39 / 73
第39話 『奈月』と『雅博』の表裏
しおりを挟む
雅博の頭に激痛が走った。
メメこと花蓮は近くにいなかったが、居なくて良かったとじわりじわり浸透してくる『情報の渦』のせいで思うくらいだ。
並行世界の己。
相対するパートナー。
シェルターの設置と『星の本懐』。
何故、隣にいきなり越してきた『加東奈月』の友人になれたか。
本来は、いたはずの過去と現在。こちらに居たはずの『彼』は全て捨ててきたのだ、自分の肉体や魂の表面を。
自分の相対であった『咲夜』の核を護るために、自分ごと差し出すのを……ずっと気にかけないように、『彼ら』によって記憶を封じられていた。
「…………バカ野郎。俺とメメの再会を、先にさせるとは言え」
自分たちは後回しに。それと、記憶を徐々に取り戻せるように散り散りにさせたのも彼ら自身。
らし過ぎる対応に、雅博は自分の身体を再確認するように見た。自宅にいたのでメメはいないが、十七歳の肉体にしては成育が整っていた。まだ彼女とまぐわう機会は多く得ていない。
というのは、『奈月』が用意した『最初の夜と朝』対策の一環だ。
どれだけ避妊対策を講じても、万が一の時がある。それが『災害』だ。
天候の予測をコントロール出来たとしても、いざ、その時に『残す遺伝子』を繋ぐ相手は誰なのかを。この並行世界では当然のように選ばせていたのは、誰だったか。
『バースト』の連中が十二年前に対策声明したことから始まったのだが、考えればそれに紐付けたのを『どこかの奈月』が裏で率いていてもおかしくない。
他の世界との誤差をそれくらいにとどめ、技術を導入させ。
「星の崩壊というか、『循環』が終わったあとに……互いにゆっくり寝てたいとか。あいつなら、当たり前だな」
どれだけ望んでも、パートナーが離れ離れになる可能性は絵空事で済んだ理由にはならない。
確実に、これから終生までの人生を共に歩む相手を、あの『奈月』が最初に選びたいのは『咲夜』でしかない。
「……けど、ここにいねぇだろ??」
奈月本人は。咲夜も表面部分を切り離されたのか、もうそこにはいない。
さっきまで、『奈月』と『咲夜』の会話をしていたのは雅博の肉体越しに聞いたホログラフィーなのだから。
ディスプレイは展開したままだが、宗ちゃんだった祖父だという擬似生命体とやらもいなかった。代わりに、厳つい軍服を着た熊を連想させるような男のそれはあったが。
『よーやく、目ぇ覚めたか。雅博』
いやに渋くて良過ぎるボイスではあるが、こちらを知っているのなら話は早い。すがる勢いで近づけば、喉の奥から笑われた。
「笑うな! 変なカッコしてるがよ!!」
『まあ、そうだな? 『奈月』のままだったら』
「……外、どうなってんだ?」
『その情報は与えずか? ここ、使わせてもらうぜ』
ホログラフィーのようなIDでもタップは可能かと後ろで観ていたが、どのディスプレイもこちらの幼少期から見せられ続けてきた『AI作成の災害画像』ばかり。
音声は届いていないが、どこもかしこも逃げ惑う人間の周りは火災と爆破の嵐だった。
「まさか……あの口火切っただけで?」
『奈月本人も、今頃後悔してるはずだ。だが、俺とかがサポートするために『ズレ』を感知した連中が……全員頑張ってんだ。宇宙スペックで安心しろ!』
「……今更だけど、あんた誰?」
『あ? そーか、顔だけじゃ鈍るか』
右目を手で覆いこっちを見た瞬間に、雅博は土下座する勢いで謝罪した。
こっちでのメメの父親の若い頃とそっくりだったので、慌ててクローゼットに向かって着れそうな服を探すのだった。
メメこと花蓮は近くにいなかったが、居なくて良かったとじわりじわり浸透してくる『情報の渦』のせいで思うくらいだ。
並行世界の己。
相対するパートナー。
シェルターの設置と『星の本懐』。
何故、隣にいきなり越してきた『加東奈月』の友人になれたか。
本来は、いたはずの過去と現在。こちらに居たはずの『彼』は全て捨ててきたのだ、自分の肉体や魂の表面を。
自分の相対であった『咲夜』の核を護るために、自分ごと差し出すのを……ずっと気にかけないように、『彼ら』によって記憶を封じられていた。
「…………バカ野郎。俺とメメの再会を、先にさせるとは言え」
自分たちは後回しに。それと、記憶を徐々に取り戻せるように散り散りにさせたのも彼ら自身。
らし過ぎる対応に、雅博は自分の身体を再確認するように見た。自宅にいたのでメメはいないが、十七歳の肉体にしては成育が整っていた。まだ彼女とまぐわう機会は多く得ていない。
というのは、『奈月』が用意した『最初の夜と朝』対策の一環だ。
どれだけ避妊対策を講じても、万が一の時がある。それが『災害』だ。
天候の予測をコントロール出来たとしても、いざ、その時に『残す遺伝子』を繋ぐ相手は誰なのかを。この並行世界では当然のように選ばせていたのは、誰だったか。
『バースト』の連中が十二年前に対策声明したことから始まったのだが、考えればそれに紐付けたのを『どこかの奈月』が裏で率いていてもおかしくない。
他の世界との誤差をそれくらいにとどめ、技術を導入させ。
「星の崩壊というか、『循環』が終わったあとに……互いにゆっくり寝てたいとか。あいつなら、当たり前だな」
どれだけ望んでも、パートナーが離れ離れになる可能性は絵空事で済んだ理由にはならない。
確実に、これから終生までの人生を共に歩む相手を、あの『奈月』が最初に選びたいのは『咲夜』でしかない。
「……けど、ここにいねぇだろ??」
奈月本人は。咲夜も表面部分を切り離されたのか、もうそこにはいない。
さっきまで、『奈月』と『咲夜』の会話をしていたのは雅博の肉体越しに聞いたホログラフィーなのだから。
ディスプレイは展開したままだが、宗ちゃんだった祖父だという擬似生命体とやらもいなかった。代わりに、厳つい軍服を着た熊を連想させるような男のそれはあったが。
『よーやく、目ぇ覚めたか。雅博』
いやに渋くて良過ぎるボイスではあるが、こちらを知っているのなら話は早い。すがる勢いで近づけば、喉の奥から笑われた。
「笑うな! 変なカッコしてるがよ!!」
『まあ、そうだな? 『奈月』のままだったら』
「……外、どうなってんだ?」
『その情報は与えずか? ここ、使わせてもらうぜ』
ホログラフィーのようなIDでもタップは可能かと後ろで観ていたが、どのディスプレイもこちらの幼少期から見せられ続けてきた『AI作成の災害画像』ばかり。
音声は届いていないが、どこもかしこも逃げ惑う人間の周りは火災と爆破の嵐だった。
「まさか……あの口火切っただけで?」
『奈月本人も、今頃後悔してるはずだ。だが、俺とかがサポートするために『ズレ』を感知した連中が……全員頑張ってんだ。宇宙スペックで安心しろ!』
「……今更だけど、あんた誰?」
『あ? そーか、顔だけじゃ鈍るか』
右目を手で覆いこっちを見た瞬間に、雅博は土下座する勢いで謝罪した。
こっちでのメメの父親の若い頃とそっくりだったので、慌ててクローゼットに向かって着れそうな服を探すのだった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる