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吸血鬼
第3話 点滴は怖い
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診察結果は、やはり真穂の推察通りの『熱中症』であった。
可愛い河童の医者は、水藻と言うそうで。彼の診察でも熱中症とわかったため、吸血鬼は水分補給なども兼ねて点滴で様子見することになり。
美兎は持っていたハンカチで、寝台に横になっている吸血鬼の額の汗などを拭いてやった。ファンデーションなどをつけているのか、すぐに白く汚れた。
「ふーん? フィールド家の奴よねぇ?」
美兎の隣に椅子を持ってきた真穂が、面白そうなものを見る感じに吸血鬼の顔を覗いた。
「外人さん?」
「そうね? けど、こいつはたしか日本育ちだったはずよ」
「へー……?」
目はつむっているので何色かはわからないが。
顔以外の肌は白人並みに白く、髪は綺麗なブロンドだ。顔の彫りも深く、首が細い。最初は同じくらいの年頃かと思ったが、あやかしなので正確な年齢はわからないだろう。
とにかく、美形だと言うのは十分にわかったが。
「フィールド家の坊ちゃんですか。引きこもりだと噂では聞いてたんですが」
水藻はカルテを書きながらも、点滴の用意をしていた。看護士はいないようで、担架役の河童達は別で動いているみたいだった。
彼が美兎に一言断ってから、吸血鬼の上着を脱がせてシャツの袖をまくった。抜けるような白い肌にこれから点滴を打つのだと思うと、何故か美兎が緊張してしまう。
「……ん?」
水藻が針を向けた時、吸血鬼が目を覚ましたようでまぶたがピクピクと動き出した。ぱちっと開くと、綺麗なエメラルドグリーンの瞳とご対面。
えっ、と言う感じに目が丸くなり、美兎と目が合った途端。目尻が紅く染まり出して、吸血鬼は口をあわあわと動かした。
「え、え、え!?」
「はい。起きたようだけど、点滴しますよー?」
「え、点滴??」
「あなた、大須で熱中症になりかけたんですよ? こちらのお嬢さん方が連れて来てくださったんです」
「……え?」
「はい、射します」
「い゛!?」
問答無用で水藻は的確に吸血鬼の腕に針をさして、痛がっている彼を他所に、点滴のパックの準備などをしてから今度は彼に薬のようなものを飲ませたが。
「塩飴なので、ゆっくり舐めていてください」
「……ふぁい」
「フィールド家の坊ちゃんらしいですね? ご自宅に連絡しましょうか?」
「……いえ。今は、ひとり暮らし……あ、あ、バイト!?」
「バイトされているんですか? 界隈でです? それとも人間界で?」
「人間界で…………あの、マニメイト……ってとこで」
「ああ、なるほど。連絡しますよ、僕もあそこ常連なので。……登録名は?」
「……ジェイク、です。ジェイク=フィールドで」
「わかりました。連絡して来ますね?」
と、水藻はテキパキと問診し終えたら奥の方に行ってしまった。
美兎や真穂が側にいるので、ジェイクと言う吸血鬼はまだ落ち着かずに目を動かしながら口の中の塩飴を舐めていた。
「……ほんと。あんた運良かったわよ?」
真穂が一番に口を開くと、大きくため息を吐いた。
「美兎……この子が近く通んなきゃ、あんた人間の病院送りになるとこだったわよ?」
「あ……ありがとう、ございました」
「あの……気分悪くないです? 吐き気とかは?」
「だ……だだ、大丈夫……です。…………ここは?」
「錦の界隈。真穂が馴染みあるし、この子もよく来るから大須じゃなくてこっちの診療所に連れて来たの」
「…………真穂様のお手をわずらわせてしまって、すみま……せん」
「謝罪はいいから」
「……美兎、さん。ありがとうございました」
「いいえ。気がついて良かったです」
少し声がどもっているが、普通に日本語で話せているようで良かった。もし日本語じゃなかったら、英語がほとんど出来ない美兎にはお手上げだからだ。
