【完結】ただただ、ボクらは日常に居るだけ

櫛田こころ

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第43話 とは言え、出だしは相変わらず

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 何故か、だけど。

 スマホですぐに返信出来た理由がわかったかもしれない。


「……またぁ?」
「………また、だねぇ?」


 綺洞さん、お得意の一反木綿に戻っての……棒や機材などに絡みつく癖。

 今日はデスクに絡まちゃってたので、ほどくの大変だったよ!!


「……いいけどさぁ」


 わざとじゃないし、無意識のうちになるものはどうしようもない。シュルシュル外れる布の感触、シルクじゃなくて木綿なのに触り心地は良い。

 前は他の人に触って、ほどいてもらってただろうけど……。

 今は、あたしだけがいい。

 あたし以外の女の子もだけど、男はギリギリで陸音さんくらい。

 他の人は嫌。

 なんか嫌、すっごく嫌。

 これが……恋からの独占欲?

 綺洞さん、呆れないかなあ……?

 最後の引っ掛かりを外せば、綺洞さんは人型になってくれた。似合わないわけじゃないけど……やっぱり、あの髪型はしてた。


「……なんか、あったのかい?」


 あたしの感情の変化に、微妙なラインもすぐに気づいちゃうんだから……当たって砕けるのは早いうちがいいかな? でないと、仕事の再契約になるのも難しくなるし。


「……聞いてくれる?」
「そりゃね。ボクら、ズッ友もだけど。ビジネスパートナーでしょ?」
「……それ以上、欲しいって言っても?」
「…………はい?」
「欲しいの。もっと、友だち以上」


 告るなんて初だから……全然うまくいかない。

 びっくりされてるのはわかるけど、うまく言えないの。

 どれだけ、綺洞さんがあたしにとって大事なのか。

 今まで些細なことでも、うれしくしてもらえたのか。

 隣がいい。

 女友だちで、ズッ友以上の位置が欲しい。

 言葉で関係が変わるのは覚悟してたけど……こんな、ドロドロした独占欲があるなんて、あたしも今気づいたんだ。

 この街で、あのきっかけで、日常生活に潤いが出来ても。

 綺洞さんとはそれ以上の関係が欲しいって……超わがまま。

 綺洞さんは目を丸くしてたけど、あたしの肩にちょっと手を置いたら……ぐっと引き寄せて懐に入れてくれた?!


「なーんだ。ボクの一方通行じゃなかったんだぁ?」


 ヨシヨシしてくれる手も優しい。じわっと、綺洞さんの服が濡れるような感触したから……あたし、ちょっと泣いてたのね?


「……変な言い方に、なった」
「那湖ちゃんらしいよ。ボクは嬉しい」
「……んじゃ。…………す、き、です」
「ボクも好きだよぉ。髪型ちょっと変えただけで、この反応……我ながら妙案」
「え、わざと??」
「那湖ちゃんに見て欲しいと思ったのさー。ボクを」
「……にゅ」


 やはり、のんびり見えていても……あたしよりずっと歳上の妖怪さんなのは間違いない。

 そして、キスこそはせんかったが。恋人繋ぎで、陸音さんとこに報告行きましたー。
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