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吸血鬼
第2話 河童の診療所
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たまたま、仕事の関係で大須商店街に美兎が来ていたところ。
電気街の通りに面するところで、コスプレの男性だと思う人間がいきなり壁にもたれかかったのだ。
いきなり体調が悪くなったのか、美兎が通り過ぎる直前に起きた為に。無視出来るわけがない、とすぐに駆け寄って声をかけてみた。
「大丈夫ですか!?」
意味がないと思われるワードかもしれないが、言わずにはいられない。
肩を軽く揺すっても、吐く気配はないが顔色は真っ青だった。コスプレでメイクをしていてもわかるくらい。だが、この男性を抱えて近くの病院に行くだなんて、非力な美兎では無理だ。
救急車を呼ぼうかと頭をよぎったが、肩を誰かに叩かれたので振り返れば。
「落ち着きなよ、美兎」
「真穂ちゃん!」
影から出てきたのか。
大通りなのに、人間に見られたんじゃ……と思ったら、通りは同じなのに自分達以外に誰もいなかった。何が起こったのかわからずキョロキョロしていると、真穂に軽く頭を小突かれた。
「落ち着きなよ。真穂が結界張ったから、そいつごと取り込んだだけ」
「けっかい?」
「魔法みたいなのは、あやかしも使えるのよ。で、そいつ吸血鬼だけど……熱中症のようね?」
「……人間じゃないの?」
「そーよ?」
もう一度見ても、特にあやかしのように見えない。もしくは、真穂のように人間に擬態しているかもしれないが。真穂は今、美兎と変わらない身長と容姿でいる。吸血鬼らしい男性に近づくと、額と口元に手を当てた。
「……大丈夫そう?」
あやかしが病気になるのは知らないので、美兎は黙ってみているくらいしか出来なかった。
「ま。軽い熱中症だと思うわよ? この炎天下なのに、こんな厚着するこいつも自業自得なとこがあるけど」
「……けど。まだ辛そうだし、妖怪さんとかのクリニックとかってあるの?」
「あるわよ? 界隈を渡って、錦の方に行くわよ?」
「どうやって?」
「それは……」
真穂が建物と建物の狭い隙間の前に立つ。
美兎は吸血鬼の男性の様子を見つつもそちらを見ると、真穂は隙間に手を向けて、すぐに横にスライドするように動かした。
タン
タン
タタン!
と言う音と同時に、狭い隙間に障子みたいな扉が何枚も出てきた。
「わぁーお?」
「今ここに、錦との境界を繋げたわ。二人でそいつ抱えて行くわよ?」
「うん!」
美兎達よりも長身で両脇を抱えても歩き難かったが、人命救助が先だ。上司に連絡を入れるのは後にして、真穂とその扉の前に立つと自動扉のようにスライドして開くので助かった。
五回くらい扉を通過したところで、景色が変わり。見覚えのある錦三の界隈に到着したのがわかった。
扉の方は、美兎達が通り過ぎると自動的に消えてしまったので、一回限定の魔法らしい。
「さて、診療所には連絡入れて」
真穂が自分のスマホを高速タップでメールか何かを打ち、即送信した。
そうして、数分も経たないうちに、河童のような小さいあやかし二人組が担架を担いでやってきた。
「へい、真穂様!」
「お呼びで!」
「こいつが多分熱中症なのよ。先に運んで?」
「へい! お任せを!」
河童の片方は小さくとも力持ちなのか、吸血鬼を軽々と背負い。もうひとりが担架を広げたところにゆっくりと寝かせた。
準備が整ったら、出来るだけ揺らさないようにゆっくりと歩き出す。美兎達も彼らに続いて横を歩いた。
「お医者さんって、この近くなの?」
「まあね? 見ての通り河童だけど、河童は医療の心得があるのよ。下手な藪医者に見せるよりよっぽどいいわ」
ほら、と真穂が指を向けたところには、と言うか。
楽庵 の上に『水端診療所』と言うの看板があったのだ。週一か二程度通っていたのに上の看板だなんて全然見ていなかったな、と反省。
一階の楽庵には電気も何も点いていなかったので、火坑はいないのかもしれない。少し残念に思ったが、仕方がないので河童達の後について行く。
こじんまりしたエレベーターに乗るのは初めてだったが、意外と中は広くて四人以上乗っても平気だった。診療所のために改造したエレベーターだそうだ。
診療所は二階で、到着すると入り口らしい扉の前でこれまた担架役の河童並みに小さな河童が白衣姿で待っていた。
「真穂様、患者の容体は熱中症で?」
声も可愛らしいが、はしゃいでいる場合ではないので美兎は黙っておくことにした。
「ええ。大須で真穂が守護に憑いているこの子が見つけたの。治療費は受け持つから、しっかり診てやって?」
「わかりました。じゃ、中へ運んで」
『へい!』
運ばれて行く吸血鬼はまだ起きないので心配だったが、真穂に会社に連絡しなさいと言われたので慌てて上司に連絡を入れた。
