26 / 94
10-4.間に挟まれ(恵の豊穣《フィーク・シャイン》視点)
しおりを挟む★・☆・★(恵の豊穣視点)
思考の底に。
思考の底に。
ある部分だけは、生成に傾けて残りは底に。
思考の底に。
思考の底に。
魔導具であれ、意思を持つ存在である我は、あまりヒトと同じではいけない。
……生成するモノらへの傾きがすり減るが故に。
けれど、あのホムンクルスが生成されてからは、いくらか変わった。
あれは、我を母のような、姉のような存在として我と言葉を交わす。
我が己を生み出した存在であるがゆえに。
我が名は、恵の豊穣。
(…………もうすぐ、ヒトの暦とやらで、我が生み出されてから一年が経つが、我の完成度は低いまま)
理由はいくつかあるのを、我はきちんと知っている。
我らが創造主が調べる以前から、ずっと。
(エーテル培養液が不完全であった……)
我に刻まれている知識からでも、それを使わせることは違法以上に禁止事項とされている。
だが、ホムンクルスーーセリカが生み出されてからでも、彼女の身体に刻まれている食材を生み出すのには事足りていることから、そのまま使用し続けている。
ただし、我らが創造主を極限にまで醜くさせてしまった錬成料理だけは、作るのを止めることになった。
創造主以外、誰が食べても味が極端に薄く、創造主のように幸せな表情にはなれない。
そして、その原因を創造主とセリカが調べた結果。エーテル培養液が不完全な代物であると。
けど、我はそれを知っていた。
生み出されて、意思を持つようになってから。
けれど、創造主に知らせなかったのは、問題がないと思ったからだ。『セリカ』を生み出すことが出来たのだから。
(……だが。今は、知った上でなお使い続けている)
本来なら違法行為ではあっても、街からだいぶ離れたこの僻地には限られたヒトしか訪れない。
訪れるのは、創造主とは知己の間柄である男女のみ。
我は片割れには遭遇したが、なかなかに個が強いヒトであった。
それはいいとして、創造主は醜い己の姿のままでは、街に降りれないと確信を得たので。元に戻るべくセリカの減量生活を強化して、たしか今日で一番醜かった頃から半分は減ったらしい。
セリカと、創造主の寿命をとどめていた障害は、これでほぼ取り除かれたと言っていいが。
はてさて、ホムンクルスであれ生命体であるセリカの恋路とやらはいかなるものになるだろうか?
一応なりとも、娘に等しい彼女の行く末を応援したい気持ちはなくもないが、普段の彼女と真実の彼女は色々と違う。
それをいつか知った上で、あの創造主はセリカを受け入れてくれるのだろうかと。
【……ん?】
誰かやってくる。
と言っても、創造主はほとんど我のところへ来なくなったので、セリカかと思いかけたが……よく足音を聞くと彼女のような軽やかさがない。
急いでいるのはわかるが、足音自体が重く聞こえる。
まさか、と緑柱石の魔石越しに飛び込んできたのは、たしかに以前の半分ほど見違えた我らが創造主だった。
が、いったいなんの用だろうか?
「しゃ、シャイン……」
【いかがなされたのです、我が創造主?】
「お、俺様は……!」
我が問いかけても、目は赤くうっすら涙ぐんではいるが、体調が悪いわけではなさそうだ。
何か、ヒトが持つ『心』になんらかの衝撃を受けて、動揺……と言う状態になっているに等しいかもしれない。
なら、創造主とセリカに何かあったのか?
だが、その割にはセリカが追ってくる気配がない。
【ヒトのように言うのはおかしいかもしれないですが、創造主。深呼吸してください】
「すーはー」
我の助言を聞いてくれた創造主は何度か深呼吸を繰り返して、地面にどかりと腰を下ろした。
【質問をしても?】
「……俺様も、まだ信じられない」
【と言うと?】
「自分で造り出したとは言え、ホムンクルスに恋する人間がいるか?」
【それは……】
セリカ、ヒトらしく言うのであればこれは『ハッピーエンド』と言うモノかもしれない。
だが、創造主は困惑していて、まだすぐに自覚した想いとやらを受け入れていないのだろう。
「い、いや。惚れないわけがない! 表情の変化はほとんどないが、俺様のために尽くして減量生活を続けさせてくれる美しいエルフだぞ!? この一年近く、よく手も出さずに生活出来たものだ」
【……創造主、それを彼女に告げてみては?】
ならば、取り繕った仮面のような表情を取っ払って、彼女の本性を表に出して猫のように貴方様にすがりつくだろうに。
あえてそれを言わずにしておくと、何故か創造主は首を振った。
「い、いや。この姿のままでは、あれと釣り合わん! せめて、以前のような美しい俺様に戻ってから……」
【……なら、何故ここに来たのです?】
答えが決まっているのであれば、私に言う必要などないでしょうに。
すると、マスターは髪をかきながらゆっくりと立ち上がった。
「お前は、セリカの親のようなものだからな。であれば、彼女がら何かしら聞いてはいるのではないが?」
【……黙秘します】
「何故?」
【……女同士のプライバシーというものです】
我から、彼女の気持ちを告げても、意味がない。所謂娘の抱えている気持ちを親が簡単に言ってしまうと、信憑性がないというか、セリカと創造主のためにならないからだ。
だから、あえて言うのを否定した。
「……そうか。……わかった、いずれ自分で聞く」
【その方がよろしいかと】
「そして、お前の中にあるエーテル培養液を作る原材料を押し付けてきた犯人も突き止める!」
【諾】
その意気込みは潔し。
ならば、我は緩やかに食材生成に励もうではないか。
創造主は決意を固めてから、ゆっくりとこの部屋から出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!
DAI
ファンタジー
【第一部完結!】
99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』
99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。
99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、
もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。
今世の望みはただひとつ。
――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。
しかしその願いは、
**前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。
女神の力を秘めた転生少女、
水竜の神・ハク、
精霊神アイリス、
訳ありの戦士たち、
さらには――
猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、
丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!?
一方その裏で、
魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、
世界を揺るがす陰謀を進めていた。
のんびり暮らしたいだけなのに、
なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。
「……面倒くさい」
そう呟きながらも、
大切な家族を守るためなら――
99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。
これは、
最強だけど戦いたくないエルフと、
転生1回目の少女、
そして増え続ける“家族”が紡ぐ、
癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。
『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。
とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。
本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。
今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。
短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを
ありがとうございました。
〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜
【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!?
◆あらすじ
「貴方を、私が養います!」
前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。
絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!
実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。
しかし、彼女は知らなかった。
自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――!
◆見どころポイント
① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛
逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!
あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。
② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?
庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!
「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。
③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」
エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。
しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!
本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。
◆こんな方におすすめ!
すれ違い勘違いラブコメが好き!
ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい!
無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい!
悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる