満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

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29-2.捕物合戦①

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 ★・☆・★







 やはり、俺の風貌が約一年前と違い、セリカのお陰で磨きに磨かれたからだろう。

 ギルドに入った途端に、視線が突き刺さるくらいに向けられるが気にしない。後ろのセリカにも似たような視線が刺さっているかもしれないが、今日の目的を忘れてはいけないのだ。

 ディスケット、ならびにルーイス王子を現行犯逮捕。

 単純に不正のエーテル生成液を俺に受け渡し、何も知らぬ俺がまた錬成料理を作って、あの醜い体に戻って死に至るのなら出てくる必要はない。

 だが、ギルマスが立てた計画により、俺とセリカが自ら屋敷から外に出て、久しぶりに生産ギルドに出向く。

 その情報をわざと垂れ流しにしたのだから、変装はしているだろうが見に来ていてもおかしくはない。

 さて、表の用向きはエーテル生成液の受け取りだ。堂々としながら、ギルマスの待っている受付に行くと。


(……ビーツ)


 約一年前とほとんど変わらず、頬を赤らめながらもギルマスのいる受付担当席に座っている。その様子だけだと洗脳されていないように見えるが、今回は奴や他の洗脳されている職員をもとに戻すのも必須。

 とりあえず、セリカには後ろに立っててもらい、俺はビーツに向かい側にある椅子に座った。


「あ、あああ、あの……!」

「ビーツ君。久しぶりとは言え、クローム君ですよ? 仕事はちゃんと・・・・しなくては」

「は、はい!」

「……頼んでおいた、新しいエーテル生成液を受け取りに来た」

「し、少々、お待ち……ください!」

「ああ、それと」

「は、はい?」

「ここにいる、セリカと婚約の誓約を結ぶつもりだ。誓約書も頼む」

「「「「「「「「「……………………は?」」」」」」」」」


 わざと、婚約の部分を大きめの声で強調させて言ったのが効いたのか。

 ビーツ以外の職員、同時に今生産ギルド内にいる俺とセリカの事情を知らない大多数の人間や亜人達がびっくりしたような声を漏らした。

 だが、俺は構わずビーツに再び声をかけた。


「聞こえなかったか?」

「あ、あの……いえ。ご婚約……ですか?」

「ああ、そうだ」

「本当……に?」

「間違いはない」


 さて、ここまで続けると、洗脳の反動でどう出てくるか。以前にギルマスの血の内部調査で見た記録通りになるのか。

 少し様子を見るのに、待っていると。

 ビーツではなく、別の職員がいきなり奇声を上げたのだった。


「……嘘よ。嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ……嘘よ!?」


 誰だったかは思い出せないが、女の職員の顔がだんだんと異質なものに変わっていく。

 目が赤く染まり、歯には牙が現れ、髪は魔力の膨張などに触れたのか逆立っている。

 これが……ディスケットの洗脳の効果か?

 正直に言おう、やり過ぎだ!

 しかも、彼女と連動してそこかしこに同じ状態になった男や女の職員が暴走していく。

 しまいには、俺の目の前にいるビーツまで。


「クロームさん…………う、嘘と言って……ください……!」

「残念ながら、本心だ」

「う……う……うがあああああああ!!」

「おっと!」


 ビーツが卓に乗り上がって襲ってきたのを、セリカに鍛え上げられた肉体で難なくかわした。以前に体もだが、錬金術師に専念してからは体術とかからっきしだったのに。

 あとでセリカにはさらに礼を言わないとな? ついでに、存分に甘えさせてやろう。と考えをそらしていると怪我をしかねないので、腰にぶら下げている剣で一応ビーツの攻撃を受け止める。いつのまにか、爪まで魔物モンスターのように伸びていたからな!


「クローム!」

「セリカ、予定通りに動け! ディスケットを探すんだ!」

「! 了解!」


 俺の今回の役割は、洗脳されている職員らをおびき寄せるための囮に近い。

 その間に、セリカやチェスト達がディスケットを探し出して捕縛する予定だ。ルーイス王子は本当に来るかどうか怪しかったが。

 と言うか、洗脳のせいで臆病なビーツの本能が剥き出しになって、力で押されてきた! 鍛えてはいても、戦闘はほぼ未経験だからこれが限界か!?


「助太刀するよ、クローム!」


 頭上から声が降ってきたが、相手が誰かすぐにわかったので無理にでもビーツから離れた。

 そして同時に、降りてきた王太子ガイウスの手刀により、ビーツは一時的に気を失ったのだった。


「もうちょっと戦闘訓練したら?」

「俺は一応錬金術師だが?」

「出来る男はセリカちゃんに好かれるよ?」

「……考えておく」


 戦闘中に雑談する余裕があるように思われるかもしれないが。次々に襲いかかってくる職員や混じってた冒険者達の攻撃を、奴は片手にある剣で難なく弾いた。

 やはり、将来的に国を背負う立場の違いのせいかもしれない。


「我が弟もいるし、ここで決着つけちゃう?」

「! いるのか?」

「君が来るって情報は王宮にも伝わっているからね?……そうだろう、ルーイス?」

「…………」


 端に避難していたフードを深く被ってた男らしき奴が、洗脳されている者達を足技で弾いてから俺達の前に立った。


「…………兄上。俺の計画を知ってたんだな?」


 フードを取ったルーイス王子の表情は。

 俺にもだが、兄であるガイウスにも憎しみの情を向けるものだった。
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