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第79話 プレオープン
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色々あった、あの日から数日後。
「……………………そ、う……だったんですね」
その日に、私は雪の長老であるユキトさんにも……私の秘密を知っていただくことにしたのだ。
「秘密にしていてすみません」
「い、いえ! ……む、無理のないことです」
驚いたが、拒絶はされなかった。恥ずかしがり屋さんの彼女に、その反応をもらえただけでも私はほっとすることが出来た。
その彼女に……私は、カウンター越しにお通しを出すことにした。
そう……今日は、このお店のプレオープン日だ。カウンターも、私自身が提供しやすいようにザックさんに取り付けてもらった。
まずは……親しいアヤカシさんにと、ユキトさんをお招きしたのだ。スインドさんはクレハと今は買い出しに行ってもらっています。ザックさんは、工房のこともあるからと数日前にクレハにチルットへ送ってもらったのだ。
長老様方は……今日はまだ他に来ていない。あの日は大量に料理を召し上がっていただけることで、さらに打ち解けたけれど。特に雷と焔ご夫婦は凄かったが。
「青菜と胡麻を使った和物と言うものです」
「…………野菜、ですか?」
「食べやすいように、醤油を使って甘辛く仕立ててあります」
フォークも添えてお出しすれば、ユキトさんはあまり野菜を食べたことがないのか。何度も眺めてから……フォークを綺麗に使って口に運んでくれた。
「! …………た、食べたことのない、味です! お、美味しい……!」
「良かったです」
日本人向けの味付けだけど……こちらの人間やモンスター達にも口に合う味付けで良かった。今日の朝ご飯に、クレハ達にも出したけど……彼らにも美味しいって言ってもらえたが、やっぱり身近な人達とで反応は違うもの。
「…………こ、こんな美味しいのが。お、お金の範囲……外です、か?」
「はい。サービスと言う手法です」
色々諸説あるが、わざわざ席料をもらう意味はこの世界の場合必要がない。お酒を朝から飲むことは悪いことじゃないけど……ユキトさんは酒豪らしいから、既に用意はしてあります。
仕込みはあるので、あとは料理を選んでもらうだけだけど。
「……ひ、ヒトの……お店、は、初めて……ですけど。すごいんです、ね?」
「ふふ。ありがとうございます。あ、こちらがメニューなんですが」
小料理屋だけど、簡単なメニューはザックさんが帰る前に仕上げて……昨日やっと、スインドさん達と協力して出来上がったのだ。
と言っても、ザックさんが可愛く書いてくれた項目に……簡単な説明文があるだけだけど。
「……肉……魚……野菜、ですか?」
「字が読めないモンスターが多いでしょうからと、項目を選んでもらって。あとは好き嫌いを聞いてから、私のお任せで調理させていただきます」
レパートリーは、和食以外に洋食もちょいちょい出す予定ではある。居酒屋に近い部分もあるだろうが……師匠達が手がけていたように、お客様から新しい料理に繋がるヒントをもらえたりする。
なので、この方法を使うことにしたのだ。
「……ま、迷い……ますが。その…………お、お肉……で」
「でしたら。ユキトさんに是非召し上がっていただきたい肉料理があります」
「わ、私……にですか?」
「少々お待ちを」
すぐ後ろの鍋から、私はお玉で適量……中身を器に盛り付けて、ユキトさんに差し出した。
どこからどう見ても、亀のぶつ切り肉のスープにしか見えない……奇天烈な料理をだ。
「……………………そ、う……だったんですね」
その日に、私は雪の長老であるユキトさんにも……私の秘密を知っていただくことにしたのだ。
「秘密にしていてすみません」
「い、いえ! ……む、無理のないことです」
驚いたが、拒絶はされなかった。恥ずかしがり屋さんの彼女に、その反応をもらえただけでも私はほっとすることが出来た。
その彼女に……私は、カウンター越しにお通しを出すことにした。
そう……今日は、このお店のプレオープン日だ。カウンターも、私自身が提供しやすいようにザックさんに取り付けてもらった。
まずは……親しいアヤカシさんにと、ユキトさんをお招きしたのだ。スインドさんはクレハと今は買い出しに行ってもらっています。ザックさんは、工房のこともあるからと数日前にクレハにチルットへ送ってもらったのだ。
長老様方は……今日はまだ他に来ていない。あの日は大量に料理を召し上がっていただけることで、さらに打ち解けたけれど。特に雷と焔ご夫婦は凄かったが。
「青菜と胡麻を使った和物と言うものです」
「…………野菜、ですか?」
「食べやすいように、醤油を使って甘辛く仕立ててあります」
フォークも添えてお出しすれば、ユキトさんはあまり野菜を食べたことがないのか。何度も眺めてから……フォークを綺麗に使って口に運んでくれた。
「! …………た、食べたことのない、味です! お、美味しい……!」
「良かったです」
日本人向けの味付けだけど……こちらの人間やモンスター達にも口に合う味付けで良かった。今日の朝ご飯に、クレハ達にも出したけど……彼らにも美味しいって言ってもらえたが、やっぱり身近な人達とで反応は違うもの。
「…………こ、こんな美味しいのが。お、お金の範囲……外です、か?」
「はい。サービスと言う手法です」
色々諸説あるが、わざわざ席料をもらう意味はこの世界の場合必要がない。お酒を朝から飲むことは悪いことじゃないけど……ユキトさんは酒豪らしいから、既に用意はしてあります。
仕込みはあるので、あとは料理を選んでもらうだけだけど。
「……ひ、ヒトの……お店、は、初めて……ですけど。すごいんです、ね?」
「ふふ。ありがとうございます。あ、こちらがメニューなんですが」
小料理屋だけど、簡単なメニューはザックさんが帰る前に仕上げて……昨日やっと、スインドさん達と協力して出来上がったのだ。
と言っても、ザックさんが可愛く書いてくれた項目に……簡単な説明文があるだけだけど。
「……肉……魚……野菜、ですか?」
「字が読めないモンスターが多いでしょうからと、項目を選んでもらって。あとは好き嫌いを聞いてから、私のお任せで調理させていただきます」
レパートリーは、和食以外に洋食もちょいちょい出す予定ではある。居酒屋に近い部分もあるだろうが……師匠達が手がけていたように、お客様から新しい料理に繋がるヒントをもらえたりする。
なので、この方法を使うことにしたのだ。
「……ま、迷い……ますが。その…………お、お肉……で」
「でしたら。ユキトさんに是非召し上がっていただきたい肉料理があります」
「わ、私……にですか?」
「少々お待ちを」
すぐ後ろの鍋から、私はお玉で適量……中身を器に盛り付けて、ユキトさんに差し出した。
どこからどう見ても、亀のぶつ切り肉のスープにしか見えない……奇天烈な料理をだ。
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