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第40話 起きたかもしれない
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ずっと、暗い場所で寝続けていたかもしれない。
誰の身体も借り受けていた身で、『加東奈月』というのは存在していたのか。鈍痛とともに、意識を失った奈月は寒くて固い場所で動けずにいた。
寝起きの状態では情報処理がうまくいかないのは当然にしても、変に寒いのが焦りを生んでしまう。
数分前に、咲夜と会話した時の『違和感』がここで出てくるだなんて……予想外過ぎた。正直、元の肉体である現実側へ帰還するくらいの『覚悟』はしていたのだが。
奈月は身体に着せられていた衣服と、周囲の環境にも情報処理が追いつかないでいる。
一度だけ、シミュレーション越しに見せられた光景がそこにあったのだ。
豪雪の跡地。
人っこ一人居そうにない崩落地。
灯り代わりは、手にしたままの端末のみ。
「マジで……どこだよっ」
現実側の施設にしては、地面が近い。崩落したということは、上層階からここまで崩れるのを前提に……『シェルターポッド』を強化していたということ。
そして、どこかの『加東奈月』がシェルターの発動へのスタートを切った途端に……全ての機動スイッチが『ゼロ』になることを、今ようやく思い出せたのだ。
ひとつズレていた『並行世界』の奈月がいない代わりに。
ひとつの『現実世界』で、ずっと健常の肉体へと手術と実験体に提出していた『加東奈月』は、この世界で護られていたのだ。
『たとえ、世界でただひとりの存在になっていたと錯覚しないように』。
その、幻想とも言える『夢見』をただただこの身体に『コマンド』としての情報を注入させていただけで。
夢を通じて見てきた『彼ら』の居場所はどこにあるのか、この現在ではわからない。
精神病とかでは、なんらかの症状として隠し続けてきただろうが。
「十二年分? 俺、今トリップせずにいくつ??」
完全防寒でもまだ寒いと感じる指を、無理矢理動かして端末を叩けば。
ディスプレイがクラウンの波のように展開され、中央には祖父の一部と名乗った『宗ちゃん』がにこやかな笑みを浮かべていた。
『よーやく、『起きた』か?』
「教えてくれ、宗ちゃん。誤差何年で済んだ?」
『ははは! 実はまだ二ヶ月も経っていない』
「……二ヶ月? この崩壊が起きて?」
『そう。お前さんの手術と指示の服装に固定してポッドごと固めた辺りから。まだ、宇宙空間へのシェルター作業も疎だ。逆に、邪魔者が多くてなあ?』
いくつかディスプレイを奈月の前に下ろせば、そこは映画や時事ニュースで本当に見たことがある『紛争』の情景そのままだった。
「……これは、無視していいの?」
『彼奴らの勝手さ。星の終わりが幾度か来ているのに、自分らの領土を守ることしか考えとらん』
「……んじゃ、俺はなんかしたの?」
『この世界では、重病患者だっただけにしてある。各地地震以外の災害に巻き込まれ……今は、独りにさせてあるのも計画のうちになっているだけさ。悲観に暮れる意味もない』
「……というのを、じいちゃんたちが考えてきたと? 『宗則じいちゃん』じゃなくて、もっと前の」
『そうさ。僕は彼らの偶像でしかない』
と言った後に、彼のホログラフィーの前には『120年計画おめでとう』などと、洒落たテロップ文字が流れたのだった。
つまり、『バースト』は『加東奈月』を軸に周囲がこの災害復旧費を稼ぐための犯行声明。
永遠に繰り返す、自然の摂理を整える慈善計画だったことを、祖父から聞かされ続けたのを思い出したのだった。
誰の身体も借り受けていた身で、『加東奈月』というのは存在していたのか。鈍痛とともに、意識を失った奈月は寒くて固い場所で動けずにいた。
寝起きの状態では情報処理がうまくいかないのは当然にしても、変に寒いのが焦りを生んでしまう。
数分前に、咲夜と会話した時の『違和感』がここで出てくるだなんて……予想外過ぎた。正直、元の肉体である現実側へ帰還するくらいの『覚悟』はしていたのだが。
奈月は身体に着せられていた衣服と、周囲の環境にも情報処理が追いつかないでいる。
一度だけ、シミュレーション越しに見せられた光景がそこにあったのだ。
豪雪の跡地。
人っこ一人居そうにない崩落地。
灯り代わりは、手にしたままの端末のみ。
「マジで……どこだよっ」
現実側の施設にしては、地面が近い。崩落したということは、上層階からここまで崩れるのを前提に……『シェルターポッド』を強化していたということ。
そして、どこかの『加東奈月』がシェルターの発動へのスタートを切った途端に……全ての機動スイッチが『ゼロ』になることを、今ようやく思い出せたのだ。
ひとつズレていた『並行世界』の奈月がいない代わりに。
ひとつの『現実世界』で、ずっと健常の肉体へと手術と実験体に提出していた『加東奈月』は、この世界で護られていたのだ。
『たとえ、世界でただひとりの存在になっていたと錯覚しないように』。
その、幻想とも言える『夢見』をただただこの身体に『コマンド』としての情報を注入させていただけで。
夢を通じて見てきた『彼ら』の居場所はどこにあるのか、この現在ではわからない。
精神病とかでは、なんらかの症状として隠し続けてきただろうが。
「十二年分? 俺、今トリップせずにいくつ??」
完全防寒でもまだ寒いと感じる指を、無理矢理動かして端末を叩けば。
ディスプレイがクラウンの波のように展開され、中央には祖父の一部と名乗った『宗ちゃん』がにこやかな笑みを浮かべていた。
『よーやく、『起きた』か?』
「教えてくれ、宗ちゃん。誤差何年で済んだ?」
『ははは! 実はまだ二ヶ月も経っていない』
「……二ヶ月? この崩壊が起きて?」
『そう。お前さんの手術と指示の服装に固定してポッドごと固めた辺りから。まだ、宇宙空間へのシェルター作業も疎だ。逆に、邪魔者が多くてなあ?』
いくつかディスプレイを奈月の前に下ろせば、そこは映画や時事ニュースで本当に見たことがある『紛争』の情景そのままだった。
「……これは、無視していいの?」
『彼奴らの勝手さ。星の終わりが幾度か来ているのに、自分らの領土を守ることしか考えとらん』
「……んじゃ、俺はなんかしたの?」
『この世界では、重病患者だっただけにしてある。各地地震以外の災害に巻き込まれ……今は、独りにさせてあるのも計画のうちになっているだけさ。悲観に暮れる意味もない』
「……というのを、じいちゃんたちが考えてきたと? 『宗則じいちゃん』じゃなくて、もっと前の」
『そうさ。僕は彼らの偶像でしかない』
と言った後に、彼のホログラフィーの前には『120年計画おめでとう』などと、洒落たテロップ文字が流れたのだった。
つまり、『バースト』は『加東奈月』を軸に周囲がこの災害復旧費を稼ぐための犯行声明。
永遠に繰り返す、自然の摂理を整える慈善計画だったことを、祖父から聞かされ続けたのを思い出したのだった。
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