110 / 128
第一章
108 『氷夏の母語り』
しおりを挟む
あの頃のわたしは人とは違う自分の子どもにどうしたいいのか迷っていたの。
そして、そんな時、一人の男の人が声をかけてきたわ。
貴女の子どもには何か恐ろしいものが憑いているいるから、払ってやろう、って。
…………普通なら、可笑しい事くらい分かっているけど…。
その時のわたしは信じてしまったの。
そして、その人を氷夏の前に連れて行くといつもは動じないあの子が目を見張って、「なにしにきやがったっ!」と怒鳴った。
紫織くん以外の事に感情をあらわにしなかったあの子がよ。
わたしはすっかり信じたの。
だから、息子を抱きしめて拘束したわ。
あの子は必死に暴れて、でも……、手加減していたのよね。
そうじゃなかったら、わたしはあざだらけで、傷だらけだったはずだから。
藻掻いて、藻掻いてわたしから逃れようとしたの。
喚いて、叫んで、怒鳴って、だけど、その人が、何か呪文を唱えると、あの子の体が何かに縛られたみたいに動かなくなって。
それでも、あの子は睨んでいたの。
恨みがましく。
憎むように。
わたしはその目が忘れられない……。
ごめんなさい、ごめんなさい、氷夏…。
…………ごめんなさい、今更謝っても氷夏は戻ってこないし、時間だって……。
すぅ…はあ…。
男は氷夏の額に触れると、あの子の額に不思議な模様が浮かんだの。
そして、あの子の目がだんだん虚ろになって。
目を閉ざしたの。
ちゃんと寝息が聞こえたからただ寝ているのだと思った。
その人だって、もう大丈夫だ、封じたからその子どもはただの人の子だと言って、出て行ったわ。
お金の請求もなかった。
わたしはすっかり信じ切っていたの、これで自分の子どもは普通の子どもになったって。
……普通って何なんだったのかしらね。
あの頃の氷夏は確かに周りの子とは違っていたけど、紫織くんには優しいちゃんとしたいい子だったのに。
わたしはその事に目を向ける事もなくって、ただただ、周りと違うあの子が普通じゃないと思っていた。
それが間違いだったと気づいたのはあの子が目を開けた時だった。
男が立ち去って一時間くらいしてからあの子は目を開けたの。
……だけど、氷夏は虚空を見るだけで何の反応を示さなかった。
わたしは慌てて夫に電話したの。
あの人はすぐに帰ってきてくれて、病院に氷夏を連れて行った。
だけど、体には何の異常もなくて。
精神的に何かあったのか聞かれて、わたしは怖くなって、口を閉ざしたの。
自分のエゴで、自分の息子をこんなふうにしてしまった。
それが怖くて、怖くて。
夫は貴女に相談しようとしたの、だけど、それをわたしが必死で止めて。
あの人は仕方なくわたしたち親子を誰も自分たちを知らない土地に連れて行ったの。
わたしは自分のしてしまった罪に自暴自棄になって、あの子はあの子ではじめのうちはぼんやりとしていたけど、だんだん暴力的になって。
夫は仕事に追われつつも、わたしたちを見捨てず色んな病院に連れて回ってくれたわ。
そして、ようやくわたしもあの子も落ち着いてこの場所に戻ってきたの。
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
そして、そんな時、一人の男の人が声をかけてきたわ。
貴女の子どもには何か恐ろしいものが憑いているいるから、払ってやろう、って。
…………普通なら、可笑しい事くらい分かっているけど…。
その時のわたしは信じてしまったの。
そして、その人を氷夏の前に連れて行くといつもは動じないあの子が目を見張って、「なにしにきやがったっ!」と怒鳴った。
紫織くん以外の事に感情をあらわにしなかったあの子がよ。
わたしはすっかり信じたの。
だから、息子を抱きしめて拘束したわ。
あの子は必死に暴れて、でも……、手加減していたのよね。
そうじゃなかったら、わたしはあざだらけで、傷だらけだったはずだから。
藻掻いて、藻掻いてわたしから逃れようとしたの。
喚いて、叫んで、怒鳴って、だけど、その人が、何か呪文を唱えると、あの子の体が何かに縛られたみたいに動かなくなって。
それでも、あの子は睨んでいたの。
恨みがましく。
憎むように。
わたしはその目が忘れられない……。
ごめんなさい、ごめんなさい、氷夏…。
…………ごめんなさい、今更謝っても氷夏は戻ってこないし、時間だって……。
すぅ…はあ…。
男は氷夏の額に触れると、あの子の額に不思議な模様が浮かんだの。
そして、あの子の目がだんだん虚ろになって。
目を閉ざしたの。
ちゃんと寝息が聞こえたからただ寝ているのだと思った。
その人だって、もう大丈夫だ、封じたからその子どもはただの人の子だと言って、出て行ったわ。
お金の請求もなかった。
わたしはすっかり信じ切っていたの、これで自分の子どもは普通の子どもになったって。
……普通って何なんだったのかしらね。
あの頃の氷夏は確かに周りの子とは違っていたけど、紫織くんには優しいちゃんとしたいい子だったのに。
わたしはその事に目を向ける事もなくって、ただただ、周りと違うあの子が普通じゃないと思っていた。
それが間違いだったと気づいたのはあの子が目を開けた時だった。
男が立ち去って一時間くらいしてからあの子は目を開けたの。
……だけど、氷夏は虚空を見るだけで何の反応を示さなかった。
わたしは慌てて夫に電話したの。
あの人はすぐに帰ってきてくれて、病院に氷夏を連れて行った。
だけど、体には何の異常もなくて。
精神的に何かあったのか聞かれて、わたしは怖くなって、口を閉ざしたの。
自分のエゴで、自分の息子をこんなふうにしてしまった。
それが怖くて、怖くて。
夫は貴女に相談しようとしたの、だけど、それをわたしが必死で止めて。
あの人は仕方なくわたしたち親子を誰も自分たちを知らない土地に連れて行ったの。
わたしは自分のしてしまった罪に自暴自棄になって、あの子はあの子ではじめのうちはぼんやりとしていたけど、だんだん暴力的になって。
夫は仕事に追われつつも、わたしたちを見捨てず色んな病院に連れて回ってくれたわ。
そして、ようやくわたしもあの子も落ち着いてこの場所に戻ってきたの。
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
0
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる