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第58話 さらに大掃除
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ほかの友人知人に連絡を入れてみたが、すぐに返事が出来る状態でないのは同じらしい。なので、せめて寝床らしい場所を作るだけの掃除はしようと紗夜と手分けして『ゴミ袋詰め』をしていく。
無事な書類も、ひとまず袋に入れてほかの日に確認する以外。主に燃えるゴミとなるものを地域の可燃用のに入れていくのだった。最大容量のやつでも、湿った書類やダメになったグッズを入れるだけであっという間に出来上がるくらい。
どれくらい引きこもった生活をしていたかと聞けば、誤差で言うと半年ほどだったそうだ。
「治療もうまくいっているようでいかないし。ご飯も食べたくなくなったのは、なっちゃんがコールドスリープ入ったあたりかな? もうしばらく会えないだなって、ショック受けた」
「……なんか、ごめん」
「いいよ? 私も今思い出したけど、いたでしょ? 『スカベンジャー・ハント』の中で」
「いた? ……ああ。そんな長くいっしょじゃなかったけど」
「遊んでたもんね~? いーっぱい。あのVRMMOがリリースされたら、もっと面白くなりそう」
「そこは、開発部門の責任者の一人としては……頑張ります」
「もう。私以上の疾患者だってわかったんだから……いっしょに、がんばろ?」
「ほんと。疾患が『個性』だって、全然認められてなかったんだよな。こっちでは」
「難しいし。気圧だけで口調の荒れ具合酷いもん」
「そっか、気圧。……だいぶ落ち着いた?」
「そだね。少し、ご飯食べたからかも」
話しながらの片付けで、紗夜の会話能力も少しだけ平常に戻ったらしい。やはり、一人暮らしでの引きこもりと長期に渡るコールドスリープは危険だと誓約書の書き直しをしようと奈月も決めた。自分以外にもこれだけの被害が出ているのだから、精神疾患者と呼ばれる『個性の強い人間』は特に危ないかもしれない。
奈月も院外外出の中で保護されたのだから、紗夜くらいの等級ではここに監禁しておかないと大変だったろうに。『恋人が死んだ』くらいのショックを与えてしまったのだから、きちんと謝っても本人が目の前にいるから安心出来たのだろう。
奈月も、別次元の計画を全部伝えれない事情があったのでこのような結果になったのだ。次世代にはきちんと記録情報として残すようにしなくては、とさらに反省した。
「まだ何か食べる? すぐ下に屋台あったけど、買ってこようか?」
「外? 屋台あるの?」
「さっき飲んだコーヒー。すぐそこで買ってきたんだ」
「うちの中こんなだもんね? お願いしていい?」
「なんでもいい?」
「うん、任せる」
くらいの会話にも戻れたのであれば、奈月が本当に『死んで』いたらえぐい結果を生んでいたかもしれない。改めて、交際を申し込んで現状をよく把握してからデートにでもなんでも連れてってあげようと決めた。
服装はそのままだったから、外に出てから端末時間を確認した……が。
「まだ、夜の八時か。……コンビニも営業してないよな?」
階段から降りてエントランスの外に出ても、ちらほらと屋台がある以外は静かな町の風景しかない。やはり、ガソリンも一時的に使用禁止になったのか車も工事車以外通らないのか。だんだんと、記憶が戻ってきたがまずは自分たちの食事だとさっきの屋台に足を向けた。
「あら、お兄さん。パートナーさんとは会えたの?」
わかっていたかのように、屋台の女性はにこにこと相変わらず笑っていた。ずっと外にいると寒いはずなのに、小型のファンヒーターとかはきちんと設置していた。
「……おかげさまで。あの、飲み物以外なにか売っています?」
「そうねぇ。総菜とかはあいにくないけど、具材入りのスープとか? うちは基本飲み物とスープなの。それに、この時間だとそういうのしかほかのとこも残らないわね?」
「じゃ、とりあえずそれで」
シチューのようなスープをいくつか買い、袋詰めもお願いしている間に女性は奈月になぜか話しかけてきた。
「さっき、ニュースがあったのよ」
「ニュース?」
「お兄さん、まだテレビ接続してない? SNSでもトレンド入りよ。『クロニクル=バースト』は休止から再開に切り替わったって。うちの子もお試しのゲームがちゃんと始まるからやれよって進めるくらいなのよ? お母さん、VRはちょっと苦手で」
「あ、はあ……」
「あら、お兄さん若いのに今日見ない感じだったかしら?」
「あ、いえ。好きですけど、さっき起きたばっかりなので」
「そうね。焦る必要はないわ。世界中がこんななのに、いろんな暇つぶしを考えてくれた人たちのこと……気にならないわけないわ」
「……ですね」
自分勝手で、動いていたつもりだったが。奈月の知らないところでは、今じゃ扱いががらりと変わったようだ。世界を救ったとかそんな大それたことをしたつもりはないが、いわば『クリエイター集団』として動いていただけに思われていた方がうれしい。
何故なら、ここからが生きる意味でのスタートラインを切る必要がある。氷河期なみの災害を超えて、その先の未来に向かうために。
奈月は注文したスープを受け取り、紗夜の待つ家に帰ったら同じ話をしてあげた。
「そっか! じゃ、リリースまでの期間はゆっくり出来るね」
「けど、主治医とかその辺どうなってんの?」
「あ、スマホ生きてるかな? メモそこにしかない」
