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第一章
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「ぷっ…ははは。」
「……。」
定期的の報告の為、僕は良子さんと会う事になった。
「あー、それにしても、二週間近くそんな顔をしていたのに誰も突っ込まれなかったわけ?」
「……。」
ズズズと音を立てアイスコーヒーを飲む。
うん、突っ込まれたよ。
だけど、ノーコメントで押し通した。
それも聞きたそうな人は小百合さん直伝の笑みで封殺した。
腫物扱いになってしまったが、二週間と言う日薬のお陰でだいぶ落ち着いたと思われたのに。
良子さんの所為でかさぶたを剥がされ、そこに唐辛子でもすりつぶしたものを塗られたような気がする。
「いいじゃない、いい男に触られたんでしょ、役得役得。」
「……。」
行儀が悪いけどストローに空気を入れブクブクと音を立てる。
「それにしても、あの子もなかなか面白い事をしでかすわね。」
「優子先輩ですか?」
「ええ。」
「こっちは面白くなんかないんですけど。」
「いいじゃない、いろんな経験を身をもって感じられるのだから。」
「そう思うんでしたら良子さんが実験体になったらどうですか?」
「い・や・よ。」
クスクスと笑いながら拒否はしっかりとする良子さんに僕はこっそりとため息を零す。
「だったら、僕にもふらないで下さい。」
「えー、いいじゃない、貴方だから振るんだし。」
「………さっさと、本題に入りましょう。」
「もう、もうちょっと貴方で遊びたかったけど、仕方ないわね。」
僕は彼女を一睨みする。
彼女は肩を竦め、そして、紙を取り出す。
「先日話していたイベントなんだけどね。」
「中止にでもなりましたか?」
僕はあり得ないと分かっていながらも少しの希望を口にする。
「そんな訳ないじゃない。」
「ですよね。」
ものすごく残念だ。
無くなればいいのに…。
でも、多くの人が楽しみにしているんだし、それに会社にとってはアピールが出来る機会でもあるから僕一人の感情で否定するのはよくないか…。
「グレードが上がったのよ。」
「はい?」
「だから、いつもはちょっとした会場を借りてたんだけど、今回はドームでやらせてもらえるのよ。」
「……。」
うん、想定外だ。
えっ、ちょっと待って。
いつもより規模が大きいという事?
……あり得ないんだけど。
愕然としている僕にこの人は追い打ちをかける。
「大ステージで色々やってもらう予定だからよろしくね。」
「……本当にあり得なんですけど…。」
「あー、あと、展示用にアイテムを用意してほしいのと、後…。」
良子さんはぐっと身を乗り出し、そして、こっそりと言葉を紡ぐ。
「えっ?」
「出来る?」
「……展示アイテムはどういう系がいいですか?」
「何でもいいわよ。」
「……。」
何でもいいかー。
僕はジッと良子さんを見る。
本心なのか。
違いのか?
「……バイオレットらしいものだったら、本当に何でもいいのよ。」
「……。」
バイオレットらしい…か。
捕縛系武器か。
誰でも使えるようなアイテムか。
簡易化されたアイテムか。
他にも色々あるけど、どうしよう。
でも、良子さんが僕にお願いしたものを考えると一択しかない。
それの新しいものか…。
ネタはなくはないけど、うーん。それでも、今回に間に合うか微妙なものと。
出来るけど、今回のような場所で発表とは違うものがあるかな…。
時間はなくはないし、もう少し練るしかないかな。
「貴方なら出来るよね?」
「無理ですなんて言わせてくれないんですよね?」
「勿論駄目よ、貴方の返事は「はい」か「イエス」の二択なのよ。」
「ですよね。」
分かっていた返事だった。
やるしかない。
僕はやる事の優先順位を変更する。
「……もう一つのは僕一人で返事ができないので、また後日で。」
「ええ、そっちは、可能だったらでいいから。」
「……………。」
僕は目を瞑る。
良子さんがこっそりと僕に呟いた言葉が蘇る。
“開催当日に私服で警護できる人がいる?あんまり大事にしたくないのよね。”
一体何が起こっているのか。
いや、起ころうとしている、と言うのが正しいのかもしれない。
こういう時、頼りになるのは多分師範だけど…。
いいのだろうか。
現役ではないけれど、それでも警察関係だ。
でも、それ以外の人となるとまず難しいだろう。
なんせ、バイオレットの関係で探さなければならない。
警察関係の人ならば大勢いるけど、それ以外の強い人なんてまずいない。
紫織としての知り合いならば学校の人を呼べばいいけれども、紫織=バイオレットと知られるのはよくない。
約一名感づいている人がいるが、それでも、決定打はないだろう。
それなのに、自分からバラすのは色んな意味でよくないだろう。
……本当は一番頼りになる人なんて分かり切っている。
さっきから頭の中で彼が思い浮かんでしょうがなかった。
でも、彼には絶対に言えない。
バイオレットとしてからの依頼も。
僕からのお願いも絶対にしない。
彼には迷惑をかけたくないし、かけられない。
良子さんには悪いけど、この話は断る方向にしよう。
僕自身が動ければいいけれども、多分それは無理だろうな。
「…良子さん。」
「さて、本題に入りましょうか。」
良子さんはそう言うと意思の強い瞳をこちらに向ける。
