【完結】CCクロニクル・バースト

櫛田こころ

文字の大きさ
34 / 73

第34話 氷点下も耐えねば

しおりを挟む
 熱もだが、冷感も大事と言われたが。

 装置はそのままに、宗ちゃんの素体を一気に冷やすかどうかで悩んだ。素体は万が一壊れていいものの、組み込んだ宗ちゃんのデバイスが無事かの保証ができない。

 とくれば、エアコン調整のように温度を下げる結論に至った。


《そこの『ボク』を心配せずとも、バックアップはしっかり取っているじゃないか?》
「……それでもだよ」


 カフリンクスに予備のデバイスは繋いであるが、誤作動やロストの可能性はゼロではない。この並行世界にリンクして、最初の相棒と言ってもいい存在を……杜撰な扱いだなんて、正直したくない。

 しかし、どこかの並行世界ではこの宗ちゃんとリンクして、こちらの彼を管理しているかもしれない。とは言って、簡単に放棄する気にもなれないのは奈月の性格もあって、無理だった。

 レバーで徐々に氷点下に向かう単純作業ではあったが、一気に下ろすのは怖い。

 そして、あと少しで下り切ると思った途端。


 パリン、パリン!!


 と、シェルターにヒビが入り、宗ちゃんの素体がガチガチに固まってしまった。


「俺らの判断で、温度上げたる!!」
「奈月くんはさっちゃんと素体見てて!! 壊れたら、本気でごめん!!」


 呆けかけたが、そんな場合じゃないと咲夜もいっしょにシェルターに向かったが。ヒビは下手に広がっていないものの、シェルターの外と内側の距離は10mほど離れているために……駆け寄れない。

 この距離のもどかしさを、奈月は自分の現実側で感じたのは……母の死を知った時だ。ドナーを受けても、結局死を受け入れてたのは奈月とてあったはずなのに。

 擬似的な人格でも、『知り合い』が死にかけているようなこの状況ですら、奈月の心は潰れそうに痛い。

 痛過ぎて、破裂しそうだった。


「……宗ちゃん!?」
《大丈夫だ。少し痛覚に似たバグを感じてはいるけれど、素体は少しヒビが入った程度だ。替えは必要だなあ?》
「だ、大丈夫!? こっちの予備にコピーは!」
《ははは。ボクはAIだよ? 既に幾つかの転送処置は終わっているとも。とりあえず、この素体での修理費の計算が必要なようだね》
「……ほっ」
「えっと……とりあえず、大丈夫?なの??」


 咲夜には宗ちゃんの音声が聞こえていないので、奈月の一喜一憂にオロオロしていたが。藍葉らの方も対処は落ち着いた雰囲気だったので、宗ちゃんからのリクエストを話すことにした。


「……修理申請って、職員室に言えば?」
「あ、まあ……そうね? 破損はちょくちょくあるらしいけど、このレベルだと……私らと書類記入くらいかしら?」
「俺が取ってくるわ。そんくらいやったら、今日のリーダー扱いで免除してくれるはずや」
「あんた、顔はいいもんねー?」
「……彼女の台詞なん?」
「彼女だからー」
「……咲夜ぁ」
「……兄さん、頑張って」


 素体こと、フィギュアを確認したが。温度変化の差のせいで、ヒビがきちんと入ってしまっていた。この手のフィギュアの購入し直しは大変なので、強化も兼ねて修理道具を買いに行くことに決めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...