ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!

櫛田こころ

文字の大きさ
77 / 131

第77話 チェックイン機能にまたひとつ

しおりを挟む
 藍葉はスマホの使い方でひとつ、思いついたことがあった。

 正確にはユーザーとしてポイ活を使うにあたっての疑問点に過ぎないかもしれないが。


「スクショを使って、チェックインの固定ポイントとか出来ない?」


 その日は成樹の家でご飯を作る約束をしていたので、ふいに思いついたそれを告げたのだが。成樹もびっくりしたのか、グラサンが少し傾いたように見えた。


「なん、それ?」
「えーっと、ほら。ゲームで拠点とかあるように、自宅を固定させるのは今もしているでしょ? それを複数使うの難しいかなって。Wi-Fiとかないと、GPSの通信料すごいからスクショでAIに覚えさせるとか」
「……」
「あ。もしかして、誰かもう提案してた?」
「違う。なんつー、盲点。ほかの連中より何倍もええ発想じゃ……」
「使えそう?」
「スクショじゃと、地図アプリの方が個人情報がまだ漏洩しにくい……。俺のでちょっとやってみるか」
「じゃ、ご飯仕上げても大丈夫?」
「すぐ終わるき。はよ、食いたい」
「はーい」


 開発部門担当者が近くにいると、言いやすいことも言えるもんだと思った。発想力はともかく、実行力がすぐにあるのも成樹の利点だ。藍葉はふいに思いついたことを言っただけなのに、どうやら意外性があったのか役に立って嬉しい。

 今日の夕飯は成樹のリクエストで『揚げだし豆腐』なので、揚げ物に注意する以外はそこまで難しくない。杖を滑らせないように注意して、脇に固定させるのも慣れたものだから自宅よりは慎重に作るくらいだ。


「よっし。こんなもんか」


 そして、ものの数分くらいの感覚で試作が出来上がってしまうのも、またすごいとしか思えない。

 料理も出来たことを告げれば、成樹がトレーに乗せたものを順番にローテーブルに置いてくれた。出来上がった料理を見て、すぐに『美味そうじゃ』と言ってくれる優しい目がとても愛おしい。

 まだ数回しかここで料理していないが、もう少し凝ったものも作れるようになりたいと思うくらい作り甲斐がありそうだ。


「もう出来るの?」
「食べる前に、ちょい実行してみよか? 藍葉の端末限定にアプデしてみんしゃい」
「はーい」


 分単位もかからずに更新が終わり、まずは地図アプリを連携させて開く。そして、成樹の家にチェックポイントのピンを立てたら、普通にスクショ。それをポイ活アプリの方に登録させて、小鳥遊家との距離が出現する。


「藍葉んちとの距離が出たじゃろ?」
「ここを……下にある『回収BOX』って押せばいいの?」
「ん」


 言われた通りに押してみると、駅距離が数駅くらいなので1500ptが加算された。バグに見えた高速道路の各名所がいっしょくたに出たときよりは断然マシな数値なので、少しほっと出来た。


「これなら、ほかのモニターも安心して使えるんじゃないかな? もうちょい贅沢言うなら、好きな風景とかを画像登録したときの……えーと、カーナビの履歴とか?」
「車使うやつは連携出来てそれも面白いな? 男やと特にそうじゃろ」
「シゲくんがまず試し?」
「そうじゃな。藍葉とどっか行くときまでに何度か試すわ。……しっかし、藍葉の発想力には脱帽じゃ」
「逆の発想ってわけじゃないけどね?」


 そこから夕飯が冷めないうちに食べ始めたが、今日も今日で美味いと成樹はきちんと料理を手放しで褒めてくれた。あと、クリスマスは今年どうするか聞かれたときに、お互いしまったと思ったことがある。

 藍葉の足の手術が十二月に入ってから、執刀医との受診が増えることが決まったのをふたりそろって忘れていたのだ。


「今年だけちゃう。俺には藍葉だけじゃ。入院中もお見舞いたくさん行くからな?」
「……うん」


 悲しいクリスマスにならないように、そこはほかの患者を気遣っての個室プランをわざわざ打ち合わせしてくれたほど。本当に、いい彼氏を持てて幸せだと思えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?

碧井 汐桜香
ファンタジー
若い娘好きの公爵は、気弱な令嬢メリシアルゼに声をかけた。 助けを求めるメリシアルゼに、救いの手は差し出されない。 母ですら、上手くやりなさいと言わんばかりに視線をおくってくる。 そこに現れた貴婦人が声をかける。 メリシアルゼの救いの声なのか、非難の声なのか。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

小さくなった夫が可愛すぎて困ります

piyo
恋愛
夫が、ある日突然、幼児の姿になってしまった。 部下の開発中の魔法薬を浴びてしまい、そのとばっちりで若返ってしまったらしい。 いつも仏頂面な夫が、なんだかとっても可愛い――。 契約結婚で、一生愛とは無縁の生活を送ると思っていたノエルだったが、姿が変わってしまった夫を、つい猫可愛がりしてしまう。 「おい、撫でまわすな!」 「良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」 これまで放置されていた妻と、不器用に愛を示す夫。 そんな二人が、じれじれ、じわじわとお互いの距離を詰めていく、甘くて切ない夫婦再生の物語 ※完結まで毎日更新 ※全26話+おまけ1話 ※一章ほのぼの、二章シリアスの二部構成です。 ※他サイトにも投稿

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

処理中です...