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第38話 我らだったモノ
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失いたくなかったからこそ、つくってしまった。
失いたくなかったからこそ、いじってしまったかもしれない。
『俺』の中の『魔王』が溶けてきえていこうとしている。
とっくの昔に、転生を成しているであろう彼女のところへ向かおうとしているのか。
それとも、己の愚行に近い感情で魔族を束ねられなかった詫びなのか。
『俺』ともうひとりの『俺』が空間の中で向き合っているのが見えた。俺の『目』が赤いのがかつての『魔王』なのだろう。威厳のかけらもなく、ただただ『胤』でしかない『俺』を見下ろしていた。どうやら、『俺』はエルディーヌ並みにちっこいガキの姿のようだ。
「……後悔しまくってんのか? ミランダの用意した『箱庭』をあんな風に利用されたことが」
『……しているさ。安寧の土地を、あんなにも穢してしまったんだ』
「そうだな。『胤』である『俺』が育つにはああするしかなかったが……お前は逝くんだろう? 彼岸の方へ」
『……ああ。間違いだと彼女に怒られても、私は復活したとて意味がない。お前はお前の望むがままに、エルディーヌのところへ行くがいい』
「当然。『俺』が認めた『母』だからな?」
流されるままに生きていたのに。
帝国の襲撃時、ジェイクと対峙したら『生きたい』を強く主張したときに胸を打たれたように感じた……あの、甘い痺れ。
あれを知りたくて、もっと見たくて『胤』としてずっと隠れていた。
ジェイクとのやりとりはとんちきなのも多かったが、こんなふたりが『親』なら『俺』を存分に甘やかしてくれるだろうと……我ながら、ちっぽけな願いを抱いてしまったもんだ。
『魔王』だったのに。
『魔族の胤』であることに変わりはないのに。
だから、『箱庭』破壊をエルディーヌと同調したときは……この魔力ごと、脈に点在する『瘤』を一気に消滅させようと決めた。魔族らは結局自分勝手な考えしか持っていなかったからな?
『俺』を復活させても、正妃や側妃なんていらない。『俺だけ』が選ぶのはこれから生まれてくる『誰か』から自分で決めるんだ。自分勝手な連中の企てには乗る気はなかった。
『生きとし生けるモノ……すべての安寧の時期は、瞬きくらいに短い。魔が魔であっても、人間とて堕ちることは多いのだ。……お前なら、それを少しでも遅らせてくれることを願う』
「それ、次の自分にも言いつけとけよ? 『俺』だけの使命にするな」
『……そうだな。ミランダにまたひとつ叱られる』
「自分だけの『あいつ』に固執すんのも止めとけよ? 自分と相手が変わるのだってあるんだからな?」
愛と正義が同一だとは、『俺』だって思わない。
多くの記憶と多くの血を『はじまり』の転生に戻したとしても。『胤』で混ざった『俺』が出来たことで……紛い物の『魔王』の意識が出来上がって、こうなった。『俺』は自分の愛情を魔族とは違う正義に向けたわけじゃない。
単純に、あの『箱庭』の仕組みが気に入らなかっただけだからな?
それを『魔王』も理解したのか頷いてから……『俺』の前にいた姿を消した。
『俺』は『俺』で浮上する感覚はあったが……この意識を保つのがそろそろしんどい。『胤』らの魔力を吸収しまくって、ようやく保てていただけだからな。いい加減、ただの『魂』に戻ろうと意識をまどろみに流れさせることにした。
(エルディーヌ……母に、なってくれ)
次、意識が昇るときは産声をあげるときがよかったと思わずにいられない。そう遠くない月日で、あのふたりなら叶えてくれるだろうか。……と思ったが、まだエルディーヌが成熟してないので、大人しく寝ておくだけにした。
失いたくなかったからこそ、いじってしまったかもしれない。
『俺』の中の『魔王』が溶けてきえていこうとしている。
とっくの昔に、転生を成しているであろう彼女のところへ向かおうとしているのか。
それとも、己の愚行に近い感情で魔族を束ねられなかった詫びなのか。
『俺』ともうひとりの『俺』が空間の中で向き合っているのが見えた。俺の『目』が赤いのがかつての『魔王』なのだろう。威厳のかけらもなく、ただただ『胤』でしかない『俺』を見下ろしていた。どうやら、『俺』はエルディーヌ並みにちっこいガキの姿のようだ。
「……後悔しまくってんのか? ミランダの用意した『箱庭』をあんな風に利用されたことが」
『……しているさ。安寧の土地を、あんなにも穢してしまったんだ』
「そうだな。『胤』である『俺』が育つにはああするしかなかったが……お前は逝くんだろう? 彼岸の方へ」
『……ああ。間違いだと彼女に怒られても、私は復活したとて意味がない。お前はお前の望むがままに、エルディーヌのところへ行くがいい』
「当然。『俺』が認めた『母』だからな?」
流されるままに生きていたのに。
帝国の襲撃時、ジェイクと対峙したら『生きたい』を強く主張したときに胸を打たれたように感じた……あの、甘い痺れ。
あれを知りたくて、もっと見たくて『胤』としてずっと隠れていた。
ジェイクとのやりとりはとんちきなのも多かったが、こんなふたりが『親』なら『俺』を存分に甘やかしてくれるだろうと……我ながら、ちっぽけな願いを抱いてしまったもんだ。
『魔王』だったのに。
『魔族の胤』であることに変わりはないのに。
だから、『箱庭』破壊をエルディーヌと同調したときは……この魔力ごと、脈に点在する『瘤』を一気に消滅させようと決めた。魔族らは結局自分勝手な考えしか持っていなかったからな?
『俺』を復活させても、正妃や側妃なんていらない。『俺だけ』が選ぶのはこれから生まれてくる『誰か』から自分で決めるんだ。自分勝手な連中の企てには乗る気はなかった。
『生きとし生けるモノ……すべての安寧の時期は、瞬きくらいに短い。魔が魔であっても、人間とて堕ちることは多いのだ。……お前なら、それを少しでも遅らせてくれることを願う』
「それ、次の自分にも言いつけとけよ? 『俺』だけの使命にするな」
『……そうだな。ミランダにまたひとつ叱られる』
「自分だけの『あいつ』に固執すんのも止めとけよ? 自分と相手が変わるのだってあるんだからな?」
愛と正義が同一だとは、『俺』だって思わない。
多くの記憶と多くの血を『はじまり』の転生に戻したとしても。『胤』で混ざった『俺』が出来たことで……紛い物の『魔王』の意識が出来上がって、こうなった。『俺』は自分の愛情を魔族とは違う正義に向けたわけじゃない。
単純に、あの『箱庭』の仕組みが気に入らなかっただけだからな?
それを『魔王』も理解したのか頷いてから……『俺』の前にいた姿を消した。
『俺』は『俺』で浮上する感覚はあったが……この意識を保つのがそろそろしんどい。『胤』らの魔力を吸収しまくって、ようやく保てていただけだからな。いい加減、ただの『魂』に戻ろうと意識をまどろみに流れさせることにした。
(エルディーヌ……母に、なってくれ)
次、意識が昇るときは産声をあげるときがよかったと思わずにいられない。そう遠くない月日で、あのふたりなら叶えてくれるだろうか。……と思ったが、まだエルディーヌが成熟してないので、大人しく寝ておくだけにした。
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