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31-1.誓約書
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婚約誓約書。
文字通り、婚約するための誓約書である。
この誓約書に記入した男女一組は、約半年以上は清いまま婚約期間を過ごし。その後に、婚姻の儀を結ぶならわし。
生産ギルドが管轄を担う、大事な仕組みだ。
神殿もあるが、庶民には敷居が高いので。神殿に行くのは貴族や豪族となってからは、専ら生産ギルドに行くのが庶民と根付いたからだ。
俺の場合、母親が元貴族であっても庶民であることに変わりはないので生産ギルドに頼むのが通りだ。
セリカを伴ってギルマスの執務室に向かう階段を登り、階下の不始末はチェストやマール達に頼むことにした。
ギルマスに執務室に通されると、俺達は応接フロアのソファに腰掛けるように言われ。ギルマスは自分の執務用スペースから誓約書と専用のペンを取ってきた。
誓約に不正や裏切り行為を出来ないように、入念に念入りに。
それは俺やセリカの出自に関係せずに、誰であれ平等だ。
「では、よく読んでからサインをお願いしますね?」
「ああ」
「はい」
誓約書には、だいたいこう書かれている。
・お互いを愛しみ、慈しんでいるか。
・愛する者同士、裏切る行為をするべからず。
・婚姻を結ぶまで、清い心でいること。
と言ったのを、難しく書いてあるのだが。どれも大事なことだ。俺は、セリカを創り、これまで生活してきてわずか一年程度。
気持ちも育んできてはいるものの、誓約を結ばずにはいられない。
人間ではないにしても、己が異種族婚をするのに、異論は持たない。この後、久しぶりに実家に寄っていくかとセリカに言えば、リンゴかトマトのように顔を赤くしたのだった。
「じゃ、サインするぞ?」
「あ、うん!」
セリカは生まれてまだ一年程度だが、チェストやマール達とのやり取りで書類にサインすることがあったから識字は出来るように、組み込んである。
ただ、セリカにはファミリーネームが初めから存在しているわけではないので、その部分はサインでも俺と同じものを使うようにしている。
揃って、誓約書にサインを書けば。
誓約書から、魔法文字が浮かび上がり、俺とセリカをそれぞれ包んでいく。
「え、え、何?」
「セリカ、じっとしていればいい」
「う、うん」
光を帯びた魔法文字は、身体をぐるりと回れば最終的に小さくなって、それぞれの左手首にまとわりついて収まった。
そこには、腕輪のように落ち着いた魔法文字が刻まれている。
「これで、約半年から一年間。婚姻を結ぶまで、お二人にはキスやハグ以外の性行為は禁止です」
「せ、せ!?」
「まあ、仕方がない。我慢だ」
「く、クローム!!」
しかし、今日までの計画を優先して、まだセリカともキスすらしていないのだから。
が、見せびらかすようにするのも嫌なので、帰ってからの楽しみにするか。そう、とりあえず決めておくことにして。
誓約書を保管してもらうのに、ギルマスに渡してから。次に、正規のエーテル生成液を購入するための手続きをしたのだった。
納品と、金の振り込みはチェストとマールがとり行うことで決まっている。
そして、マールはそれを最後に俺の母親の実家に、養子に入ることになるのだ。いくら、ガイウスと想いを交わしたとは言え、庶民が王家に輿入れするのは外聞的にはあまりよろしくない。
それを、マールが報告がてら俺の母親に話したところ、なら……と提案してくれて、おばあ様も諾と言ってくれたそうだ。
「さて、クローム君も久しぶりの帰省でしょう? セリカさんとゆっくりしてください」
「……母さんの方が、セリカを見てはしゃがなければいいが」
「それは難しいですからね? さ、後処理は殿下からの救援物資も届きますし。お二人は普段通りに過ごして大丈夫です」
「……少し、前まで。戦闘していたとは思えないが」
人殺しを直接したのはガイウスだが、手助けした俺にも罪を背負う必要がある。それを、両親に告げるべきかどうすべきかは俺の判断だが。
ギルマスも俺の心中がわかったのか、苦笑いでいた。
ひとまず、俺とセリカは俺の実家がある住宅区まで出向くことにしたのだった。
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