真穂も口裏合わせのために電話に出てくれたので、上司からは午後の半休処理にするから心配するなと言われた。なので、美兎は吸血鬼の様子と河童の医者に事情説明をするのに、中に入ることになった。
電気街の通りに面するところで、コスプレの男性だと思う人間がいきなり壁にもたれかかったのだ。
いきなり体調が悪くなったのか、美兎が通り過ぎる直前に起きた為に。無視出来るわけがない、とすぐに駆け寄って声をかけてみた。
「大丈夫ですか!?」
意味がないと思われるワードかもしれないが、言わずにはいられない。
肩を軽く揺すっても、吐く気配はないが顔色は真っ青だった。コスプレでメイクをしていてもわかるくらい。だが、この男性を抱えて近くの病院に行くだなんて、非力な美兎では無理だ。
救急車を呼ぼうかと頭をよぎったが、肩を誰かに叩かれたので振り返れば。
「落ち着きなよ、美兎」
「真穂ちゃん!」
影から出てきたのか。
大通りなのに、人間に見られたんじゃ……と思ったら、通りは同じなのに自分達以外に誰もいなかった。何が起こったのかわからずキョロキョロしていると、真穂に軽く頭を小突かれた。
「落ち着きなよ。真穂が結界張ったから、そいつごと取り込んだだけ」
「けっかい?」
「魔法みたいなのは、あやかしも使えるのよ。で、そいつ吸血鬼だけど……熱中症のようね?」
「……人間じゃないの?」
「そーよ?」
もう一度見ても、特にあやかしのように見えない。もしくは、真穂のように人間に擬態しているかもしれないが。真穂は今、美兎と変わらない身長と容姿でいる。吸血鬼らしい男性に近づくと、額と口元に手を当てた。
「……大丈夫そう?」
あやかしが病気になるのは知らないので、美兎は黙ってみているくらいしか出来なかった。
「ま。軽い熱中症だと思うわよ? この炎天下なのに、こんな厚着するこいつも自業自得なとこがあるけど」
「……けど。まだ辛そうだし、妖怪さんとかのクリニックとかってあるの?」
「あるわよ? 界隈を渡って、錦の方に行くわよ?」
「どうやって?」
「それは……」
真穂が建物と建物の狭い隙間の前に立つ。
美兎は吸血鬼の男性の様子を見つつもそちらを見ると、真穂は隙間に手を向けて、すぐに横にスライドするように動かした。
タン
タン
タタン!
と言う音と同時に、狭い隙間に障子みたいな扉が何枚も出てきた。
「わぁーお?」
「今ここに、錦との境界を繋げたわ。二人でそいつ抱えて行くわよ?」
「うん!」
美兎達よりも長身で両脇を抱えても歩き難かったが、人命救助が先だ。上司に連絡を入れるのは後にして、真穂とその扉の前に立つと自動扉のようにスライドして開くので助かった。
五回くらい扉を通過したところで、景色が変わり。見覚えのある錦三の界隈に到着したのがわかった。
扉の方は、美兎達が通り過ぎると自動的に消えてしまったので、一回限定の魔法らしい。
「さて、診療所には連絡入れて」
真穂が自分のスマホを高速タップでメールか何かを打ち、即送信した。
そうして、数分も経たないうちに、河童のような小さいあやかし二人組が担架を担いでやってきた。
「へい、真穂様!」
「お呼びで!」
「こいつが多分熱中症なのよ。先に運んで?」
「へい! お任せを!」
河童の片方は小さくとも力持ちなのか、吸血鬼を軽々と背負い。もうひとりが担架を広げたところにゆっくりと寝かせた。
準備が整ったら、出来るだけ揺らさないようにゆっくりと歩き出す。美兎達も彼らに続いて横を歩いた。
「お医者さんって、この近くなの?」
「まあね? 見ての通り河童だけど、河童は医療の心得があるのよ。下手な藪医者に見せるよりよっぽどいいわ」
ほら、と真穂が指を向けたところには、と言うか。
楽庵 の上に『水端診療所』と言うの看板があったのだ。週一か二程度通っていたのに上の看板だなんて全然見ていなかったな、と反省。
一階の楽庵には電気も何も点いていなかったので、火坑はいないのかもしれない。少し残念に思ったが、仕方がないので河童達の後について行く。
こじんまりしたエレベーターに乗るのは初めてだったが、意外と中は広くて四人以上乗っても平気だった。診療所のために改造したエレベーターだそうだ。
診療所は二階で、到着すると入り口らしい扉の前でこれまた担架役の河童並みに小さな河童が白衣姿で待っていた。
「真穂様、患者の容体は熱中症で?」
声も可愛らしいが、はしゃいでいる場合ではないので美兎は黙っておくことにした。
「ええ。大須で真穂が守護に憑いているこの子が見つけたの。治療費は受け持つから、しっかり診てやって?」
「わかりました。じゃ、中へ運んで」
『へい!』
運ばれて行く吸血鬼はまだ起きないので心配だったが、真穂に会社に連絡しなさいと言われたので慌てて上司に連絡を入れた。
真穂も口裏合わせのために電話に出てくれたので、上司からは午後の半休処理にするから心配するなと言われた。なので、美兎は吸血鬼の様子と河童の医者に事情説明をするのに、中に入ることになった。
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