「……とりあえず、あったかいうちに食べよう。あとで決めようか?」
「はーい」
今はただ、のんびりと生活を再開したかった。大好きな人と。
無事な書類も、ひとまず袋に入れてほかの日に確認する以外。主に燃えるゴミとなるものを地域の可燃用のに入れていくのだった。最大容量のやつでも、湿った書類やダメになったグッズを入れるだけであっという間に出来上がるくらい。
どれくらい引きこもった生活をしていたかと聞けば、誤差で言うと半年ほどだったそうだ。
「治療もうまくいっているようでいかないし。ご飯も食べたくなくなったのは、なっちゃんがコールドスリープ入ったあたりかな? もうしばらく会えないだなって、ショック受けた」
「……なんか、ごめん」
「いいよ? 私も今思い出したけど、いたでしょ? 『スカベンジャー・ハント』の中で」
「いた? ……ああ。そんな長くいっしょじゃなかったけど」
「遊んでたもんね~? いーっぱい。あのVRMMOがリリースされたら、もっと面白くなりそう」
「そこは、開発部門の責任者の一人としては……頑張ります」
「もう。私以上の疾患者だってわかったんだから……いっしょに、がんばろ?」
「ほんと。疾患が『個性』だって、全然認められてなかったんだよな。こっちでは」
「難しいし。気圧だけで口調の荒れ具合酷いもん」
「そっか、気圧。……だいぶ落ち着いた?」
「そだね。少し、ご飯食べたからかも」
話しながらの片付けで、紗夜の会話能力も少しだけ平常に戻ったらしい。やはり、一人暮らしでの引きこもりと長期に渡るコールドスリープは危険だと誓約書の書き直しをしようと奈月も決めた。自分以外にもこれだけの被害が出ているのだから、精神疾患者と呼ばれる『個性の強い人間』は特に危ないかもしれない。
奈月も院外外出の中で保護されたのだから、紗夜くらいの等級ではここに監禁しておかないと大変だったろうに。『恋人が死んだ』くらいのショックを与えてしまったのだから、きちんと謝っても本人が目の前にいるから安心出来たのだろう。
奈月も、別次元の計画を全部伝えれない事情があったのでこのような結果になったのだ。次世代にはきちんと記録情報として残すようにしなくては、とさらに反省した。
「まだ何か食べる? すぐ下に屋台あったけど、買ってこようか?」
「外? 屋台あるの?」
「さっき飲んだコーヒー。すぐそこで買ってきたんだ」
「うちの中こんなだもんね? お願いしていい?」
「なんでもいい?」
「うん、任せる」
くらいの会話にも戻れたのであれば、奈月が本当に『死んで』いたらえぐい結果を生んでいたかもしれない。改めて、交際を申し込んで現状をよく把握してからデートにでもなんでも連れてってあげようと決めた。
服装はそのままだったから、外に出てから端末時間を確認した……が。
「まだ、夜の八時か。……コンビニも営業してないよな?」
階段から降りてエントランスの外に出ても、ちらほらと屋台がある以外は静かな町の風景しかない。やはり、ガソリンも一時的に使用禁止になったのか車も工事車以外通らないのか。だんだんと、記憶が戻ってきたがまずは自分たちの食事だとさっきの屋台に足を向けた。
「あら、お兄さん。パートナーさんとは会えたの?」
わかっていたかのように、屋台の女性はにこにこと相変わらず笑っていた。ずっと外にいると寒いはずなのに、小型のファンヒーターとかはきちんと設置していた。
「……おかげさまで。あの、飲み物以外なにか売っています?」
「そうねぇ。総菜とかはあいにくないけど、具材入りのスープとか? うちは基本飲み物とスープなの。それに、この時間だとそういうのしかほかのとこも残らないわね?」
「じゃ、とりあえずそれで」
シチューのようなスープをいくつか買い、袋詰めもお願いしている間に女性は奈月になぜか話しかけてきた。
「さっき、ニュースがあったのよ」
「ニュース?」
「お兄さん、まだテレビ接続してない? SNSでもトレンド入りよ。『クロニクル=バースト』は休止から再開に切り替わったって。うちの子もお試しのゲームがちゃんと始まるからやれよって進めるくらいなのよ? お母さん、VRはちょっと苦手で」
「あ、はあ……」
「あら、お兄さん若いのに今日見ない感じだったかしら?」
「あ、いえ。好きですけど、さっき起きたばっかりなので」
「そうね。焦る必要はないわ。世界中がこんななのに、いろんな暇つぶしを考えてくれた人たちのこと……気にならないわけないわ」
「……ですね」
自分勝手で、動いていたつもりだったが。奈月の知らないところでは、今じゃ扱いががらりと変わったようだ。世界を救ったとかそんな大それたことをしたつもりはないが、いわば『クリエイター集団』として動いていただけに思われていた方がうれしい。
何故なら、ここからが生きる意味でのスタートラインを切る必要がある。氷河期なみの災害を超えて、その先の未来に向かうために。
奈月は注文したスープを受け取り、紗夜の待つ家に帰ったら同じ話をしてあげた。
「そっか! じゃ、リリースまでの期間はゆっくり出来るね」
「けど、主治医とかその辺どうなってんの?」
「あ、スマホ生きてるかな? メモそこにしかない」
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「はーい」
今はただ、のんびりと生活を再開したかった。大好きな人と。
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