【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ

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第77話 ヒロのトラウマ

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 扉が壊れるんじゃないかって勢いだったけど。すぐに、焔の長老様が指を向けて……パンっと音が立つと。扉がひとりでに開いたかと思えば。

 扉の向こうには……何故か地面なのに雷雲のような光景が!?


「な、なになになに!?」


 びっくりして、思わずクレハに抱きついてしまうわ!?


「……こりゃぁ」


 クレハから、ゴクっと唾を飲み込む音が聞こえた。と言うことは……クレハにとっても対処しにくい相手?


「……雷のか」


 草の長老様まで、同じようだった。けど、言葉を聞く限り……これって多分。


「……長老、様?」


 また新しい……長老様が来たってこと?

 複数居るとは聞いていたけど、何人いるわけ!?


「…………ほぉ? 話がわかるやつが居んじゃねぇか?」


 雷雲がパチパチ、バチバチ音が鳴っていくにつれ……だんだんと形が変わっていく。

 草の長老様の時のように……人型になったのだ。日本風の酒瓶を肩に担いだ、随分とだらしない服装の……けど、スインドさんとかに負けないくらいのイケメンさんに!

 髪は黄色、目は好戦的な青い瞳だった。耳は毛に覆われているけど、エルフのように尖っていたわ。


「ほっほ。雷の……やはり来おったか」


 焔の長老様はおかしそうに笑っているけど!?

 面倒なことって、この人ってことですか!?


「焔の……俺との喧嘩止めてまでここに来るたぁ、どう言うことだ?」

「ほっほ。美味なる馳走の匂いがしたからよ」

「ほぉ? ま、たしかに……いい匂いはするが」


 すんすんと鼻をひくつかせる様子は、人間じゃなくてモンスターぽいけど……私はなかなか落ち着くことが出来なかった。

 私は……雷が怖い。

 あの事故に遭った時に、まるで雷に撃たれたかのような衝撃を感じたのだ。だから……一応のリハビリに使われた、電気治療器も酷く怯えるほど拒否してしまった。

 今は美女神様のお陰で元通りになっても……植え付けられたかのような、あのトラウマについてはどうしようもない。

 まだ、雷の長老様の周りでピリピリしている雷のようなものが……怖かった。


「……ヒロ? 顔真っ青やで?」


 だから……クレハがびっくりするのも仕方がない状態になってしまうわ!


「…………あの長老殿が恐ろしいのか?」


 スインドさんに聞かれえると、左右に首を振った。そう、イケメンさんを差し引いても……雷の長老様が怖いわけではない。あくまで……『雷』が怖いだけで。


「あ? 人間?」


 その言葉が近くに聞こえたと思ったら……いつのまにか、雷の長老様が至近距離に立っていた!?

 びっくりし過ぎて……さらにクレハに抱きついてしまい、彼女が苦しいと言い出したが、離れるのは無理だった。

 間近で、あのパリッ、パリって音が聞こえるんだもん!?


「やめんか、雷の」

「そうじゃ」


 草と焔の長老様お二人が……雷の長老様の肩を掴んで、私から離そうとしていた。


「あ?」

「ネコマタのが言っておったであろう? その者はここで『店』を開く店主だ。それがしはまだ口にしておらぬが……美味を我らに振舞ってくれるヒトの子である」

「そうじゃ。かなりの美味……お主との手合わせを辞めてまで来たいと思わせる。その雷電……少し収めぃ。ヒトの子供には酷なものでしかない」

「…………ふーん?」


 お二人の説得を聞くと……聞き入れてくださったのか、雷の長老様は軽く肩を動かして……帯びていた雷を消してくれた。

 その動作を見て……私は腰が抜けたのか、床にペタンと膝をついてしまったわ。
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