57 / 73
第57話 犯人ではないことを
しおりを挟む
加東奈月こと『クロニクル=バースト』としての認知度は、世界各国に知れ渡っていたのは現状そのまま。
奈月は大学時代から身体面以外の障がいが発覚し、支離滅裂な会話になるたびに入退院を繰り返していた。そして、大学卒業後の就職はうまくいかずに、障がい者としての生活を自宅で送るのみ。
その生活に嫌気がさしてきたのかを、並行世界側が読み取ったのか。奈月にアクションを起こしてきたのは、向こう側の『加東奈月』だった。
『ひとつの世界だけでは、地球の救済措置を落ち着かせることは出来ない。それに、協力してくれるかい?』
こちらの奈月より、数年歳を食った大人の奈月。健常者として生活できているのか、身なりもよくて笑顔も良好。それが羨ましくて、夢の中だとわかっているのに毒を吐いてしまった。相対したときが、何回か目の入院で拘束処置を受けていた時だったからだ。点滴の薬で自律神経を落ち着かせるための錯覚かもしれないと思ったくらいに。
『違う違う。俺は本当に別の次元にいる君だよ。夢嘘とかじゃなしに、ちゃんとパートナーもいるし。生活も健常者とそんな変わらない』
『……ifの自分?』
『そう、そんな『別の自分』。役目があるから、異常なのは当然さ。別の次元が先に動いているんだからね』
『……俺。治る?』
『そちらの技術革新をいっぺんに起こすことは難しい。けど、数年で飛躍することは多いから……命を懸けても、やれるのなら協力してほしい。一番厄介なのは、地球側に接触部が近いそちらだから』
『……治る以外も、出来る?』
『出来る。さっくんのためにも』
『! する!』
そして、同個体でも別次元にいる『加東奈月』と協力して……クリエイターの『クロニクル=バースト』というコテハンでもともと好んでいた『作曲』『編集』の仕事をメインにSNSで少しずつ活動していった。
向こうが言うには、そのクリエイターが救済措置に導く『きっかけ』であって、宇宙からのメッセージとかではない。並行世界側との接触がある人間などはそれぞれ『同個体』もしくは、このクリエイターの『作品』をメッセージとして気づくのだ。
奈月が最後の最後に、短い演出作品である『スカベンジャー・ハント』という台本を書き上げたあとは……もう、障がい者としての意識しか保てずに、『健康体』の手術を受けるサインを書いた。この手配は、あちらの奈月が両親を経由して準備を残してくれていたのだ。
「ただ、並行世界側とのダイブ以外に……『スカベンジャー・ハント』もやり過ぎて、俺は犯人扱いか?」
「SNS投稿で神経こんがらがっていたからだよ? あれ、私たちがフォローするの大変だったんだから」
「……それは、誠に申し訳ございませんでした」
VRMMOなどに『ダイブ』することで、どれが現実でどれが脳をリンクさせただけの疑似世界なのか。わからずわからず、で実際の自分の肉体を動かしたところ……電子の向こうにいる『無関係者』を驚かせ、こいつは『黒』じゃないかと思わせてしまった。
それが、『クロニクル=バースト』としての奈月が『犯罪者扱い』されてしまった経緯なのである。実際は、心配をかけた知人らのDMが殺到していただけで、なんてことのない現実ではあった。
だが、そのフォローの甲斐があって、現実では『クロニクル=バースト』の知名度が初リリースの『スカベンジャー・ハント』と同時期にうなぎ登りなのも今知れた。使える端末のどこもかしこにも【『クロニクル=バースト』の中身は若手なのか? バズりが凄い】などのトレンドが載っているくらいだったから。
紗夜にもそれを見てもらえたので、こちらの情報共有もすると。シェルター開発はあちらの奈月からの情報提供もあったおかげで、五年程度でこのくらいの天災と被害で済んだそうだと。
「もうちょいしたら、まちゃくんにも報告しなきゃだけど」
「この家だと寝るのも大変だな……。コールドスリープもやだし」
「……休み休み、片付ける? 途中でお風呂入って」
「そうするか」
くらいしか、普通にごろ寝も難しいので協力し合うしかなかった。『加東奈月』と『月峰紗夜』のパートナーとしての生活はこれからだ。ほかの仲間との合流前に、まだまだすべきことは多いのだから。
