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第43話 贄姫は幸せを掴む
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ジェイク様は廊下を走り抜けながら、どこかへと向かっていらした。すれ違う人たちは呆れる表情ばかり見せてくるのだけれど、ジェイク様がなにかしたのだろうか?
とりあえず、大きな扉のある部屋の前に立たれると片手で開けてから滑り込むように……抱えた私ごと入って、閉めたと同時に床へ座り込んでしまわれた。息を整えるあたり、本当に早くふたりきりになりたいことがよくわかったのだけれど。
「あの……大丈夫、ですか?」
「……大丈夫。君の可憐さをほかに見せてしまったのが、ちょっと嫌でさ?」
「……えと。そう、でしょうか?」
「ほんと、ほんと! ……もっと、よく見せて? 俺のレティ」
頬に手を添えられ、真正面からお互いに見つめ合う。恥ずかしいけれど、皆様以上にジェイク様にも好みの顔立ちになれたのだから……そこは嬉しく思わないと。だけど、甘い視線に耐えきれず、少し目を逸らすのは許していただきたい。
私のことが好き。
好き以上に愛している。
その感情がとても素直に顔からあふれ出ているのだから、恥ずかしくて堪らないのは許してほしいです。なのに、ぐっと顔を近づけてくるから、目を逸らすなと言わんばかりに圧が強い。私、男性との接触は貴方様だけしか慣れていないんですよ!?
「ち、近い……です」
「そりゃ、じっくり見たいからさ。本当に綺麗なレディになっちゃって。……魔力とかが安定したからかな?」
「……シスファ様は、おそらくそうだと」
「そっか~」
安心されたかと、思えば。ちゅっ、となんの予告もなく口づけが始まった。一度や二度ならず、何度も繰り返し。軽いものから知らない甘みの強いものまで。
最後に長く合わせるのが終わると、身体を引き寄せてぎゅっと抱きしめてくださった。汗をたくさん掻いたジェイク様なのに、何故か爽やかで甘い香りがするのは何故だろう?
「……ジェイク様。私、貴方様の隣に立てますか?」
身体は成長したかもしれないが、皇太子妃の教育を受けても……相応しくない女性だと思われるかもしれない。廊下でたくさんすれ違っていった人たちの視線がそうかと思ったからなのだけれど。質問をすれば、ジェイク様はさらに強く抱きしめてくださった。
「もちろん。俺の妃は生涯ただひとり。君だけだ、レティ……エルディーヌ姫」
「でも、さっきすれ違った人たちは」
「ああ、あれ? シスファたちとだいたい同じだよ。俺の暴走しがちな行動に呆れているだけ」
「……そう、なんですか?」
「エルディーヌのことをとやかく言わないよ。むしろ、君の噂は憐れむ方が城内でも多かったし」
「え?」
たしかに、攻め入った国の王族ではあったが、『贄姫』だったというだけでそんな噂が立つものだろうか。それか、陛下にも皇太子殿下の婚約者と認められたから……かもしれない? ジェイク様がお元気な方だというのはわかるが、皇太子の行動に呆れるのを態度に出していいのか。
「俺は今までちゃらんぽらんだったからね。女遊びはしてないけど、性格の割には特定の女性を必要としてなかったし。騎士団ではナーディアたちになじられる阿呆とか言われる始末。……そこに、亡国の王女を引き込んだって噂は、まあ物語のなんやらみたいな印象を持たせたかもね」
「……ただの、保護だと最初は」
「最初は~、だけど。勇ましい生き方をしてきた女の子に俺は心打たれた。その子がさらに綺麗になって俺の側にいてくれるんだ。……愛してる、エルディーヌ。君だけが俺の宝だ」
「……はい。私も、愛しています」
もう一度、長くなるくらいに口づけを交わし合い、固く抱き合ったあとはたくさんたくさんお話し合った。
ジェイク様が即位するまで、いろんなところに出かけようとか他愛もない話も含めて……本当にたくさん。さすがに、寝室はいっしょになるのは年齢の関係上遠慮させていただいたが。そこからは婚礼の時期までに、私は贄姫だったときには知らなかった経験をたくさんさせてもらえた。
ダンス、行儀作法。ほかにも学ぶことは多かったが、ジェイク様の隣に立つと決意してから……それに、将来あの『魔王』を産むことを約束した自分を強くしていくためにも、出来ることをたくさん増やそうと意気込んだのだ。
途中、休んだり、ジェイク様やシスファ様たちとの時間で癒されることもある。育むものが思慕以外の愛もあることを、ラジールではいっさい出来なかったことを学べたのだ。あの『箱庭』には二度と戻れないし、もう同じものを作らせないように帝国以外の同盟国などにも条例が回ったそう。
父らの処刑も『箱庭』の消滅時期とほぼ同じくらいに行使されていたそうだが、哀しさは特になくあっさりした感情しか浮かばなかった。恨み辛みはあったはずだが、『箱庭』に放っておいてくれただけだから『無関係』と思っていたところがあったのだろう。
亡き実母には祈りを捧げることはしたりしたが、彼らには哀れみくらいしか残らないので一切しなかった。
そして、『贄姫』から解放されて二年くらいの月日が経ち。
「ここに、永遠の愛を誓いますか?」
「「誓います」」
呪いの贄姫などと謳われていた私自身は、たくさんの愛に囲まれてジェイク様と婚礼の儀を迎えることが出来た。そして、お腹の中にはもう『魔王』だった子どもがきちんと宿っているのが先月くらいにわかり……生まれた子どもは、私たちの特徴をちょうどよく受け継いだ男の子だった。
【終】
とりあえず、大きな扉のある部屋の前に立たれると片手で開けてから滑り込むように……抱えた私ごと入って、閉めたと同時に床へ座り込んでしまわれた。息を整えるあたり、本当に早くふたりきりになりたいことがよくわかったのだけれど。
「あの……大丈夫、ですか?」
「……大丈夫。君の可憐さをほかに見せてしまったのが、ちょっと嫌でさ?」
「……えと。そう、でしょうか?」
「ほんと、ほんと! ……もっと、よく見せて? 俺のレティ」
頬に手を添えられ、真正面からお互いに見つめ合う。恥ずかしいけれど、皆様以上にジェイク様にも好みの顔立ちになれたのだから……そこは嬉しく思わないと。だけど、甘い視線に耐えきれず、少し目を逸らすのは許していただきたい。
私のことが好き。
好き以上に愛している。
その感情がとても素直に顔からあふれ出ているのだから、恥ずかしくて堪らないのは許してほしいです。なのに、ぐっと顔を近づけてくるから、目を逸らすなと言わんばかりに圧が強い。私、男性との接触は貴方様だけしか慣れていないんですよ!?
