10 / 94
5-2.ふすまクッキー(セリカ視点)
しおりを挟む★・☆・★(セリカ視点)
これから作るふすまクッキーは……正直言うと、あまり美味しさを追求したお菓子ではない。
どちらかと言えば、パサパサして食べにくいクッキーだと、私の身体に組み込まれている異世界料理のレシピには記載されていた。
けれど、マスターの身体を痩せさせるには色々挑戦しなくてはいけない。
ウォーキング以外にも、排泄行為を少しでも軽くしていくために!
このふすまクッキーには役に立ってもらわないと!
「……これが材料なのか?」
「うん、これだけ」
薄力粉
ふすま粉
スキムミルク
砂糖
赤唐辛子の粉
ベーキングパウダー
塩
卵
水
シャインに昨日のうちに生成をお願いしてた材料を合わせて取り揃えて。
作り方は至ってシンプルだから、きっとマスターでも出来るはず。
このクッキーは保存食にもなるのでたくさん作った方がいい。
「まずは、卵と水以外の材料を量ってボウルに入れる」
そして、よく混ぜ合わせてから卵と水も入れてよく混ぜ合わせて団子状にする。
マスターのまだまだブクブクブヨブヨの手で大丈夫か少し心配にはなったが、トイレ掃除をするようになって手際が良くなったのか少しはマシにこねていた。
「ふむ、粘土細工のようで面白いな!」
「じゃあ、マスターのはすぐに焼く準備にして。私のは時間をおく」
「ぬ? 何か違うのか?」
「焼いた後のしっとり具合とかが。けど、別に大丈夫。次の工程は私がやる」
「わかった」
マスターのこねた生地を、蝋で加工した紙に挟んで平たくする。そして、パン作り用に使う麺棒で薄く伸ばして。
オーブン窯を予熱させたら、伸ばした生地の片面の紙を剥いで、包丁の背で縦横五当分すればいい。
これをこのまま焼いてもいいが、取り出しやすさも考えてなぞった線の上からしっかりと切り込みを入れる。
「あとは焼くだけ」
「随分と簡単なのだな!」
「今のうちに、付け合わせを作る」
「は? クッキーだぞ? たしかに辛いものまで入れてたが、甘くないのか?」
「アイスとは違うの。あのままだと食べにくいから。ちょっと待ってて」
「うむ?」
実はこのクッキー、材料からいってほとんど食事……主食向きのクッキーである。
そのまま食べれなくもないが、レシピによると大概は何かを上に乗せたりして食べるのが普通らしい。
なら、焼いてる時間を利用していくつかのディップを作ろう。
途中までは、もちろんマスターに手伝ってもらった。
「その白いのはヨーグルトか?」
「ん。これでチーズを作る」
「は?」
「まあ、見てて」
ヨーグルトを絹の布の上に載せて、ザルに置いて。
私の力なら、水気を切るのは可能だから限界まで絞って絞って!
出来上がったのは、ヨーグルトよりも白くて固い物体の出来上がり。
「これをクリームチーズと言う」
「それも俺様が召喚したレシピからか?」
「うん。少し塩気を加えたり、甘みを足せばすっごく美味しくなるらしい」
「甘さ!」
「ちょっと蜂蜜足すだけ。一枚のみ」
「くぅ……」
私だって、本来は甘やかしたいところだけども!
まだまだ、本来の美しさからかけ離れている今は甘やかしてはいけないもの!
だいぶ痩せたとは言っても、まだ体重は175……寿命を安定させる68キロを目指すのだから、まだ3倍以上もある。
心を鬼にするのよセリカ!
これも全てマスターのため!
だけど。
「……甘さを抑えたジャムちょっとならいい」
「本当か!」
「けど、一枚だけ」
「わかった!」
この満面の笑みに弱いのよね、私!
結局は少し甘やかしてしまい、焼き上がるまで他のジャムや載せるものを作ってから。
ちょうど、窯の方も焼き上げが終わり、ミトンをつけてから取り出すといい仕上がりになっていた。
「ほう。普通のクッキーよりも、かなり香ばしいな!」
「けど、バター入れていないからしっとり感はないと思う」
「そうか。けど、一枚……」
「熱いからダメ。先にリビングで待ってて。一緒に食べたい」
「!……そうか。わかった」
「うん?」
普通のことを言ったつもりが、マスターは少しどもってからリビングに行ってしまった。
何か言ったかしら? と、ちょっと自分の言葉を思い返してみると……自覚してなかったが、感情を表に出してる言葉を言ってしまってた!
