が……。』
言葉を詰まらせ、ギュッと僕にしがみつくように抱きしめる彼の腕は震えていた。
『うん……、』
この頃の僕は薄々分かっていた自分が「無能力者」である為に他人から差別的な目で見られている事を。
だけど、この心優しい彼はそれを良く思っていなかった。
それだけで十分だった。
母さんも父さんも僕が「無能力者」でも自分の言葉だと言ってくれていたし、この大好きな彼が僕を一人の人間として好意を抱いてくれるだけでそれだけで十分だった。
だけど、この大好きな彼は僕にさらに夢をくれた。
『俺絶対に自衛団を作る、だから、その時、隣にお前が居てくれないか?』
パチクリと普段でも大きな目を大きくさせる僕の顔が彼の色違いの瞳に映っていた。
『ぼく?』
『ああ。』
目の前がぼやけて見ていたい彼の顔が見えなくなる、そして、頬に暖かい何かが零れ落ちる。
『泣くなよ。』
『ないてない。』
『泣いてる。』
『ないてないもん……。』
『なぁ、返事は?』
ギュッと抱きしめる彼はどこか怖がっているような声を出していた。
『ぼく、きみのそばにいる、だから、ぼく、つよくなる、かしこくなる、だから、ずっと、ずっとぼくのそばにいてくださいっ!』
『ああ。』
そして、僕たちは指切りをした。
『『ゆびきりげんまん
うそついたら……』』
『はりせんぼんのますんだよね?』
『嘘は吐く気はないけど、お前には飲ませたくない。』
『どうしよか?』
『うーん、千回キスするでどうだ?』
『うん、いいよ』
『『それじゃ
ゆびきりげんまん
うそついたらキスせんかいすーる
ゆびきったっ!!』』
幼い頃の約束、でも、それが僕の基盤となった。
そして、その約束をした彼は三日後僕の目の前から突然姿を消した。
何の別れの言葉もなく。
『また、あした。』
約束したのに、彼はいなくなってしまった。
僕は当然、ふさぎ込んだ。
母さんや父さんに心配をいっぱいかけた、そして、そんな落ち込んだ僕を浮上させたのは彼との約束だった。
ぼく、つよくなる、かしこくなる、そう約束したのに、今の自分はそれをサボっている事にある出来事で気づき、そして、僕は努力して、自衛団になる人を支えるサポータとして学べるこの学校に入学する事が出来た。
喜びを噛み締めていた僕は知らなかった。
この先に待ち受ける試練やこの想いの先をーー。
握り拳を振り上げ、喜びを噛み締める。
長かった、僕がここに来れたのはひとえにあの小さい時の想いがあったからだ。
僕には幼い頃に離れ離れになった友達がいた、その子はいじめられっ子だった僕に優しい子で、いつも、僕を庇ってくれた。
だけど、そんな楽しい日々も、あの出来事で変わった。
いつもと同じように僕らは遊んでいた、でも、そこに招かざる侵入者が入り込む。
『シオを離せっ!』
僕を盾に自衛団に囲まれる敵に対し、その子は僕の首元に刃物を押し当てている敵を睨んでいた。
下手に近づけば僕を殺すだろう敵、自衛団も慎重になる。
でも、そんな時、自衛団の一人が零す言葉に状況は一変する。
『その人質の子どもどうやら、無能力者のようです。』
「無能力者」それは一割もいるかいないかの割合で生まれる能力を持たずに生まれてくる子ども。
現代の社会において能力が当たり前という常識の中で、「無能力者」と言うのは差別の対象だった。
だから、敵は僕を人質の価値を失い、殺そうと刃物を食いこませ、自衛団も「無能力者」の一人くらい傷つけても現状を打破しようと行動しようとした。
僕はあの時諦めていた。
殺される事はもう仕方がないと思ってしまった。
でも、あの子は違った。
『シオを傷つけるなっ!』
怒りで能力を暴発させる彼は本当に暴発させたのだろうか?
ビキビキと音を立てながら地面が凍り始め、敵の足まで一瞬にしてたどり着き、そして、その脚から徐々に凍らせる。
『うあああっ!』
驚いて思わず刃物を落とし、拘束する僕の腕の力を緩める敵に僕は彼の作ってくれた好機を逃す事無くもがき、運よく敵の顎に僕の手に持っていたシャベルがクリティカルヒットした。
『ぐっ!』
『ひょーちゃああああああんっ!』
敵の手から逃れた僕は地面に転がったが、すぐに飛び起きて自分を助けてくれた絶対的な味方に縋り付きながら泣きつく。
『大丈夫、大丈夫。』
僕を落ち着かせるように頭を撫でる彼に安心しきって僕はいつの間にか眠ってしまった。
次の日、僕の事を心配してくれて僕の家までやって来た彼は言った。
『あいつらは最低だ。』
僕は彼の言っている言葉の意味が分からず、ベッドの上で首を傾げた。
『なにが?』
『あいつらはお前が死んでいたかもしれないのに、お前が……お前が……。』
言葉を詰まらせ、ギュッと僕にしがみつくように抱きしめる彼の腕は震えていた。
『うん……、』
この頃の僕は薄々分かっていた自分が「無能力者」である為に他人から差別的な目で見られている事を。
だけど、この心優しい彼はそれを良く思っていなかった。
それだけで十分だった。
母さんも父さんも僕が「無能力者」でも自分の言葉だと言ってくれていたし、この大好きな彼が僕を一人の人間として好意を抱いてくれるだけでそれだけで十分だった。
だけど、この大好きな彼は僕にさらに夢をくれた。
『俺絶対に自衛団を作る、だから、その時、隣にお前が居てくれないか?』
パチクリと普段でも大きな目を大きくさせる僕の顔が彼の色違いの瞳に映っていた。
『ぼく?』
『ああ。』
目の前がぼやけて見ていたい彼の顔が見えなくなる、そして、頬に暖かい何かが零れ落ちる。
『泣くなよ。』
『ないてない。』
『泣いてる。』
『ないてないもん……。』
『なぁ、返事は?』
ギュッと抱きしめる彼はどこか怖がっているような声を出していた。
『ぼく、きみのそばにいる、だから、ぼく、つよくなる、かしこくなる、だから、ずっと、ずっとぼくのそばにいてくださいっ!』
『ああ。』
そして、僕たちは指切りをした。
『『ゆびきりげんまん
うそついたら……』』
『はりせんぼんのますんだよね?』
『嘘は吐く気はないけど、お前には飲ませたくない。』
『どうしよか?』
『うーん、千回キスするでどうだ?』
『うん、いいよ』
『『それじゃ
ゆびきりげんまん
うそついたらキスせんかいすーる
ゆびきったっ!!』』
幼い頃の約束、でも、それが僕の基盤となった。
そして、その約束をした彼は三日後僕の目の前から突然姿を消した。
何の別れの言葉もなく。
『また、あした。』
約束したのに、彼はいなくなってしまった。
僕は当然、ふさぎ込んだ。
母さんや父さんに心配をいっぱいかけた、そして、そんな落ち込んだ僕を浮上させたのは彼との約束だった。
ぼく、つよくなる、かしこくなる、そう約束したのに、今の自分はそれをサボっている事にある出来事で気づき、そして、僕は努力して、自衛団になる人を支えるサポータとして学べるこの学校に入学する事が出来た。
喜びを噛み締めていた僕は知らなかった。
この先に待ち受ける試練やこの想いの先をーー。
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