「分かりました。」
こうして僕たちは打ち合わせを始めた。
「……。」
定期的の報告の為、僕は良子さんと会う事になった。
「あー、それにしても、二週間近くそんな顔をしていたのに誰も突っ込まれなかったわけ?」
「……。」
ズズズと音を立てアイスコーヒーを飲む。
うん、突っ込まれたよ。
だけど、ノーコメントで押し通した。
それも聞きたそうな人は小百合さん直伝の笑みで封殺した。
腫物扱いになってしまったが、二週間と言う日薬のお陰でだいぶ落ち着いたと思われたのに。
良子さんの所為でかさぶたを剥がされ、そこに唐辛子でもすりつぶしたものを塗られたような気がする。
「いいじゃない、いい男に触られたんでしょ、役得役得。」
「……。」
行儀が悪いけどストローに空気を入れブクブクと音を立てる。
「それにしても、あの子もなかなか面白い事をしでかすわね。」
「優子先輩ですか?」
「ええ。」
「こっちは面白くなんかないんですけど。」
「いいじゃない、いろんな経験を身をもって感じられるのだから。」
「そう思うんでしたら良子さんが実験体になったらどうですか?」
「い・や・よ。」
クスクスと笑いながら拒否はしっかりとする良子さんに僕はこっそりとため息を零す。
「だったら、僕にもふらないで下さい。」
「えー、いいじゃない、貴方だから振るんだし。」
「………さっさと、本題に入りましょう。」
「もう、もうちょっと貴方で遊びたかったけど、仕方ないわね。」
僕は彼女を一睨みする。
彼女は肩を竦め、そして、紙を取り出す。
「先日話していたイベントなんだけどね。」
「中止にでもなりましたか?」
僕はあり得ないと分かっていながらも少しの希望を口にする。
「そんな訳ないじゃない。」
「ですよね。」
ものすごく残念だ。
無くなればいいのに…。
でも、多くの人が楽しみにしているんだし、それに会社にとってはアピールが出来る機会でもあるから僕一人の感情で否定するのはよくないか…。
「グレードが上がったのよ。」
「はい?」
「だから、いつもはちょっとした会場を借りてたんだけど、今回はドームでやらせてもらえるのよ。」
「……。」
うん、想定外だ。
えっ、ちょっと待って。
いつもより規模が大きいという事?
……あり得ないんだけど。
愕然としている僕にこの人は追い打ちをかける。
「大ステージで色々やってもらう予定だからよろしくね。」
「……本当にあり得なんですけど…。」
「あー、あと、展示用にアイテムを用意してほしいのと、後…。」
良子さんはぐっと身を乗り出し、そして、こっそりと言葉を紡ぐ。
「えっ?」
「出来る?」
「……展示アイテムはどういう系がいいですか?」
「何でもいいわよ。」
「……。」
何でもいいかー。
僕はジッと良子さんを見る。
本心なのか。
違いのか?
「……バイオレットらしいものだったら、本当に何でもいいのよ。」
「……。」
バイオレットらしい…か。
捕縛系武器か。
誰でも使えるようなアイテムか。
簡易化されたアイテムか。
他にも色々あるけど、どうしよう。
でも、良子さんが僕にお願いしたものを考えると一択しかない。
それの新しいものか…。
ネタはなくはないけど、うーん。それでも、今回に間に合うか微妙なものと。
出来るけど、今回のような場所で発表とは違うものがあるかな…。
時間はなくはないし、もう少し練るしかないかな。
「貴方なら出来るよね?」
「無理ですなんて言わせてくれないんですよね?」
「勿論駄目よ、貴方の返事は「はい」か「イエス」の二択なのよ。」
「ですよね。」
分かっていた返事だった。
やるしかない。
僕はやる事の優先順位を変更する。
「……もう一つのは僕一人で返事ができないので、また後日で。」
「ええ、そっちは、可能だったらでいいから。」
「……………。」
僕は目を瞑る。
良子さんがこっそりと僕に呟いた言葉が蘇る。
“開催当日に私服で警護できる人がいる?あんまり大事にしたくないのよね。”
一体何が起こっているのか。
いや、起ころうとしている、と言うのが正しいのかもしれない。
こういう時、頼りになるのは多分師範だけど…。
いいのだろうか。
現役ではないけれど、それでも警察関係だ。
でも、それ以外の人となるとまず難しいだろう。
なんせ、バイオレットの関係で探さなければならない。
警察関係の人ならば大勢いるけど、それ以外の強い人なんてまずいない。
紫織としての知り合いならば学校の人を呼べばいいけれども、紫織=バイオレットと知られるのはよくない。
約一名感づいている人がいるが、それでも、決定打はないだろう。
それなのに、自分からバラすのは色んな意味でよくないだろう。
……本当は一番頼りになる人なんて分かり切っている。
さっきから頭の中で彼が思い浮かんでしょうがなかった。
でも、彼には絶対に言えない。
バイオレットとしてからの依頼も。
僕からのお願いも絶対にしない。
彼には迷惑をかけたくないし、かけられない。
良子さんには悪いけど、この話は断る方向にしよう。
僕自身が動ければいいけれども、多分それは無理だろうな。
「…良子さん。」
「さて、本題に入りましょうか。」
良子さんはそう言うと意思の強い瞳をこちらに向ける。
「分かりました。」
こうして僕たちは打ち合わせを始めた。
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