32 / 73
第32話 彼は彼でない
しおりを挟む
奈月のシェルター実験を開始した直後。
数多の並行世界で『ズレ』が生じたのに、一番に気づいたのは。
別の並行世界で、軍事施設に所属していたクロード張本人だった。肌にピリッと痛むくらいの暑さを感じた時に、呟いただけだったが。
野営の焚き火に当たっていたから、火花が飛んだ程度。それくらいは普通にあることだが。
(……痛!?)
珍しい頭痛が起きたと同時に、体が若干ふらついたのだが。頭の中に入ってきた膨大な情報が渦巻いた時には、あまりのふらつきに同僚らが倒れる前に補助してくれた。
「……大丈夫か、クロード?!」
あの可能性では、藍葉の相対はクロードだったが。
こちらの並行世界では、その相対だとされているのに彼女は会えていないので気づいていない。
それがなぜかを疑問に思っていたのは、今流れてきた情報が答えだった。
「……シゲぇ。おったわ、俺の相対のパターン」
「は? 何を言っとんじゃ?」
すると、シゲと呼ばれた同僚にも同じ熱源が飛んできたのか。クロードを落とさないように気を付けながらも、頭を痛そうに抱え出した。
「……おい。俺はええから、離せ」
「だだあだだ!? いだだ!? なん……じゃ、この記憶!?」
並行世界の確立どころか、こちらはSFのような近未来と言っていいのか。
いい方を変えれば、異世界ファンタジーとも捉えられる南北に切り離した……世界戦争の真っ只中。
お互いが、お互いのために……最後の最後に、種を残すためにパートナー交換を一度した身ではあったが。
どうやら、あの『加東奈月』のシェルター実験が始まったことでの『ズレ』により……ひとつの生まれと終わりが大幅に変わることを理解したのだ。
「魂の相違がないように。並行世界と現実世界の位置……か。あの世まで進出って、凄いやんけ」
混濁するくらいの、記憶に残るそれは。
言わば臨死体験として現実側に伝えられていたと知れば……異世界ファンタジーどころかSFの在り方が大きく変わるだろう。
本気の本気で、前世と今世で結ばれる相手を変えたいと……恋心の名残でパートナーを一旦入れ替えたが、その必要はなくなるかもしれない。
兄弟姉妹の近親交配がないように、いとこからゆっくり始まった『障害』のズレのせいで健常者が少ない現実世界を……奈月自身が実は経験していると知れば。
これからの人間の寿命とて、百年以上年月を越えるのも不思議じゃないのを。あの世とこの世で調整しているのも始まると知ったら、開発が『神側』なのも頷ける。
神とて万能でないし、次元を超えただけの異人だっただけなのだから。
「……マジ、なん? 交換の必要……するのか?」
「いや? あの世での俺の相対はあいつや。藍葉は今のお前を選んだんやで? それは応えろや」
「……獄卒なっとって、もか。別の俺も藍葉やのに」
「……いいんや。こっちの俺は俺で、悠里がいい」
人間じゃなかったが、そもそも二人も人間ではない。魂の固定が人間ではなく、鬼子と言う獄卒。見張りメインの軍隊の一部でしかないが。
こちらの奈月には進言しやすい位置にいる。年齢も位も違うが、気兼ねなく言える相手は変わりない。さてさて、彼は彼でどこまで共有しているか切り離しているか。
今日の任務が終わってから、補佐官のひとりである彼にも聞こうと成樹と決めたのだった。
数多の並行世界で『ズレ』が生じたのに、一番に気づいたのは。
別の並行世界で、軍事施設に所属していたクロード張本人だった。肌にピリッと痛むくらいの暑さを感じた時に、呟いただけだったが。
野営の焚き火に当たっていたから、火花が飛んだ程度。それくらいは普通にあることだが。
(……痛!?)
珍しい頭痛が起きたと同時に、体が若干ふらついたのだが。頭の中に入ってきた膨大な情報が渦巻いた時には、あまりのふらつきに同僚らが倒れる前に補助してくれた。
「……大丈夫か、クロード?!」
あの可能性では、藍葉の相対はクロードだったが。
こちらの並行世界では、その相対だとされているのに彼女は会えていないので気づいていない。
それがなぜかを疑問に思っていたのは、今流れてきた情報が答えだった。
「……シゲぇ。おったわ、俺の相対のパターン」
「は? 何を言っとんじゃ?」
すると、シゲと呼ばれた同僚にも同じ熱源が飛んできたのか。クロードを落とさないように気を付けながらも、頭を痛そうに抱え出した。
「……おい。俺はええから、離せ」
「だだあだだ!? いだだ!? なん……じゃ、この記憶!?」
並行世界の確立どころか、こちらはSFのような近未来と言っていいのか。
いい方を変えれば、異世界ファンタジーとも捉えられる南北に切り離した……世界戦争の真っ只中。
お互いが、お互いのために……最後の最後に、種を残すためにパートナー交換を一度した身ではあったが。
どうやら、あの『加東奈月』のシェルター実験が始まったことでの『ズレ』により……ひとつの生まれと終わりが大幅に変わることを理解したのだ。
「魂の相違がないように。並行世界と現実世界の位置……か。あの世まで進出って、凄いやんけ」
混濁するくらいの、記憶に残るそれは。
言わば臨死体験として現実側に伝えられていたと知れば……異世界ファンタジーどころかSFの在り方が大きく変わるだろう。
本気の本気で、前世と今世で結ばれる相手を変えたいと……恋心の名残でパートナーを一旦入れ替えたが、その必要はなくなるかもしれない。
兄弟姉妹の近親交配がないように、いとこからゆっくり始まった『障害』のズレのせいで健常者が少ない現実世界を……奈月自身が実は経験していると知れば。
これからの人間の寿命とて、百年以上年月を越えるのも不思議じゃないのを。あの世とこの世で調整しているのも始まると知ったら、開発が『神側』なのも頷ける。
神とて万能でないし、次元を超えただけの異人だっただけなのだから。
「……マジ、なん? 交換の必要……するのか?」
「いや? あの世での俺の相対はあいつや。藍葉は今のお前を選んだんやで? それは応えろや」
「……獄卒なっとって、もか。別の俺も藍葉やのに」
「……いいんや。こっちの俺は俺で、悠里がいい」
人間じゃなかったが、そもそも二人も人間ではない。魂の固定が人間ではなく、鬼子と言う獄卒。見張りメインの軍隊の一部でしかないが。
こちらの奈月には進言しやすい位置にいる。年齢も位も違うが、気兼ねなく言える相手は変わりない。さてさて、彼は彼でどこまで共有しているか切り離しているか。
今日の任務が終わってから、補佐官のひとりである彼にも聞こうと成樹と決めたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる