【完結】CCクロニクル・バースト

櫛田こころ

文字の大きさ
43 / 73

第43話 情報整理(メメの場合)

しおりを挟む
 デバイスで冷凍された肉体を雅博のところへ届けられる、二ヶ月前。

 メメこと目黒花蓮は、とある作家業を兼任していたためギリギリまで冷凍睡眠するのを我慢をていた。外はもう氷河期さながらの冷凍庫同然。ひとっこ一人歩いていない代わりに、いつでもどこでも『宅配便』が届くようにと専用のアパートで仕事をしていたのだ。


「あーもぉ! まちゃが先に眠ってるのは仕方ないにしても、『なっち』と紗夜ちゃんのために用意してきたゲームのリリースが遅れちゃう!!」


 普段は会社員のOL。兼業ではそこそこ収益を得ていたイラストレーター『メメ』として活動していたのだが。天災続きで、日本どころか世界が氷河期になるのがマブダチだった『加東奈月』の長期療養が本格的に始まってから今日まで……どこまで進んだか、関係者であれメメにも報告が途絶えてきた。

 氷河期と称した天災続きで、仕事も避難も碌に出来ないでいたが。専用のポッドに等しいこのアパートから、恋人のところまで自力で向かうことは不可能だ。

 ほとんど冷凍睡眠に等しい環境下ではあれ、メメは『起きて』いたのだ。マブダチとその恋人が意識下であれ、再会出来る場を設けるのに……VRのゲームに必要なデザインをギリギリまで制作していた。避難食料もそろそろ底を尽きかけていたが、まだ冷凍するにはデザインの仕上がりが危うい。

 リニューアルくらいのアップデートはあとで良いにしても、できるだけ綺麗なデザインの中で彼らには再会して欲しかった。離れた月日の分、思う存分楽しんでいただけるように……の気持ちも込めて。

 ズレた並行世界とやらからの来訪者である、犯行声明に似せた『世界恐怖』とやらで時間稼ぎはしてきたものの。奈月の活動名である『クロニクル=バースト』をこれ以上悪用されないためにも……メメは体力が限界になるまでイラストを制作していたが。

 とうとう、冷凍化の保温の方も限界に来たようで、呼吸が荒くなってきた時点では仕事も何も出来なかった。出来るだけ冬服を着込んでも、エアコンも意味のない氷点下の室内では壊れているも同然だった。


「……なっち、紗夜ちゃんと……会えているかしら」


 無事に恋人が原案に深く関わった『VRMMO』のゲームはうまく軌道に乗ったようで。先に宇宙空間へとシェルター避難が出来た人類は地球の環境が整うまで遊んでいるとの報告はあった。

 だが、それを最後に宅配便すらもう到着不可能との連絡も。仕方がないが、もともと死ぬつもりもないのでメメは部屋の隅に設置されていた『冷凍ポッド』の中にずるずると足を引きずるようにして入り込んだ。

 蓋は自動的に閉まり、睡眠用のミストを軽く嗅いだだけで朦朧としていた意識は途絶えたのだが。


「メメ!! 起きてくれ!!」


 感覚的に五分も経たないうちに叩き起こされたので、何事かと思えば。恋人で開発者責任でもあった仁王雅博が、風呂場でメメの服の上からゆっくりシャワーをかけてくれていたのだ。


「……今いつ??」


 雅博の老化も最後に見た半年前から比べて、ほとんど変わっていなかった。誤差が大きいにしては少し不自然な気がしたからだ。


「……2030年の7月」
「あたしが寝て、二ヶ月じゃん!?」


 そして、奈月もやっと起きたとの報せを聞けた時は嬉し過ぎて大粒の涙を流し続けたほどだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...