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第一章
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僕が彼女――良子さんに追いつめられる前、林くんや藤井さんにはあいさつしたい人がいる方と、分かれ、こうして、別室に案内されたのはよかったのだが…。
何故か、今僕は良子さんたち女性スタッフによって化粧されている。
そして、横に置かれる衣装はかろうじてズボンだがそれでも、女性もののグレーのスーツだった。
「良子さん。」
「だめ、黙って。」
「……。」
口を開けば怒られました、当然だと思う、思うけど、せめて、状況を教えて下さい。
そう思っているとようやく化粧が終わったのか、僕は固く瞑っていた目を開けると、思わず口をあんぐりと開ける。
目の前にあった鏡に映るのはいつもの冴えない男ではなく、実年齢よりも少し上、二十歳前後の女性が映っていた。
「うん、いい出来。」
「りょ、良子さん。」
「何かしら?」
「これは何ですか?」
「ああ、今日のイベントのトークで一人『技術者』が来る予定だったのだけど、ブッチされちゃって。」
「まずいじゃないですか。」
「本当に困ったものなのよ。」
困ったという割にニヤニヤと笑う良子に僕は悟った。
「何で、僕が…。」
「ふふふ。」
絶対に僕が理解したのが分かった良子さんは笑っている。
「当然でしょ?巷で有名で天才『技術者』バイオレットが代わりに出てくれたらこちらとしたら万々歳なんだから。」
「……バイオレットは姿を絶対に見せないという約束ですよね?」
「ええ、だから、バイオレットである、男子高校生の空野紫織ではなく、女装した二十歳前後に見えるあなたが出るのよ、問題ある?」
「大ありですよ。」
「何がそんなに嫌なの?」
「僕はまだ未熟です、それなのに、バイオレットという名前だけが先行して正直手に負えないのに、こうして姿を出せば僕だとばれたら色々面倒じゃないですか。」
「そうね、でも、時間の問題なのよ。」
「……。」
「貴方も知っているでしょ?」
僕は最近ネットで拾った情報を見てぐっと堪える。
「明日話そうと思ったのよ、その対策とかね。」
「……。」
「せっかくの機会だからここで顔出しをすれば、ひとまず問題は一つ解決されると思うけど?」
「……。」
「で、返答は?」
「……今回限りです。」
絞り出すように僕がそう言うと、良子さんは一枚の紙をちらつかせる。
鏡で文字が反転しているが、僕はそれを普通に読み、絶句する。
「――っ!」
「もう決まっちゃったことなのよ、ごめんなさいね。」
ニヨニヨと笑う良子さんに僕は醜聞もなく喚き散らかしたくなった。
「ふふふ、衣装はこっちで用意するから身一つでいいからね。」
「……。」
「それも、合わせて色々打合せするから、明日よろしくね。」
「………分かりました…。」
こちらが折れるしかない事は分かっていた、でも、正直折れたくなんかなかったよ……。
何故か、今僕は良子さんたち女性スタッフによって化粧されている。
そして、横に置かれる衣装はかろうじてズボンだがそれでも、女性もののグレーのスーツだった。
「良子さん。」
「だめ、黙って。」
「……。」
口を開けば怒られました、当然だと思う、思うけど、せめて、状況を教えて下さい。
そう思っているとようやく化粧が終わったのか、僕は固く瞑っていた目を開けると、思わず口をあんぐりと開ける。
目の前にあった鏡に映るのはいつもの冴えない男ではなく、実年齢よりも少し上、二十歳前後の女性が映っていた。
「うん、いい出来。」
「りょ、良子さん。」
「何かしら?」
「これは何ですか?」
「ああ、今日のイベントのトークで一人『技術者』が来る予定だったのだけど、ブッチされちゃって。」
「まずいじゃないですか。」
「本当に困ったものなのよ。」
困ったという割にニヤニヤと笑う良子に僕は悟った。
「何で、僕が…。」
「ふふふ。」
絶対に僕が理解したのが分かった良子さんは笑っている。
「当然でしょ?巷で有名で天才『技術者』バイオレットが代わりに出てくれたらこちらとしたら万々歳なんだから。」
「……バイオレットは姿を絶対に見せないという約束ですよね?」
「ええ、だから、バイオレットである、男子高校生の空野紫織ではなく、女装した二十歳前後に見えるあなたが出るのよ、問題ある?」
「大ありですよ。」
「何がそんなに嫌なの?」
「僕はまだ未熟です、それなのに、バイオレットという名前だけが先行して正直手に負えないのに、こうして姿を出せば僕だとばれたら色々面倒じゃないですか。」
「そうね、でも、時間の問題なのよ。」
「……。」
「貴方も知っているでしょ?」
僕は最近ネットで拾った情報を見てぐっと堪える。
「明日話そうと思ったのよ、その対策とかね。」
「……。」
「せっかくの機会だからここで顔出しをすれば、ひとまず問題は一つ解決されると思うけど?」
「……。」
「で、返答は?」
「……今回限りです。」
絞り出すように僕がそう言うと、良子さんは一枚の紙をちらつかせる。
鏡で文字が反転しているが、僕はそれを普通に読み、絶句する。
「――っ!」
「もう決まっちゃったことなのよ、ごめんなさいね。」
ニヨニヨと笑う良子さんに僕は醜聞もなく喚き散らかしたくなった。
「ふふふ、衣装はこっちで用意するから身一つでいいからね。」
「……。」
「それも、合わせて色々打合せするから、明日よろしくね。」
「………分かりました…。」
こちらが折れるしかない事は分かっていた、でも、正直折れたくなんかなかったよ……。
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