「ち、近い……です」
「そりゃ、じっくり見たいからさ。本当に綺麗なレディになっちゃって。……魔力とかが安定したからかな?」
「……シスファ様は、おそらくそうだと」
「そっか~」
安心されたかと、思えば。ちゅっ、となんの予告もなく口づけが始まった。一度や二度ならず、何度も繰り返し。軽いものから知らない甘みの強いものまで。
最後に長く合わせるのが終わると、身体を引き寄せてぎゅっと抱きしめてくださった。汗をたくさん掻いたジェイク様なのに、何故か爽やかで甘い香りがするのは何故だろう?
「……ジェイク様。私、貴方様の隣に立てますか?」
身体は成長したかもしれないが、皇太子妃の教育を受けても……相応しくない女性だと思われるかもしれない。廊下でたくさんすれ違っていった人たちの視線がそうかと思ったからなのだけれど。質問をすれば、ジェイク様はさらに強く抱きしめてくださった。
「もちろん。俺の妃は生涯ただひとり。君だけだ、レティ……エルディーヌ姫」
「でも、さっきすれ違った人たちは」
「ああ、あれ? シスファたちとだいたい同じだよ。俺の暴走しがちな行動に呆れているだけ」
「……そう、なんですか?」
「エルディーヌのことをとやかく言わないよ。むしろ、君の噂は憐れむ方が城内でも多かったし」
「え?」
たしかに、攻め入った国の王族ではあったが、『贄姫』だったというだけでそんな噂が立つものだろうか。それか、陛下にも皇太子殿下の婚約者と認められたから……かもしれない? ジェイク様がお元気な方だというのはわかるが、皇太子の行動に呆れるのを態度に出していいのか。
「俺は今までちゃらんぽらんだったからね。女遊びはしてないけど、性格の割には特定の女性を必要としてなかったし。騎士団ではナーディアたちになじられる阿呆とか言われる始末。……そこに、亡国の王女を引き込んだって噂は、まあ物語のなんやらみたいな印象を持たせたかもね」
「……ただの、保護だと最初は」
「最初は~、だけど。勇ましい生き方をしてきた女の子に俺は心打たれた。その子がさらに綺麗になって俺の側にいてくれるんだ。……愛してる、エルディーヌ。君だけが俺の宝だ」
「……はい。私も、愛しています」
もう一度、長くなるくらいに口づけを交わし合い、固く抱き合ったあとはたくさんたくさんお話し合った。
ジェイク様が即位するまで、いろんなところに出かけようとか他愛もない話も含めて……本当にたくさん。さすがに、寝室はいっしょになるのは年齢の関係上遠慮させていただいたが。そこからは婚礼の時期までに、私は贄姫だったときには知らなかった経験をたくさんさせてもらえた。
ダンス、行儀作法。ほかにも学ぶことは多かったが、ジェイク様の隣に立つと決意してから……それに、将来あの『魔王』を産むことを約束した自分を強くしていくためにも、出来ることをたくさん増やそうと意気込んだのだ。
途中、休んだり、ジェイク様やシスファ様たちとの時間で癒されることもある。育むものが思慕以外の愛もあることを、ラジールではいっさい出来なかったことを学べたのだ。あの『箱庭』には二度と戻れないし、もう同じものを作らせないように帝国以外の同盟国などにも条例が回ったそう。
父らの処刑も『箱庭』の消滅時期とほぼ同じくらいに行使されていたそうだが、哀しさは特になくあっさりした感情しか浮かばなかった。恨み辛みはあったはずだが、『箱庭』に放っておいてくれただけだから『無関係』と思っていたところがあったのだろう。
亡き実母には祈りを捧げることはしたりしたが、彼らには哀れみくらいしか残らないので一切しなかった。
そして、『贄姫』から解放されて二年くらいの月日が経ち。
「ここに、永遠の愛を誓いますか?」
「「誓います」」
呪いの贄姫などと謳われていた私自身は、たくさんの愛に囲まれてジェイク様と婚礼の儀を迎えることが出来た。そして、お腹の中にはもう『魔王』だった子どもがきちんと宿っているのが先月くらいにわかり……生まれた子どもは、私たちの特徴をちょうどよく受け継いだ男の子だった。
【終】
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