35 / 73
第35話 凍りついた各所
しおりを挟む
『宗ちゃん』を通じて、それぞれの並行世界にまた亀裂のようなズレが起きた。
あの世とこの世、は既に地獄の『炎』と『氷』への被害拡大はとっくに生じているのだが。
あの世でも、天上世界については……地獄からの亡者が逃げ出したかと思うくらい、逃げ惑う住人が多かった。管理者である、神の一端が対処せねば……彼らとて、この氷の在り方は軍事訓練かと思いかけたくらいだ。
「……全く。あの世と現世。それ以外の『魂魄』を整えるのに……我が一族を使うとは」
ふわふわの金髪に白い肌。白装束は天使のそれではなく、軍服と似たような。
帽子を被り直していると、横に黒髪で彼以上に背の高く体格の良い男が警棒を握りながらやってきた。
「……お前の孫の一端か?」
「そのようだ。世代だと三世代くらいか? 僕が女なのか男なのかも、向こうではわからん」
「……想像したくないな。女のお前は」
「骨を砕いて、髄を『ID』にしているんだ。別段、死後の姿を生前に止めておくのも嫌がる輩がいるだろう?」
「……ジェンダー連中のことか」
「混ざっているんだ。稀に産まれる性別がどちらでもない中性体よりも……自分がわからず、苦しい思いをする」
自分もそんな外見でいるので、こちらで妻を得るまでどれほど悩んだことか。両耳に埋まっている、彼女から受け取ったIDのピアスのおかげで……『男』としての今があるのだ。
仕事も恵まれ、かつての盟友である横の男とも再会出来た。だが、こいつの横に立つ女はまだ決まっていない。
此度の、星の変革期と同時に……通常の並行世界とは切り離された、並行世界のどこかからIDを手に戻ってくるかもしれないが。
あの世の裁判が滞るのは仕方がないにしても、警棒を持つ資格の巡査に恋人がいないと色々不十分なことが出てしまう。輪廻転生までの、充分な生活を送るためのフォローする絶対な相手だが。
下手すると、万年単位で共に過ごす可能性がある。それをたった独りで過ごすのには鋼の精神が必要だ。この男は今のところ、表にそれを出していない。
「……しかし、境目がこれだけ凍るのも酷いな」
警棒を軽く振って、風の刃の如く衝撃波を放ったが。凪いだくらいで終わったので、腰のベルトに戻すしかなかった。こちらが同じことを発動しても変わりないからだ。
「……天上と冥府。星と魔。それらが全て、シャッフルされるかもしれんなあ?」
発端者である、孫の記憶が少し流れてきた。
一律して、名前は『加東奈月』にしているが。それはどの時の誰の『孫の名前』にしてあるのか、もう定かではない。
ギリギリ意識を祖父か祖母に設定してはみても、ここまでの技量をものにする『孫』を腕に抱いた記憶もないのだ。
「……とくれば。転生した最初の位置か?」
「僕にも皆目検討つかないよ。今の奥さんともまだ子どもなんていないのに」
その『種』は誰なのか。奈月も誰なのか。
気にはなるが、今の職務は無視出来ないので待機しているしか出来なかった。
あの世とこの世、は既に地獄の『炎』と『氷』への被害拡大はとっくに生じているのだが。
あの世でも、天上世界については……地獄からの亡者が逃げ出したかと思うくらい、逃げ惑う住人が多かった。管理者である、神の一端が対処せねば……彼らとて、この氷の在り方は軍事訓練かと思いかけたくらいだ。
「……全く。あの世と現世。それ以外の『魂魄』を整えるのに……我が一族を使うとは」
ふわふわの金髪に白い肌。白装束は天使のそれではなく、軍服と似たような。
帽子を被り直していると、横に黒髪で彼以上に背の高く体格の良い男が警棒を握りながらやってきた。
「……お前の孫の一端か?」
「そのようだ。世代だと三世代くらいか? 僕が女なのか男なのかも、向こうではわからん」
「……想像したくないな。女のお前は」
「骨を砕いて、髄を『ID』にしているんだ。別段、死後の姿を生前に止めておくのも嫌がる輩がいるだろう?」
「……ジェンダー連中のことか」
「混ざっているんだ。稀に産まれる性別がどちらでもない中性体よりも……自分がわからず、苦しい思いをする」
自分もそんな外見でいるので、こちらで妻を得るまでどれほど悩んだことか。両耳に埋まっている、彼女から受け取ったIDのピアスのおかげで……『男』としての今があるのだ。
仕事も恵まれ、かつての盟友である横の男とも再会出来た。だが、こいつの横に立つ女はまだ決まっていない。
此度の、星の変革期と同時に……通常の並行世界とは切り離された、並行世界のどこかからIDを手に戻ってくるかもしれないが。
あの世の裁判が滞るのは仕方がないにしても、警棒を持つ資格の巡査に恋人がいないと色々不十分なことが出てしまう。輪廻転生までの、充分な生活を送るためのフォローする絶対な相手だが。
下手すると、万年単位で共に過ごす可能性がある。それをたった独りで過ごすのには鋼の精神が必要だ。この男は今のところ、表にそれを出していない。
「……しかし、境目がこれだけ凍るのも酷いな」
警棒を軽く振って、風の刃の如く衝撃波を放ったが。凪いだくらいで終わったので、腰のベルトに戻すしかなかった。こちらが同じことを発動しても変わりないからだ。
「……天上と冥府。星と魔。それらが全て、シャッフルされるかもしれんなあ?」
発端者である、孫の記憶が少し流れてきた。
一律して、名前は『加東奈月』にしているが。それはどの時の誰の『孫の名前』にしてあるのか、もう定かではない。
ギリギリ意識を祖父か祖母に設定してはみても、ここまでの技量をものにする『孫』を腕に抱いた記憶もないのだ。
「……とくれば。転生した最初の位置か?」
「僕にも皆目検討つかないよ。今の奥さんともまだ子どもなんていないのに」
その『種』は誰なのか。奈月も誰なのか。
気にはなるが、今の職務は無視出来ないので待機しているしか出来なかった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる