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第75話 奪われる
しおりを挟む「こちらが、『蒲焼き丼』です」
クレハは接客モードになれないので……今回は私が草の長老様に料理をお出しした。
と言っても、私の分を彼に差し出しただけなんだけど。
「……うぅむ。やはり、芳しい香りだ」
草の長老様は、お気に召したのか……片目だけでも嬉しそうな表情になっていらしたわ。緊張が解けたのか、ゆるりと目尻が垂れていく。
その表情に……後ろにいるクレハの怒りがどんどん凄くなっていくんだけど!? そんなにも、この幼馴染みさんが嫌なの!?
「えっと……素手では食べにくいので、スプーン使えますか?」
「スプーン?」
「匙とも言いますか。こちらです」
長老様でも、長老おじいちゃんのように色々知っているわけでもないみたい。スインドさんが持って来てくれたスプーンの二つのうち、一つを渡し……もう一つで私は手本を見せた。
「それほど……これは柔らかいのか?」
「皆で頑張って調理しました。是非」
勧めると、草の長老様は……いただきますの手と似たような……片手を胸の前で構え、軽くお辞儀をした。テレビとかであった、時代劇のような作法にも見えたわ。
ちょっと驚いている間に……彼が器に手を添えようとしたのだが。
その器が、『消えた』のだ。
「なぬ?」
「え? クレハ?!」
「ちゃうわ!!」
スインドさん達を見ても、ふたりとも首を横に振ったし手になにも持っていない。
辺りを見渡すと……天井の方から、むしゃむしゃと咀嚼する音が聞こえてきたわ!?
「美味! 美味じゃわい!!」
子供の声?
けど……長老おじいちゃんのような、年老いた話し方?
全員で上を向くと、宙に浮いている赤毛の綺麗な子供が……器を両手で抱えて、顔を突っ込むようにして貪り食べていたわ!?
「あー!? 焔の!?」
彼女を見て、最初に声を上げたのはクレハだった。
「知り合い?」
「あれも長老や!」
「「「はぁ!?」」」
私やスインドさんとかは、驚いて当然。
あんなにも小さな子供が……長老様だなんて、普通は思えない。
けど……ここは『アヤカシ』ってモンスター達の集落だ。
ユキトさんや草の長老様のように……私とかよりは遥かに歳上でも、外見が若い長老様がいらっしゃる場所なのだ。
「く……焔の! 某の食事を!?」
「ん? ほっほ……そう言えば、他にも居ったか?」
焔の長老様が器から顔を上げると……口元は汚れていたが、なんとクレハ以上の美少女だったわ!? 妖艶……と言うのか、幼いのになんだか『妖しさ』と言うのを滲み出しているような顔立ち。
彼女は、私達に気づくと……器を落とさないようにしながら、私の前に降りてきた。
「あ、あの?」
美少女の顔が間近にあるので、変に緊張しちゃう!?
焔の長老様は……しばらく私をじーっと見つめていたわ。
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