満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

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12-2.ギルマスの考察(アーク視点)

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 ★・☆・★(アーク視点)








(ふむ……あのクローム君が)


 例の僻地にある屋敷を購入してから、約一年。

 このギルドにも直接顔を出すことがなくなり、マールドゥ君やチェスト君が出向かなくては対応もしなくなった若き錬金術師。

 時々自分勝手な行動が目立つヤンチャな男の子ではあったが、これでもギルマスとしては気にかけていた。


(……彼が、大量に購入したエーテル生成液。あれに不正があったとは)


 生産ギルドとしては、なんとした欠陥品を顧客に売ってしまったと落ち込んでしまいそうになるが。売った相手が、あのクローム=アルケイディス君。

 彼の才能を妬む輩は、この街や他国でも数多くいる。

 であれば、彼になんらかの失敗を経験させようと言う考えでは生温い。

 彼を、世間的に失脚させるのもまた違うと思う。

 僕は、執務室に戻りながら、そんな考えに行き着いた。


「ふむ。何かあったようですしね……」


 錬金術師なら、購入してもなんら不思議ではないエーテル生成液。クローム君が、大量に購入して何か特殊な魔導具を創り出したようだが。

 それに組み込んで、約一年も気づかないとは、あの天才君にしては落ち度があり過ぎる。

 チェスト君にも知らせたのは、どうやらここ最近のようであるし、すぐにでもこのギルドに問い詰めてもいいはずなのに何故か来ないでいる。

 なら、彼の身に何か起きたのか。

 それをマール君達にも聞いていいかもしれないが、クローム君の命に関わりがないのであれば、ひとまずやめておこう。

 僕は、僕の仕事をしなくては。


「内部調査……と言ったものの。しらみつぶしに漁っては逃げられますしね」


 執務室のデスクに座って、引き出しから透明なクリスタルボールを取り出してデスクの中央に置いた。

 そして、別の引き出しからナイフを取り出して指の先端に傷をつけてクリスタルボールの上に血を垂らす。


「さあ、導け。我が真名アーク=ディオンの名において。目的の目的、かの者への目的を導け。この生産ギルドにて企む輩。導きたまえ」


 いくら生産ギルドとは言っても、裏が無い方が普通ではない。

 僕は冒険者ではないけれど、素行調査をちょっとした方法で調べられるのを得意としている。昔とった杵柄とも言うべきか、まあこの年まで色々あったからギルドマスターなんかもやってはいるから。

 とりあえず、まあ、出来てしまうわけで。

 ひとまず、クリスタルでギルド内の職員限定で探ってみると、まあ候補は出てくる出てくる。


「ふむ。この彼は、クローム君が疎遠になる前から見た目で劣ると妬んでいた。こちらの彼女は振り向いてもらえないと、逆にクローム君への呪いのアクセサリーを仕込もうとしてた。が、エーテル生成液を売りつけた相手ではない」


 他にも多数いたが、今日いる職員の中にはどうやら見当たらないかこの調査方法に引っかからないように対策しているか。

 チェスト君達が言っていたように、発注書を後から盗み取って見つからないようにしているのかもしれない。

 なんで、直接クローム君を貶める方法ではなく、エーテル生成液の不正をしたのか。

 どちらにしても、国から罰せられるだけですまない。

 なら、余程クローム君が気に入らないか、あるいは振り向いて欲しいか。

 僕はクリスタルから血を拭き取ってから、また引き出しにしまい込んだ。


「……であれば。一度クローム君に会わなくてはいけませんかね」


 すぐ来れない状況とは言え、気にはなる。

 マール君が言っていた魔導具も気になるし、最近売れ行きの良い質が向上したポーションの方も。

 ギルドマスターとしては、その秘訣も伝授してもらいたい。

 あと気になると言えば。


「女性達は怒るだけですみませんが、なにやら女の子と一緒に住んでいるようですしね……」


 セリカ、と言う名前。

 まだクローム君がこの街にいた頃に、知り合いにもそのような女性の名はなかった。

 であれば、まさかとまでは言わないが『創った』かもしれない。ホムンクルスかゴーレムを。


「彼の実力であれば、創れておかしくはありませんからね?」


 いったいどんな存在か。従順なのか、はたまた逆か。

 一人の人間としては、どちらであっても気にはなる。

 そうと決まれば、マール君達はまだ整頓しているだろうから、聞いてみよう。

 すぐに思い立って向かえば、まだ二人はくたくたになりながらも整頓をしていたのだった。


「お疲れ様です」

「「……ギルマス」」

「やはり、見つからないようですね?」

「ぜっんぜんですよー! 二年前のまで出てきても、あいつに関するのは全然!」

「……クローム君のがひとつもですか?」

「いえ~。食材に関するものは普通にあるんですが。錬金素材に関するのはちっとも~」

「ふむ。ここ最近のもですか?」

「最近は全然ですね~。あの辺は薬草も豊富ですし、あの子が来てからは食材ばっかりだったので~」

「あの子?」

「セリカちゃんって言う、エルフ型のホムンクルスが居るんですよー! 超可愛いくて、クロームの奴なんかにはもったいないくらい!」

「ほう。エルフ型のホムンクルスを……それは、例のエーテル生成液を培養液に作り替えてから?」

「おそらく~。大人しい割にいい子ですよ~?」

「ほう」


 やはり、ホムンクルス。

 しかも、綺麗、可愛いものに目がないマール君が絶賛するあたり、とても秀麗な存在なのだろう。何故ホムンクルスを創った経緯までは二人もわからないらしいが、クローム君は今一人ではいないそうだ。


「ギルマス~。少し調べられたんですか~?」

「ええ。とりあえず、検索には別のばっかり引っかかりましたが」

「う~~ん。クロがあの身体になったせい、の原因はいったい……」

「あの身体?」

「ギルマス、あんま言いふらさないでくださいね? クロームの奴、例の魔導具を作って、その錬成料理を食べまくったせいで以前とは比べもんにもならないくらい太ったんですよ!」

「クローム君が……太った?」

「しかも~、今はセリカちゃんのおかげで半分以上痩せたんですが~。前はでぶっちょオークみたいに~」

「で、でぶ!?」


 あのクローム君が、太った?

 しかも、今は半分になったとは言え、オーク並みに?

 これには、さすがにツボに入って僕はその場で笑いながら転げまくった。


「「ぎ、ギルマス~~??」」

「い、いやいや失礼。であれば、検討がつきましたよ」

「「本当ですか!?」」

「ええ」


 クリスタルの検索の途中で引っかかった人物の一人。

『彼』がクローム君の研究内容を何故知ったかはわかりませんが。

 一度、今のクローム君に会う必要がある。

 その上で、告げた方がいいかもしれないですね?


「チェスト君。次に彼からポーションを納品する日取りは?」

「今日行こうと思ってたんですけど~、あいつの取り巻き連中がうるさかったので明日に~」

「であれば。僕も同行しましょう。色々話したいこともあるので」

「ギルマス~、私は?」

「君は君の仕事をしてください。また教えますから」

「はーい」


 とにもかくにも、クローム君。待っててくださいね?
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