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7-1.異世界召喚(セリカ視点)
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(……ああ、どうしよう)
マスターの願いとは言え、あとたったの三ヶ月であの醜い身体を激痩せさせなければいけないだなんて。
表向きには了承したけれど、マスターとの生活をたった半年程度で終わらせてしまうだなんて、嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいーーやーーだーーーーーーぁああああああああ!!!!!!
けど、私の創造主であるマスターの頼みは基本的に断れない。
それに、【恵の豊穣】の改善ならびに向上のためにも、街にいかなければならないのは必須。
マールドゥ達に頼んでもいいかもしれないことを、あの方は自分の目で確かめに行くと言い出した。
そう言われてしまうと、私の口からは反論は出来ない。
とりあえず、今は二人で洗濯物を畳んでいる。
ほとんどが、当然マスターの衣類だけども。
「むむ。綺麗に畳めん!」
「……タオル一枚畳むのに時間かけ過ぎ」
「むむむむ!!」
マスターの醜い巨体のままでは、タオル一枚畳むのに物凄く不器用な畳み方しかできていない。
アドバイスをかけても、すぐに元の木阿弥。
これまで、しかも小さな子供の頃にも、母君の手伝いをされていなかったせいか、家事については全くの素人以下。
私は何故出来るかと言うと、女性体として生み出される際に、適度な家事能力をベーストにしたエルフ体から組み込まれているため。
マスターの保有技能である『異世界召喚』の料理レシピなどにも、何故か掃除能力も組み込まれていたが、そこはそこ。
(……そうだわ。異世界召喚を使えば)
マスターの目標とする、標準体型に戻るための道具が手に入るかもしれない。
「……マスター、聞きたいことがあるんだけど」
「ん、なんだ?」
「とりあえず、洗濯は置いといて」
「う、うむ」
「マスターの所有する異世界召喚。無機物であれば、ほとんどのモノを召喚出来る能力で合ってる?」
「ああ! 俺様のこの技能があれば、大抵のものなら召喚が可能だとも!」
「ん、ならマスターの減量生活のために。召喚してほしいものがある」
「なんだ?」
「ウォーキングを手軽に出来る魔導具」
「は?」
「その名も、『ランニングマシーン』」
「はあ?」
「とりあえず、ここは私が片付けるから。召喚の準備を」
「わ、わかった」
マスターが決めたからには、助手である私も従うしかない。
ただし、それなら徹底的に追求しようじゃないか。
マスターの身体に負担が大きくかからない程度に、適度に。
そして、多少ふくよかどころか元の体型まで戻そうじゃないか!
やると決められたのなら、私も全力で補佐するまで!
とりあえず、マスターが準備している間に手早く洗濯物をすべて畳んで元あった場所に収納して。
すべて整ってから、マスターの研究室の一つである召喚室に向かった。
「む、終わったか?」
「ん、準備は?」
「ただ召喚するだけだ。特に必要はない」
「そう……」
けど、それはマスターだから。
特殊保有技能の『異世界召喚』と言うものは、おそらくこの世界のどこを探しても我らが創造主であるマスターにしか出来ないはず。
ただし、無機物……植物以外の生命体を扱えないから勇者などの救済者を召喚することはほぼ不可能。
だからか、今までギルドなどでも目をかけられなかったらしい。
ちなみにこの情報は、マールドゥからだ。
マスターは、よく使い込んだ革一枚に書かれた複雑な魔法陣を部屋の中央に置き、その側に立った。そして、両手を陣の前に広げた。
「我が名はクローム=アルケイディス。この陣を創造せし者、創造主也」
詠唱を唱えると、陣が淡く光を帯びて少しずつ力強くなっていく。
「我求む。我、望む。この陣の向こう側にありし物を。その物を我が手に届かせん!」
召喚は初めて見るが、マスターが今の巨体でなければ、きっともっと荘厳で美しい光景だろうに。
今のマスターは光に包まれても、ブヨブヨの巨体のせいで美しさが台無しだ。
とは言え、目的はランニングマシーンの召喚。
マスターが仕上げらしい詠唱を唱えようとしたら、なんか気味の悪い笑顔になった。
「この俺様、クローム=アルケイディスの手に『ランニングマシーン』を召喚せよ! あっはははははは!!!!」
台無し……台無しだ。
感心しかけていたのに、最後は俺様って。
けど、元の姿に戻ればこれもかっこいいのかもしれない。
(ああ……その姿に早くお会いしたいかもしれない)
私の細胞にほんの少し組み込まれた、マスターの元の姿。
生まれ出る寸前に、少ししか頭に浮かんで来なかったが、たしかに今以上にエルフのように美しく、荘厳な姿。
あれを毎日見られるようになるのだから、私も全力で補佐しよう!
とりあえず、召喚はマスターが高笑いした直後に、魔法陣から黒い大きなモヤが飛び出してきて。
私の前に来ると、少しずつ形を成していった。
「ほう、これがランニングマシーンとやらか?」
形作られた魔導具は、全体的に黒い管が多く。
床につくかつかないくらいの高さに板が浮かんでいて。
上部には、魔導具らしき台座のようなものがついていたが、厚みは意外と薄く。
私の異世界レシピなどに組み込まれているマシーンと同等の姿が現れたのだった。
「セリカ。これをどう使うのだ?」
「魔導具として召喚したのであれば、すぐに動かせるはず。マスター、この板の上に乗れる?」
「うむ」
マスターの体重で壊れそうになるか少し心配だったが、それは杞憂に終わり。
少し軋みはしたが、板の上に乗ってから私はマシーンに近づいて台座の部分に手を触れた。
「たしか……ここのパネルというのを触れば」
「ぬあ!?」
動くはず、と続けようとしたら、触れた途端に音がなり、板の上にあるベルトのようなものが動き始め。
マスターがすぐにひっくり返そうになったが、横にあった両方の管を掴んだことで破壊も免れた。もちろん、すぐにマシーンの動きは止めたが。
「な、なんだ!?」
「ご、ごめん。そこが動くって言うのを忘れてた……」
「忘れるな! 怪我すると思ったぞ!」
「ごめんなさい……」
ああ、もうマスターに怪我させてしまったら、思わず自決してしまうわ!
けど、気を取り直してもう一度操作してみることに。
マスターには、両方の管を持ったまま立っててもらい、すぐに足が動けるように構えてとも告げた。
「む、足の部分だけ動くと言うことは。これはこの板の上だけでウォーキングが出来ると言うことか?」
「うん。速度……速さを切り替えれば、走ることにも使えるらしい」
「それは優れ物であるな?」
「動かすよ。ゆっくりにするから」
「うむ」
そして、頭に浮かぶ異世界レシピからの説明書を頼りに、速度をいじって最弱にしてマシーンを動かして。
マスターにはゆっくりウォーキングを始めてもらった。
「おお、これは動きやすい」
「普通に歩くだけでもいいかもしれないけれど、いつもの姿勢で歩くと効果的だと思う……」
「ならば、わざわざ庭に出ずとも」
「けど、日光浴も大事。一日置きにした方がいい」
「ぬ。わかった」
とりあえず、マシーンの召喚と稼働にはうまくいったのでこれくらいにして。
次は、床掃除をすべく召喚室をあとにするのだった。
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