ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!

櫛田こころ

文字の大きさ
95 / 131

第95話 事情を詳しく

しおりを挟む
 藍葉は夢のなかにしては非常にリアルな体験をしていた。

 尻もちをつく勢いでどこかに投げ出されたような気がしたからだ。成樹との通話が終わって、普通に寝ていたはずなのに……夢のなかで、真っ暗い空間にどしんと放り込まれた。それの意味が分からない。

 また、心療科の方で診てもらっている症状が悪化したのかと思っていると。頭の上からさらに黒くなっていくのがわかる。顔を上げれば、そこにいたのは少し年上ぽい感じの可愛らしい女性だった。モデルだとふわふわ系のタイプで、親しみが持てると勝手にイメージが湧くが。

 夢のなかにしては、リアルに観察できるなと思っているとこちらに手を差し伸べてくれた。


『立てる?』
「あ、はい」


 会話も可能かと感心していると、掴んでもらった手をひっぱってもらいながら立ち上がった。自分たち以外何もないが、上の方から『ゴウンゴウン』と小さな音が遠くても聞こえてきた。なにかのアトラクションにも思えるそれは、見えない藍葉にはなにだかわからない。


『うーん。……向こうでも『起きて』いられそうね?」
「はい?」
『あいつの妹だし、能力的にも申し分ない。並行世界側のチャンネル登録もされているようだし、ここの管理は私が代理すれば』
「あの……なにの話を?」
『ん? 簡単にいうと、地球存続を叶えていくプロジェクト。君の担当決めをしているとこ』
「よく、わからないんですけど」
『そりゃぁ。君の恋人がギリギリまで打ち明けなかったのが悪いせいね。あ、私のことは『お姉ちゃん』って呼んでほしいな~?』
「お、おねえちゃん?」
『こう見えて、君のお兄ちゃんのお嫁さん候補。向こうでは』
「はぁ!?」


 夢のなかだから現実的な話を持ち込まれて、驚かないわけがない。いきなりぶち込んできた『義姉発言』に藍葉は頭の中までこんがらがってしまいそうになる。とは言っても、ここは夢、夢……と自分に言い聞かせて現実側で起きようとしたが。ぐっすりと寝ているのかで意識が浮上することはなかった。

 姉と呼べと言った女性はそれをわかってか、肩を軽く叩いてきた。


『ここは夢と現実の境目のようなもの。それと、あなたとかが頑張っている『異世界ファーム』とも隣接している空間のようなものね。世界とは言いづらいけど、一種のファンタジーな場所よ』
「あの。あたし……ただ、寝ていただけで」
『その眠りがよくないの。向こうで起きたらわかるけど、心構えくらいさせてあげる。……あちらでは、今生命維持活動できている人間が事実上誰もいない。ああ、死んではいないの。冬眠しているような感じね』
「……まさか。下の階でうちの両親が静かにしてたのも」
『そう。あなたが恋人からの連絡を受けるまで、ゆっくりしずかに……日本列島から順に地球の生命維持が眠りについた。これには訳があるの』
「……教えてください」


 成樹があんなに焦って、一時的な通話を可能にしたのもほかの理由があったかもしれない。嘘をつかれるのは嫌だったが、前に問いただした内容とは別だというくらい今の藍葉でも理解が出来た。

 この女性の言葉と、この空間に投げ込まれた理由を理解しようとすると……女性は、上へ指を向けた。


『とある人物の予言を頼りに、地球の天変地異を穏やかにする計画が成された。それは様々な並行世界とも連動し、私ともうひとりの『神』が治めるこちら側にも影響が出た。既に、あなたたちのお陰で軽くでも再生はされたの。そこはお礼を言わせてちょうだい?』
「……シゲくんたちが持ってきた、『異世界ファーム』が?」
『特に、あなたの提案が多く採用されたお陰ね? クルスとリーナは今じゃあなたと成樹みたいな感じよ?』
「……あれって。二次元のキャラメイクしただけじゃ」
『違うわ。外見を少しいじった以外は、並行世界側のあなたたちの分身に近いわね?』
「え……」
『さて。軽い説明はこの辺にして。……あなたの現実側で起きなさい。藍葉。ただし、指示だけは待つように』


 最後の言葉と同時に、水の中へ沈みこむような感覚を感じた。

 そして、意識がひゅんと起き上がる感覚と同時に体を起こしたが。暖房をつけているにしては異様に寒いとぷるぷる震えてしまう。

 ただ寝ていただけにしては、あの夢の記憶はなんだったと思いながらスマホを起動したところ……あり得ない、という羅列みたいなニュースがあちこち飛び交っていた。

 地震こそはないが、猛烈な寒波到来で交通機関全般氷結。北海道なみの雪が九州を飛び越えて沖縄や離島にも。

 閉じ込められた避難者らの意識混濁などなど。どれもこれも、夢で聞いてきた内容に酷似していた。


「……じゃあ。指示って、誰から?」


 成樹はどうしているか確認を取ろうにも、合間に通話やメッセを送ってもなにも反応がない。窓を開けようにも凍り付いた窓では外の様子も現状把握が出来なかった。階下に降りるのもなんだか怖くなってきて、寒さが増しても布団と毛布にくるまるしかなかったが。

 ひとつのメール通知が来て、成樹かとスマホに飛びついたが宛名は知らない男性の名前だ。


【クロード=如月

 いきなりで申し訳ない。熊谷から緊急時にあなたの無事をたしかめるよう伝えられていたので、ご連絡させていただきました】


 聞いたことがない。成樹の知り合いだとしたら、もう頼るしかないと思った。

 出来るだけ、詳細をこちらも伝えるのに現状といっしょに質問も合わせてゆっくりと文章を打ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので

eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」 勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。 しかし、勇者たちは気づいていなかった。 彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。 アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。 一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。 そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……? 一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。 「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」 これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

追放された地味探索者、実は隠された伝説級スキルの持ち主でした~気付いたら無自覚に最強ハーレムを築いていた件~

fuwamofu
ファンタジー
地味で目立たない探索者アレンは、仲間に「足手まとい」と罵られパーティを追放された。だが実は彼のスキル【探索眼】は、古代英雄の力を見抜く唯一の能力だった! 鉱山の奥で偶然出会った少女を救ったことから、運命が動き出す。 魔王軍、古代遺跡、神々の争い——すべての鍵を握るのは「ただの探索者」だった男。彼は気付かぬうちに、世界を救い、そして多くの少女たちの心をつかんでいく。 地味だけど最強、無自覚だけどモテまくり。これは世界を変えた謙虚な英雄の物語である。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...