【完結】ただただ、ボクらは日常に居るだけ

櫛田こころ

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第8話 雑さもまた日常となる

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 前回の、ワンポイント絞りでルームウェア!の企画は、無事に通過しまして!! あえて、安価な染料で大量生産!にしたところ……ご近所さんたちの口コミで若い子たちだけじゃなく、大人層にも広がっていき?


「権利料や、利益率の20%はおふたりにそれぞれお支払いしますので! ブランド化はどうでしょうか!!」
「「却下です」」


 理由は二個ある。

 あくせくして、お互い働きたくないから。

 もう一個は、綺洞さんの染料は独自開発なので……御実家に伝わっても同じ返答が来るでしょうと? と、あたしは綺洞さんに聞いた。

 あたしの理由は、一個目だけだからね?


「でないと、陸音さんとこのモーニング以外のごはん食べに来れないもん。ここは皆の憩い~」
「さぁんせー! ボクものんびり染め物したいし」


 今日のお昼は、やっぱり悩みまくっても『ごろごろ卵サラダドック』!! あたし専用のはお値段いっしょでもサラダ多め!! 代わりにプラスでケーキ頼むからどっこいどっこい??

 綺洞さんは、シェア無しの時間帯だから鉄板ナポリタン。

 朝はシェア多いけど、昼はお互い自分の好きなのを食べる。なんとなく、ここの復帰ができてからそんなルーティンになったわけ。


「適度に働くのもいいが、がむしゃらはお前さんらに似合わんしな?」


 とか言いつつも、ぐーたらだった陸音さんは働き者さんだけどね? コーヒー入れているから、カフェオレかなと思ってごはんはパクっと食べ終わったんだけど??


「ケーキが違う??」
「試作だ。那湖が好きなチーズ系にしてみた!」
「! それで濃いめのブラック!?」


 お店再開の恩人とやらで、あたしは時々陸音さんから新作メニューの試食を頼まれているのだー。

 恩人はこっちもだけど、男飯とカフェ飯の間をとったごはんが美味しくて! 通常料金でいいから、好みの具材をちょい足ししてもらっているのだー! 

 雑な盛り付けが、またいいんだよねぇ? 自炊が壊滅的のあたしには『毎日食べたいごはん』が重要だもーん。特別感の高いごはんはたまにでいい。宴会とかのは。


 朝昼晩、飽きないごはんの基準は! そんなあたし基準でいいので、デザートもおんなじ! 今日のはフワッフワのスフレチーズ?


「日持ちにしくいが、うちは老人客も多いしな? 歯に負担のないもんもいいだろ?」
「と言いつつ、流子るこちゃんが叔父貴連れて来るから??」
「……勘のいい女、モテるぞ」
「どもども? そっかぁ、叔父貴来るんだー?」


 実は、陸音さんの彼女さん……あたしの超絶歳上の美人な従姉妹ちゃんなのだぁ! ここの補強工事費とかを、そっちの叔父さんに工面してもらっているのであーる。

 しかしながら、このチーズケーキの寿命は短い!

 ふるふるふわふわの生地へとフォーク投入!! シュワって、感覚がフォークに伝わってきて!! パクって口に入れたら、優しい甘さと濃厚な焼きチーズの風味が!?

 あえて、ホットのコーヒーをひと口でミルク無しでもスッキリする快感!! これは毎日よりも、特別感のあるご褒美ケーキだぁ。


「……幸せそうだなぁ?」
「だねぇ? さっすが、陸音さんー」
「妬けねぇの?」
「何がぁ?」
「うん! これ、女の子好きな味だよ!! チーズ好きの流子ちゃん向けかも」
「よっしゃ! 従姉妹殿にお墨付きとくれば、今度はアレンジ」
「ははは。姪の胃袋を掴むとは相変わらずの子だ」


 とここで、美声過ぎるバリトンボイスが。

 皆で振り返れば、前に綺洞さんがポンチョ風のマントに仕立てた青い服を着こなしていた『叔父貴』がテラスの向こう側でニコニコしてたのだー。
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