(い、いいいい、一緒に食べたいって言ってしまったわあああああああああああああ!!!!!!!)
べ、別に今朝から一緒に食べてるんだし、間違ったことを言ったわけでもない。
それに、マスターからは感情を少しでも表に出した方がいいと言ってもらったんだからそれも間違ってはいない。
けど、だったらなんでマスターはあんな反応をしたんだろう?
昨日の髪にキスよりは、だいぶ大人しい感情の表し方なのに?
(……とりあえず、仕上げ仕上げ)
クッキーは一人につき五枚。
そのひとつひとつに、クリームチーズやジャム、おかずになるような野菜の和物も載せて。
出来上がったら、リビングで待ってるマスターのところへ持っていく。
「……お待たせ」
「おお!」
けど、今はいつも通りだったからさっきのは気のせいではないかと思いかけたけど。
とりあえず、休息の時間は大事なのでマスターの分をテーブルの上に置いた。
「美しいな!」
「このふすまクッキーは、食べ過ぎ注意だから。とりあえずこれだけ」
「食べ過ぎ?」
「食べすぎると……マスターの排泄行為がさらに酷くなる」
「なんと!」
「実は朝のブランパンと言うのも、これに入れたふすま粉を使ってる。だから、食べ過ぎないように調整してる」
「……わかった」
なので、食事の祈りをしてから、まずは気になってたクリームチーズを口にする。
ふすまクッキー自体はかみごたえのあるクッキーに仕上がっていたが、上のクリームチーズと一緒に食べると程よい甘さと絡んで美味しい。
赤唐辛子を入れているが、辛さはほとんど感じない。
「うむ、美味いな!」
マスターは、キノコ以外ならなんでも美味しいと言ってくれる。
とても喜ばしいことだが、私の中にある異世界料理のレシピのお陰だ。
調理技術なども、全てそのレシピのお陰。
だけど、この三ヶ月近く、マスターはキノコ以外ほとんど残したことがない。
とても嬉しいことだわ!
「うむ……うむ。甘くないクッキーというのもいいものだな。これはどちらかと言えば食事に近いが」
「正解。主食をこのクッキーで補うことも出来る。けど、一回につき五枚ほどがいい。あと、さっきは食べ過ぎで排泄行為が酷くなると言ったけど、規定量を守れば……もう少しマシになるはず」
「ぬ。というと……毎日起こるのか?」
「そこはマスターの体質もあるからわからないけれど……試してみる?」
「う、ううむ……頻繁に、か。そうか」
そしてその日の晩。
いつもどおりの食事だけでは物足りなかったマスターだったが。
私がうっかり、保管し忘れてたふすまクッキーの残りを、なんと言いつけを聞いていたのにすべて食べてしまい。
その翌日に酷い下痢となってしまったのだった。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「……こればっかりは、マスターが悪い」
「すまないぃいいいいいいいいいい!!!!!!!」
「はあ……」
まったく、我らが愛しきマスターの食欲にも困ったものだ。
0
あなたにおすすめの小説
【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!
DAI
ファンタジー
【第一部完結!】
99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』
99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。
99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、
もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。
今世の望みはただひとつ。
――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。
しかしその願いは、
**前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。
女神の力を秘めた転生少女、
水竜の神・ハク、
精霊神アイリス、
訳ありの戦士たち、
さらには――
猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、
丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!?
一方その裏で、
魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、
世界を揺るがす陰謀を進めていた。
のんびり暮らしたいだけなのに、
なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。
「……面倒くさい」
そう呟きながらも、
大切な家族を守るためなら――
99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。
これは、
最強だけど戦いたくないエルフと、
転生1回目の少女、
そして増え続ける“家族”が紡ぐ、
癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。
『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。
とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。
本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。
今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。
短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを
ありがとうございました。
〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜
【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!?
◆あらすじ
「貴方を、私が養います!」
前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。
絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!
実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。
しかし、彼女は知らなかった。
自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――!
◆見どころポイント
① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛
逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!
あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。
② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?
庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!
「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。
③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」
エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。
しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!
本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。
◆こんな方におすすめ!
すれ違い勘違いラブコメが好き!
ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい!
無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい!
悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる