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第一章
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「流石、小百合さんだ。」
「いえいえ、皆様のお口に合ってよかったです。」
着物の袖で口元を押さえる小百合さんはまるで探るように鈴蘭さんの旦那さんになる方が連れて来た方々を見ていた。
「それにしても、不思議なご縁ですね。」
「ええ、そうですね。」
人当たりのよさそうな彼の目は決して笑っていない。
それに気づているのはきっと鈴蘭さんの婚約者さんが連れて来た客人だけだろう。
「……なーんで、よりによってこの人たちを連れて来たのかな。」
「……えっ?」
ポツリと呟かれた鈴蘭さんの呟きに隣にいた男性、鈴蘭さんの婚約者さんの方が反応を示す。
どうやら彼女の言葉が聞こえたのは僕、小百合さん、師範くらいだろう。
「何か言ったかな、鈴蘭?」
「いいえ、おばあさまのお料理美味しでしょ?」
「ああ、そうだね。」
「特にこの煮つけ何て絶品なのよ。」
「それじゃ、貰ってみようかな?」
「……。」
僕は鈴蘭さんの婚約者さんとその客人を観察する。
鈴蘭さんの婚約者さんは見た目通りの優しそうな人だった。
でも、気の弱い所があるのか、鈴蘭さんと彼自身が連れて来た客人の顔色を窺っている所が見受けられる。
婚約者さん側の客人は三人。
一人はどっしりとした、動物に例えたら虎とかライオンのような雰囲気。多分、この中のリーダーなのだろう。
先ほど人当たりのよさそうに小百合さんに話しかけているのは例えるならハイエナ、ハゲタカ、そんな雰囲気かな。
最後の一人は印象が薄いけど、何となく彼が一番油断ならない気がする。どこにでもいる、でも、そのどこにでもいる雰囲気が逆に僕の何かに引っかかる。
「……。」
「しーちゃん、しーちゃん。」
鈴蘭さんが僕を手招きし、僕は首を傾げながら近寄る。
「どうしました?」
「ねー、どうすれば、あのおっさんたち、追い出せるかしら?」
「……。」
あまりにも過激な言葉に僕は頬を引きつらせる。
「す、鈴蘭さん。」
「しーちゃんも、あのおっさんたち、嫌な感じするでしょ?」
「……。」
鈴蘭さんの言葉に僕は反論できなかった、確かに彼女と同じように僕もあまりいい感じはしない。
むしろ、嫌な感じがするのだ。
「だったらさ、いっその事追い出そうよ。」
「……。」
僕は痛む頭を押さえていると、ぎしぎしという足音がだんだんこちらに近づいてくる。
「えっ?」
「あれ?」
客人は聞いている限りこの人数しかいないのに、何故足音がするのか分からず、僕は素っ頓狂な声を出したが、鈴蘭さんは何か思い当たるものがあるのか、不思議そうな声を出している。
音を立て、襖が開かれる。
「「えっ?」」
「あっ、やっぱり。」
「……うむ。」
「あら、まあ。」
「「……。」」
「おっ。」
「よう。」
「元気か?」
「おっ、嫁さんいつ見ても美人。」
襖の向こうから現れてのは一組の男女。
一人は熊のように巨体な男。
そして、もう一人は鈴蘭さんによく似た綺麗な女性。
「おお、鈴蘭。」
男はずしずしと鈴蘭さんに近づくが、彼女はあっさりとその抱擁から逃れ、自分によく似た女性に近づく。
「お母様、おかえりなさい。」
「ふふふ、ただいま。」
「お父様、負けたのですか?」
「まさか。」
「なーんだ、早かったからてっきり。」
「すずらーん。」
「……。」
僕は痛み出す頭を押さえる。
現れた男性は師範の息子さんで、鈴蘭さんのお父さんである国明さん。
そして、一緒に現れた鈴蘭さん似の女性は鈴蘭さんのお母さんである蘭さんだった。
「ん?お前は。」
僕という存在に気づいた国明さんが口を開いた瞬間――。
ガツーンっ!