マニメイトについては、美兎は行ったことがないのでわからないがコスプレをしている彼の様子から、アニメオタク関連の店なのだとは予想が出来た。
アニメはあまり見ないが、漫画は普通に読むし、オタクを敬遠したりはしない。デザイナー部分で言えば、美兎もそちら寄りのオタクだから。
「こんなあっつい炎天下で、その格好はミスチョイスよ? もうちょっと、薄手の生地にするとかにしなさい?」
「……そう、ですね。……リアルに近づけようとして……この生地にしたので」
「え、その服。フィールドさんのお手製なんですか?」
「は……はい」
思わず美兎が拍手すると、ジェイクの顔がさらに紅くなって行く。何か変な事を言ったかと首を傾げたら、水藻が戻ってきた。
「はい。店長さんと連絡取れましたよ。僕が連絡したからかすぐに了解してくれました。人間界用の診断書はきちんと出しますので、明後日くらいには歩いても大丈夫です」
これだけ質問の受け答えが出来ているので、と水藻は残りのパックの量を見てからジェイクの体を触診して行く。
「……あの。店長、はなんと?」
「結構心配されていましたよ? 僕は中古品とゲームコーナーしか行かないのでフィールドさんのことは存じていませんでしたが。なかなか来ないので事故にでもあったんじゃないかとも。けど、うちで診ていることをお伝えしたら、よろしくお願いしますと言われました」
「……あ、ありがとうございます」
「いえいえ。落ち着いたのなら何より。名古屋の暑さは舐めてはいけませんよ? そのコスプレは冬の方が良いです。夏場は夏らしい装いの方が良いですね?」
では、あと二時間程ゆっくりしてください。
水藻はそう言うと、何か仕事があるのかまた奥の方に行ってしまった。
「ゆっくり休んでください。あ、話したいですか?」
「あ……い、いえ。少し……寝ます」
ジェイクもそう言うと、すぐに寝息を立てて寝てしまった。気を失うくらいに体力を消耗したので、回復するのには時間がかかる。
なら、起きたらお腹が空くかもしれない。今はちょうど十五時過ぎ。
まだ火坑は仕込みか何かをしているかもしれないが、何か持ち帰りの料理を作ってもらおうと美兎は思い立った。
真穂に言うと、いいのではと言ってくれたので……水藻に一言告げてから下の階に降りることにした。
可愛い河童の医者は、水藻と言うそうで。彼の診察でも熱中症とわかったため、吸血鬼は水分補給なども兼ねて点滴で様子見することになり。
美兎は持っていたハンカチで、寝台に横になっている吸血鬼の額の汗などを拭いてやった。ファンデーションなどをつけているのか、すぐに白く汚れた。
「ふーん? フィールド家の奴よねぇ?」
美兎の隣に椅子を持ってきた真穂が、面白そうなものを見る感じに吸血鬼の顔を覗いた。
「外人さん?」
「そうね? けど、こいつはたしか日本育ちだったはずよ」
「へー……?」
目はつむっているので何色かはわからないが。
顔以外の肌は白人並みに白く、髪は綺麗なブロンドだ。顔の彫りも深く、首が細い。最初は同じくらいの年頃かと思ったが、あやかしなので正確な年齢はわからないだろう。
とにかく、美形だと言うのは十分にわかったが。
「フィールド家の坊ちゃんですか。引きこもりだと噂では聞いてたんですが」
水藻はカルテを書きながらも、点滴の用意をしていた。看護士はいないようで、担架役の河童達は別で動いているみたいだった。
彼が美兎に一言断ってから、吸血鬼の上着を脱がせてシャツの袖をまくった。抜けるような白い肌にこれから点滴を打つのだと思うと、何故か美兎が緊張してしまう。
「……ん?」
水藻が針を向けた時、吸血鬼が目を覚ましたようでまぶたがピクピクと動き出した。ぱちっと開くと、綺麗なエメラルドグリーンの瞳とご対面。
えっ、と言う感じに目が丸くなり、美兎と目が合った途端。目尻が紅く染まり出して、吸血鬼は口をあわあわと動かした。
「え、え、え!?」
「はい。起きたようだけど、点滴しますよー?」
「え、点滴??」
「あなた、大須で熱中症になりかけたんですよ? こちらのお嬢さん方が連れて来てくださったんです」
