満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

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28-1.王宮ごった煮(ガイウス視点)

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 ★・☆・★(ガイウス視点)







 経緯はなんであれ、ミリアムはいい男を心に決めたと思うよ?

 貴族だろうが、国民だろうが。羨望の的になってる我が妹を手に入れようとしてる男は星の数ほどいるのに。

 チェストはそうじゃなかった。

 むしろ、自分と身分が不釣り合い過ぎるし、メリットが見出せないから話す場を設けて欲しいというくらい。

 父上と母上を言いくるめたくらい、下準備もしてあるのにそれでも話し合いをしたいって言うんだもの。

 まったく、クロームもマールもだけど。幼馴染みのもう一人もなかなか強かな心を持ってるものだ。

 結構マイペースに見えて、ちゃんとした考えを持っている。

 彼なら、破天荒な妹を任せてもいいと思うけど。

 とりあえず、執務室に転移したらドアの方がやけに騒がしかった。


「……なさい! イクス!」

「で、ですが! 王女殿下! 王太子殿下は今お留守で」

「ならば、どこに向かったのかを言いなさい!」

「そうおっしゃいましても!」


 イクスと……この声はミア?

 なんで僕の執務室……しかも、イクスに留守を頼んでいる最中に?

 疑問が尽きないが、とりあえずイクスを手助けするために扉を開けることにした。


「騒がしいね? どうしたの?」

「あ、殿下!」

「ガイウスお兄様! お話がありますの!」

「アイもですわ!」

「アイも?」


 末妹のアイルンまでやってきて、一体全体どういう事態なんだ?

 とは言え、ここでずっと騒がしくしていると近衛隊達がやってきてしまうから、イクスごと執務室に全員押し込んだ。


「「ガイウスお兄様!!」」

「……なに?」


 扉を閉めた途端に詰めよってきた妹二人の圧力に、ちょっと圧倒されかけたが表向きは素敵お兄様を演じるのだ! と意気込んで過剰なリアクションは取らないように頑張った。


「「ルーイスお兄様についてですわ!!」」

「……え、なに? まさか、また父上に?」

「わたくしの情報網でも、ルーイスお兄様については情報が曖昧でしたが。……何故、何故」

「ミリアム?」

「何故、捕物作戦にチェスト様を加わらせるのです!? 危険ですわよ!?」

「…………はあ?」


 君を暴漢から助けたくらいの手腕の持ち主なんだし、あれでいてアークさんの腹心の部下なんだから大丈夫なのに。

 むしろ、協力してくれないと、生産ギルドでやらかす予定の捕物作戦が実行出来ないし?


「……この情報が漏れかけていまして……かと言え執務室にお入れするわけにも行かず、もめかけていたのです」

「……なるほど。イクスの判断はいいよ? けど、妹達よ、次兄とは言えあの男を幽閉するかもしれない事実は秘匿事項だ。ばらまいて、自分が逆に幽閉されるかもしれないことにならないと思わなかったのかい?」

「「う……」」

「けど、事実。私の朋友ともである錬金術師を不正のエーテル生成液を作り出してまで死に至らそうとしたんだ。この罪は、王家であろうがなかろうが普通なら死罪。だが、王子と言う身分でギリギリ幽閉処分になるつもりだ」

「「まあ!」」

「この情報をうっかりルーイスに流したら。いくら実の妹達でもあれは殺すのを厭わないだろうね?」

「…………あり得ますわね」

「でしょ?」


 まだ若干幼いアイルンはしょんぼりしていたが、文武両道でもあるミリアムの方は、しっかりと理解してくれた。多分、だけど。ルーイスにはまだ情報が漏れてはいないはず。

 言いくるめておくには、早い方がいい。


「ですが……ですが、チェスト様は!」

「無関係じゃないんだよ。国民の一部にエーテル生成液を売買することが出来る生産ギルドの一員だし、我が朋友ともの幼馴染みだからね? むしろ、自分から動いていた」

「……そんな」

「けど、ミア? 君の想う相手はそんな弱い人間ではないだろう?」

「! そう……ですが」

「もうほぼ決定事項なんだ。不正なエーテル生成液をこれ以上生み出さないためにも。今後の私達の生活の安寧のためにも、やらなくてはいけない」

「……わ、かりました」

「……アイも、ですわ」

「うんうん、ありがとう」


 なんとか一件落着かな、と二人を王宮の離宮に送り届けてしまってから。

 僕は、ちょっと気になったので父上のところに行ってみたんだけど。

 謁見の間にはいなかったので、執務室に行ったら無言で、しかも威圧的な空気をまとって書類整理をしていた本人がいたのだった。


「……父上?」

「……ガイウスか」


 一応入室の断りは入れたが、開けたのは近侍だったし。その近侍も出て行っちゃったし、これは大変だあとのんきに考えるしか出来なかった。


「……ミアとアイのことは聞きましたよー?」

「…………半ば本気の拳を向けられるところだった!」



 近侍がいなくなった途端、ガチ泣きしやがりましたよこの国王陛下殿は!

 よっぽど怖かったんだね!?

 ルーイスの情報まで漏らすと言うことは、背負い投げされたのかも?

 正装じゃない今だから、王冠は被っていないんで良かったとは勝手に思ったけども。


「我慢してくださいよ~? ルーイスの情報は一応極秘だったんですから~?」

「そうは言っても、ギリギリのところまで掴んでいた。無理を言うな!」


 ダンッと机を叩いたら、インクの壺が倒れる……と思ったので、ダッシュで掴みに行った。こう言う書類の大半が王太子でもある僕の執務室行きにもなるから、作り直しだなんて勘弁願いたい!


「わかってますよ~? ミアの情報網は僕に次ぐくらい強力ですからね? 途中おそらく妨害はしたでしょうが、チェストが関わるとなれば全力で止めるつもりでしたから」

「……なら。お前が止めたのか?」

「もうしょうがないので、真意は伝えました。チェストの協力が必要なのも併せて」

「……そうか。しかし、お前といい、ミリアムといい。国民を伴侶とは大胆だな」

「そのミアの方ですけど。チェストはきちんと断ろうとしてます。自分やミアにメリットがないからと」

「……嘘だろ? 外見だけなら、ミアを娶りたがる男が多数いるのに」

「それが、クロームの幼馴染みだからでしょう」

「アルメリアの息子か……。ふむ、面白い、俺もその話し合いに同席させろ!」

「……嫌ですぅ!」

「何故だ!?」


 面白いと言ったら、絶対伯爵かなんらかの地位に持ち上げて王宮に従かわせるつもりでしょ!?

 アークさんとこの人手を減らしてなるものか!

 とりあえず、僕は全力で父上を止めるのだった。
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