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第69話 そんな始まりだったか?
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『スカベンジャー・ハント』のプロローグになるものを改めて編集し直していた奈月だったが、我が身に受けたことを交えてのストーリー編集をするのが少し気恥しく感じた。
SFなどのエンタメ総合に部類するそれらが、現実では『本当』などと言えるのかがよくわからない。
いくらでも『夢』を見続け、並行世界と行き来しているSFとのやり取りなど……今はもう、出来るかわからない。やり方を本質的に忘れてしまっているからだ。端末となったタブレットを使っても、次元の違う『自分』に会うことなどもう出来ないでいた。
「……必要がないのか?」
「何が?」
今日も互いの定期受診が終わったあとなので、紗夜は昼ご飯を作ってくれていた。まだ会話のかみ合いがうまくいかないところもあるが、服薬が順調に効いているのかで落ち着きは取り戻せている。
「いや……。別のとこにいる『自分』に会える会えないのままで、こっちの好き勝手にしていいのかなって」
「向こうの『なっち』たちのこと?」
「そう。終わった世界もあったりするけど。結局、世界なんてものは並行していくつものパラレルワールドがあるってわかったんだ。その事実をどこまで、こっちでも知らせて」
「知らせなくていいと思う。だって、自分で気づかなきゃ」
悩みを口に出していたら、紗夜に遮られた。人差し指でちょんと唇を遮られ、そこまでという風に。表情は笑顔だったが、少し苦笑いも混じっているようにも見えた。
「……自分で、か」
「私もあちこちの世界を、『夢』でたくさん見てきた。終わりも始まりもたくさんあったけど……結局、納得するのは自分たちでいいと思うよ? 奈月くんは、こっちでは皆の命を出来るだけ残すように尽くしてくれた。その事実はSNS以外でもちゃんと広まっているからさ?」
「……そう、だね」
コールドスリープに入らずとも生きながらえてくれた、スタッフの中でも特に。奈月以上に障がいが大変だったらしい小鳥遊藍葉は、上司でもあり恋人にもなってくれた成樹が生き長らえるために自分の手術費用をこちらに差し出してくれたのだ。
ポイ活と見せかけて、別次元の自分たちをファームという『シェルター』で生き長らえさせた資金があまりにも多く。自身の人工骨入れ替えの手術はあとでいいから、成樹を眠らせてほしいという要望。
代償は自分が眠らない代わりに、VRMMOのβ版の試運転を引き受けることだった。回答をしたのは奈月だったか雅博だったかは今では思い出せないが、そんなにも若い人材にまで協力を募るのは少し心苦しかった。
世界の滅亡の瞬間まで、下手をすると死ぬかもしれない責務を負わせることが。
実際のところ、奈月が心配し過ぎることはなかったが……世界災害は日本を中心に起きてしまった。
「藍葉ちゃんとかが、ほかのモニターくんたちを『寝る』ように指示してくれたおかげだよ。β版の完成も早かったし、メメちゃんもそのおかげでキャラデザに集中できた。だから、私たちも『寝た』し、あの中で遊べてた」
「……最上級のお礼しなくちゃだね」
「手術費用の工面くらいは……とっくに終わっているし?」
「新薬の開発費用とかは?」
「もうとっくの昔に、契約してる」
「……被災地のボランティアとか?」
「AIで出来る……かなあ? あのポイ活とか使っても」
「そもそも。あのポイ活って今普通に使える?」
「「……どーだろう」」
開発の要であるふたりが悩むくらいなので、そこは間違った行動を起こしてはいけない。なので、ポイ活開発担当の熊野成樹が本当に起きているか、メッセージを飛ばして藍葉に連絡をしてみることにした。
SFなどのエンタメ総合に部類するそれらが、現実では『本当』などと言えるのかがよくわからない。
いくらでも『夢』を見続け、並行世界と行き来しているSFとのやり取りなど……今はもう、出来るかわからない。やり方を本質的に忘れてしまっているからだ。端末となったタブレットを使っても、次元の違う『自分』に会うことなどもう出来ないでいた。
「……必要がないのか?」
「何が?」
今日も互いの定期受診が終わったあとなので、紗夜は昼ご飯を作ってくれていた。まだ会話のかみ合いがうまくいかないところもあるが、服薬が順調に効いているのかで落ち着きは取り戻せている。
「いや……。別のとこにいる『自分』に会える会えないのままで、こっちの好き勝手にしていいのかなって」
「向こうの『なっち』たちのこと?」
「そう。終わった世界もあったりするけど。結局、世界なんてものは並行していくつものパラレルワールドがあるってわかったんだ。その事実をどこまで、こっちでも知らせて」
「知らせなくていいと思う。だって、自分で気づかなきゃ」
悩みを口に出していたら、紗夜に遮られた。人差し指でちょんと唇を遮られ、そこまでという風に。表情は笑顔だったが、少し苦笑いも混じっているようにも見えた。
「……自分で、か」
「私もあちこちの世界を、『夢』でたくさん見てきた。終わりも始まりもたくさんあったけど……結局、納得するのは自分たちでいいと思うよ? 奈月くんは、こっちでは皆の命を出来るだけ残すように尽くしてくれた。その事実はSNS以外でもちゃんと広まっているからさ?」
「……そう、だね」
コールドスリープに入らずとも生きながらえてくれた、スタッフの中でも特に。奈月以上に障がいが大変だったらしい小鳥遊藍葉は、上司でもあり恋人にもなってくれた成樹が生き長らえるために自分の手術費用をこちらに差し出してくれたのだ。
ポイ活と見せかけて、別次元の自分たちをファームという『シェルター』で生き長らえさせた資金があまりにも多く。自身の人工骨入れ替えの手術はあとでいいから、成樹を眠らせてほしいという要望。
代償は自分が眠らない代わりに、VRMMOのβ版の試運転を引き受けることだった。回答をしたのは奈月だったか雅博だったかは今では思い出せないが、そんなにも若い人材にまで協力を募るのは少し心苦しかった。
世界の滅亡の瞬間まで、下手をすると死ぬかもしれない責務を負わせることが。
実際のところ、奈月が心配し過ぎることはなかったが……世界災害は日本を中心に起きてしまった。
「藍葉ちゃんとかが、ほかのモニターくんたちを『寝る』ように指示してくれたおかげだよ。β版の完成も早かったし、メメちゃんもそのおかげでキャラデザに集中できた。だから、私たちも『寝た』し、あの中で遊べてた」
「……最上級のお礼しなくちゃだね」
「手術費用の工面くらいは……とっくに終わっているし?」
「新薬の開発費用とかは?」
「もうとっくの昔に、契約してる」
「……被災地のボランティアとか?」
「AIで出来る……かなあ? あのポイ活とか使っても」
「そもそも。あのポイ活って今普通に使える?」
「「……どーだろう」」
開発の要であるふたりが悩むくらいなので、そこは間違った行動を起こしてはいけない。なので、ポイ活開発担当の熊野成樹が本当に起きているか、メッセージを飛ばして藍葉に連絡をしてみることにした。
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