とモノずごく痛そうな音がした。
その音が発した場所は国明さんの頭でその近くにはダンベルが落ちていた。
「つー。」
「久しぶりね、お嬢さん。」
頭を押さえる国明さんを無視して、蘭さんはいい笑顔で僕に近寄ってくる。
その笑みは先ほど国明さんにダンベルを投げたとは思えないほどの清々しさがあった。
「は、はい、お久しぶりです、蘭さん。」
「ふふふ、久しぶりね。」
含み笑いをする蘭さんは僕を見ているのに、その視線は鈴蘭さんの婚約者さんとその客人を見ていた。
「ねぇ、折角だから遊ばない?」
「えっ?」
「先鋒、中堅、大将で試合をしません?」
「えっ?」
唐突な発言に全員、否、蘭さんを知っている人たちは全く驚いていない、それどころか、鈴蘭さん何てのりのりだ。
「面白そうじゃないか。」
虎のような人が肯定し、他の人たちが怪訝な顔をして彼を見ている。
「あら、乗り気でうれしいわ。」
「選手はどうする?」
「そうね、こっちは先鋒を鈴蘭、中堅はいいだっしっぺのあたし、大将は…そうね…。」
蘭さんはそう言いながらぐるりと周りを見渡しているが、彼女の発する空気から誰が選ばれるか僕には分かっている。
「あなたね。」
そう言って蘭さんが僕の肩に手を置く。
……やっぱりか…。
僕は肩を落としながら、あきらめの境地で頷くのだった。
「いえいえ、皆様のお口に合ってよかったです。」
着物の袖で口元を押さえる小百合さんはまるで探るように鈴蘭さんの旦那さんになる方が連れて来た方々を見ていた。
「それにしても、不思議なご縁ですね。」
「ええ、そうですね。」
人当たりのよさそうな彼の目は決して笑っていない。
それに気づているのはきっと鈴蘭さんの婚約者さんが連れて来た客人だけだろう。
「……なーんで、よりによってこの人たちを連れて来たのかな。」
「……えっ?」
ポツリと呟かれた鈴蘭さんの呟きに隣にいた男性、鈴蘭さんの婚約者さんの方が反応を示す。
どうやら彼女の言葉が聞こえたのは僕、小百合さん、師範くらいだろう。
「何か言ったかな、鈴蘭?」
「いいえ、おばあさまのお料理美味しでしょ?」
「ああ、そうだね。」
「特にこの煮つけ何て絶品なのよ。」
「それじゃ、貰ってみようかな?」
「……。」
僕は鈴蘭さんの婚約者さんとその客人を観察する。
鈴蘭さんの婚約者さんは見た目通りの優しそうな人だった。
でも、気の弱い所があるのか、鈴蘭さんと彼自身が連れて来た客人の顔色を窺っている所が見受けられる。
婚約者さん側の客人は三人。
一人はどっしりとした、動物に例えたら虎とかライオンのような雰囲気。多分、この中のリーダーなのだろう。
先ほど人当たりのよさそうに小百合さんに話しかけているのは例えるならハイエナ、ハゲタカ、そんな雰囲気かな。
最後の一人は印象が薄いけど、何となく彼が一番油断ならない気がする。どこにでもいる、でも、そのどこにでもいる雰囲気が逆に僕の何かに引っかかる。
「……。」
「しーちゃん、しーちゃん。」
鈴蘭さんが僕を手招きし、僕は首を傾げながら近寄る。
「どうしました?」
「ねー、どうすれば、あのおっさんたち、追い出せるかしら?」
「……。」
あまりにも過激な言葉に僕は頬を引きつらせる。
「す、鈴蘭さん。」
「しーちゃんも、あのおっさんたち、嫌な感じするでしょ?」
「……。」
鈴蘭さんの言葉に僕は反論できなかった、確かに彼女と同じように僕もあまりいい感じはしない。
むしろ、嫌な感じがするのだ。
「だったらさ、いっその事追い出そうよ。」
「……。」
僕は痛む頭を押さえていると、ぎしぎしという足音がだんだんこちらに近づいてくる。
「えっ?」
「あれ?」
客人は聞いている限りこの人数しかいないのに、何故足音がするのか分からず、僕は素っ頓狂な声を出したが、鈴蘭さんは何か思い当たるものがあるのか、不思議そうな声を出している。
音を立て、襖が開かれる。
「「えっ?」」
「あっ、やっぱり。」
「……うむ。」
「あら、まあ。」
「「……。」」
「おっ。」
「よう。」
「元気か?」
「おっ、嫁さんいつ見ても美人。」
襖の向こうから現れてのは一組の男女。
一人は熊のように巨体な男。
そして、もう一人は鈴蘭さんによく似た綺麗な女性。
「おお、鈴蘭。」
男はずしずしと鈴蘭さんに近づくが、彼女はあっさりとその抱擁から逃れ、自分によく似た女性に近づく。
「お母様、おかえりなさい。」
「ふふふ、ただいま。」
「お父様、負けたのですか?」
「まさか。」
「なーんだ、早かったからてっきり。」
「すずらーん。」
「……。」
僕は痛み出す頭を押さえる。
現れた男性は師範の息子さんで、鈴蘭さんのお父さんである国明さん。
そして、一緒に現れた鈴蘭さん似の女性は鈴蘭さんのお母さんである蘭さんだった。
「ん?お前は。」
僕という存在に気づいた国明さんが口を開いた瞬間――。
ガツーンっ!
とモノずごく痛そうな音がした。
その音が発した場所は国明さんの頭でその近くにはダンベルが落ちていた。
「つー。」
「久しぶりね、お嬢さん。」
頭を押さえる国明さんを無視して、蘭さんはいい笑顔で僕に近寄ってくる。
その笑みは先ほど国明さんにダンベルを投げたとは思えないほどの清々しさがあった。
「は、はい、お久しぶりです、蘭さん。」
「ふふふ、久しぶりね。」
含み笑いをする蘭さんは僕を見ているのに、その視線は鈴蘭さんの婚約者さんとその客人を見ていた。
「ねぇ、折角だから遊ばない?」
「えっ?」
「先鋒、中堅、大将で試合をしません?」
「えっ?」
唐突な発言に全員、否、蘭さんを知っている人たちは全く驚いていない、それどころか、鈴蘭さん何てのりのりだ。
「面白そうじゃないか。」
虎のような人が肯定し、他の人たちが怪訝な顔をして彼を見ている。
「あら、乗り気でうれしいわ。」
「選手はどうする?」
「そうね、こっちは先鋒を鈴蘭、中堅はいいだっしっぺのあたし、大将は…そうね…。」
蘭さんはそう言いながらぐるりと周りを見渡しているが、彼女の発する空気から誰が選ばれるか僕には分かっている。
「あなたね。」
そう言って蘭さんが僕の肩に手を置く。
……やっぱりか…。
僕は肩を落としながら、あきらめの境地で頷くのだった。
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