「……え?」
「はい、射します」
「い゛!?」
問答無用で水藻は的確に吸血鬼の腕に針をさして、痛がっている彼を他所に、点滴のパックの準備などをしてから今度は彼に薬のようなものを飲ませたが。
「塩飴なので、ゆっくり舐めていてください」
「……ふぁい」
「フィールド家の坊ちゃんらしいですね? ご自宅に連絡しましょうか?」
「……いえ。今は、ひとり暮らし……あ、あ、バイト!?」
「バイトされているんですか? 界隈でです? それとも人間界で?」
「人間界で…………あの、マニメイト……ってとこで」
「ああ、なるほど。連絡しますよ、僕もあそこ常連なので。……登録名は?」
「……ジェイク、です。ジェイク=フィールドで」
「わかりました。連絡して来ますね?」
と、水藻はテキパキと問診し終えたら奥の方に行ってしまった。
美兎や真穂が側にいるので、ジェイクと言う吸血鬼はまだ落ち着かずに目を動かしながら口の中の塩飴を舐めていた。
「……ほんと。あんた運良かったわよ?」
真穂が一番に口を開くと、大きくため息を吐いた。
「美兎……この子が近く通んなきゃ、あんた人間の病院送りになるとこだったわよ?」
「あ……ありがとう、ございました」
「あの……気分悪くないです? 吐き気とかは?」
「だ……だだ、大丈夫……です。…………ここは?」
「錦の界隈。真穂が馴染みあるし、この子もよく来るから大須じゃなくてこっちの診療所に連れて来たの」
「…………真穂様のお手をわずらわせてしまって、すみま……せん」
「謝罪はいいから」
「……美兎、さん。ありがとうございました」
「いいえ。気がついて良かったです」
少し声がどもっているが、普通に日本語で話せているようで良かった。もし日本語じゃなかったら、英語がほとんど出来ない美兎にはお手上げだからだ。
マニメイトについては、美兎は行ったことがないのでわからないがコスプレをしている彼の様子から、アニメオタク関連の店なのだとは予想が出来た。
アニメはあまり見ないが、漫画は普通に読むし、オタクを敬遠したりはしない。デザイナー部分で言えば、美兎もそちら寄りのオタクだから。
「こんなあっつい炎天下で、その格好はミスチョイスよ? もうちょっと、薄手の生地にするとかにしなさい?」
「……そう、ですね。……リアルに近づけようとして……この生地にしたので」
「え、その服。フィールドさんのお手製なんですか?」
「は……はい」
思わず美兎が拍手すると、ジェイクの顔がさらに紅くなって行く。何か変な事を言ったかと首を傾げたら、水藻が戻ってきた。
「はい。店長さんと連絡取れましたよ。僕が連絡したからかすぐに了解してくれました。人間界用の診断書はきちんと出しますので、明後日くらいには歩いても大丈夫です」
これだけ質問の受け答えが出来ているので、と水藻は残りのパックの量を見てからジェイクの体を触診して行く。
「……あの。店長、はなんと?」
「結構心配されていましたよ? 僕は中古品とゲームコーナーしか行かないのでフィールドさんのことは存じていませんでしたが。なかなか来ないので事故にでもあったんじゃないかとも。けど、うちで診ていることをお伝えしたら、よろしくお願いしますと言われました」
「……あ、ありがとうございます」
「いえいえ。落ち着いたのなら何より。名古屋の暑さは舐めてはいけませんよ? そのコスプレは冬の方が良いです。夏場は夏らしい装いの方が良いですね?」
では、あと二時間程ゆっくりしてください。
水藻はそう言うと、何か仕事があるのかまた奥の方に行ってしまった。
「ゆっくり休んでください。あ、話したいですか?」
「あ……い、いえ。少し……寝ます」
ジェイクもそう言うと、すぐに寝息を立てて寝てしまった。気を失うくらいに体力を消耗したので、回復するのには時間がかかる。
なら、起きたらお腹が空くかもしれない。今はちょうど十五時過ぎ。
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