奈月は大学時代から身体面以外の障がいが発覚し、支離滅裂な会話になるたびに入退院を繰り返していた。そして、大学卒業後の就職はうまくいかずに、障がい者としての生活を自宅で送るのみ。
その生活に嫌気がさしてきたのかを、並行世界側が読み取ったのか。奈月にアクションを起こしてきたのは、向こう側の『加東奈月』だった。
『ひとつの世界だけでは、地球の救済措置を落ち着かせることは出来ない。それに、協力してくれるかい?』
こちらの奈月より、数年歳を食った大人の奈月。健常者として生活できているのか、身なりもよくて笑顔も良好。それが羨ましくて、夢の中だとわかっているのに毒を吐いてしまった。相対したときが、何回か目の入院で拘束処置を受けていた時だったからだ。点滴の薬で自律神経を落ち着かせるための錯覚かもしれないと思ったくらいに。
『違う違う。俺は本当に別の次元にいる君だよ。夢嘘とかじゃなしに、ちゃんとパートナーもいるし。生活も健常者とそんな変わらない』
『……ifの自分?』
『そう、そんな『別の自分』。役目があるから、異常なのは当然さ。別の次元が先に動いているんだからね』
『……俺。治る?』
『そちらの技術革新をいっぺんに起こすことは難しい。けど、数年で飛躍することは多いから……命を懸けても、やれるのなら協力してほしい。一番厄介なのは、地球側に接触部が近いそちらだから』
『……治る以外も、出来る?』
『出来る。さっくんのためにも』
『! する!』
そして、同個体でも別次元にいる『加東奈月』と協力して……クリエイターの『クロニクル=バースト』というコテハンでもともと好んでいた『作曲』『編集』の仕事をメインにSNSで少しずつ活動していった。
向こうが言うには、そのクリエイターが救済措置に導く『きっかけ』であって、宇宙からのメッセージとかではない。並行世界側との接触がある人間などはそれぞれ『同個体』もしくは、このクリエイターの『作品』をメッセージとして気づくのだ。
奈月が最後の最後に、短い演出作品である『スカベンジャー・ハント』という台本を書き上げたあとは……もう、障がい者としての意識しか保てずに、『健康体』の手術を受けるサインを書いた。この手配は、あちらの奈月が両親を経由して準備を残してくれていたのだ。
「ただ、並行世界側とのダイブ以外に……『スカベンジャー・ハント』もやり過ぎて、俺は犯人扱いか?」
「SNS投稿で神経こんがらがっていたからだよ? あれ、私たちがフォローするの大変だったんだから」
「……それは、誠に申し訳ございませんでした」
VRMMOなどに『ダイブ』することで、どれが現実でどれが脳をリンクさせただけの疑似世界なのか。わからずわからず、で実際の自分の肉体を動かしたところ……電子の向こうにいる『無関係者』を驚かせ、こいつは『黒』じゃないかと思わせてしまった。
それが、『クロニクル=バースト』としての奈月が『犯罪者扱い』されてしまった経緯なのである。実際は、心配をかけた知人らのDMが殺到していただけで、なんてことのない現実ではあった。
だが、そのフォローの甲斐があって、現実では『クロニクル=バースト』の知名度が初リリースの『スカベンジャー・ハント』と同時期にうなぎ登りなのも今知れた。使える端末のどこもかしこにも【『クロニクル=バースト』の中身は若手なのか? バズりが凄い】などのトレンドが載っているくらいだったから。
紗夜にもそれを見てもらえたので、こちらの情報共有もすると。シェルター開発はあちらの奈月からの情報提供もあったおかげで、五年程度でこのくらいの天災と被害で済んだそうだと。
「もうちょいしたら、まちゃくんにも報告しなきゃだけど」
「この家だと寝るのも大変だな……。コールドスリープもやだし」
「……休み休み、片付ける? 途中でお風呂入って」
「そうするか」
くらいしか、普通にごろ寝も難しいので協力し合うしかなかった。『加東奈月』と『月峰紗夜』のパートナーとしての生活はこれからだ。ほかの仲間との合流前に、まだまだすべきことは多いのだから。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる