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雨女
第3話 心の欠片『穴子天ぷらの料理』
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あやかしの子供。
火坑から灯矢と言う名前が分かり、美兎の隣の席に子供椅子で腰掛けている。
外見は、八歳くらいの男の子。人間でない証として、目が人間とは違うのだ。白い部分が真っ黒で、瞳は薄い水色。肌も異様に白い。
あやかしの年齢としては何歳かはわからないが、可愛らしい年頃なので、美兎はついつい頭を撫でてしまう。髪は座敷童子の真穂に似た黒色で毛質も艶やかだった。
撫でられるのは嫌じゃないのか、灯矢は気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。猫ではないのに、少し猫っぽい雰囲気だ。
「灯矢君、何歳?」
「僕? んー……十八歳」
「え、見えない!」
「あやかしだから、成長速度は遅いのよ。つか、あんた人間からの転身でしょ?」
「え、人間?」
「うん。お母さんに会ってから、よーかいになったよ?」
「へ、へー……」
人間からあやかしに変わることが出来るとは。
なら、もし美兎もそうなれば火坑と……と言うところで考えてやめた。人間を出来ればやめたくないし、火坑とは店主と客の関係だ。嫌われたくないし、気持ちを伝えるのも迷惑だろうから言うつもりもない。
けれど、灯矢の場合はどのようにしてあやかしになったのか気にはなった。
じっと灯矢を見ても、それは伝わらないから言うのをやめようとした時。
「どーやって、あんたは雨女の息子になったの?」
「真穂ちゃん!?」
美兎が諦めようとしていた時に、真穂が先に聞き出そうとしていた。慌てて止めようにも、美兎も知りたいので本気で止めようとしていない。
「僕がよーかいになったの?」
「そうそう。手順がなきゃ、そこまで完璧になれないわよ?」
「んー……あんまり覚えてないけど、血の入ったお酒? を飲んだんだと思う」
「血の巡り……ね? けど、あんたは雨男じゃないわね?」
「うん。僕晴れ男」
「……それ妖怪さんなの?」
「れっきとしたね? 直系じゃない血の繋がりがないんじゃ、同じあやかしになれるとかは限らないのよ」
「そーなの?」
「僕もわかんない」
美兎はあやかし業界の知識についてはさっぱりなので、真穂の話に相槌を打つしか出来ない。灯矢の方も似た感じでいた。
人間のままだと高校生か大学生の年齢でも、こちらの世界で生きているからか精神年齢も幼い。
それでいいのなら、と思うが美兎が付け込む意味がない。
「さ。出来ましたよ? 灯矢君には以前も召し上がっていただいた、穴子天重です」
灯矢の心の欠片から作った、巨大穴子の天ぷらで丼。
しかし、重箱に収められたそれはとても美味しそうだった。揚げたての天ぷらは大きく、箸で持つとカリカリが伝わってきそうな。……タレも濃い茶色が輝いているようで、きっと甘辛くて美味しいのだろう。
真穂も一緒に、食べたいと顔に出ていたのか火坑は小皿に穴子天ぷらの寿司のようなものを、こちらに差し出してきた。
「穴子は鮮度が落ちてしまうのが早いので、お裾分けです」
「わあ!?」
「あら、換金する分には足りてるのね?」
「換金?」
「心の欠片が、あやかしの間では価値のあるもんなのは知っているでしょ?」
「うん」
説明はするが、早く食べようと出来立てのお寿司をいただくことにした。
灯矢の方は、既に食べ始めている。余程美味しいのか、口元をタレでベトベトにしていた。
美兎がおしぼりで拭いてやってから、美兎もお寿司を食べるのに手を合わせた。
「!?」
天ぷらの部分は、衣が想像以上にサクサクしていて……しかもクリスピーのような軽い食感だった。てっぺんに軽く塗られたタレは甘辛く、けれどしつこくなくて。言い方は悪いだろうが、回転寿司と比べようがないくらい穴子の部分もふわふわとしていて美味しかった。
シャリは酢飯ではなかったが、酢飯ではなくとも軽く握られた米だけでも十分。欲を言うともっとこの寿司を食べたかったが、灯矢から取り出したものをとやかく言えない。
それと、真穂の説明の続きも聞きたかった。
真穂も平らげた後に、ぺろっと唇を舐めている様が少し妖しく見えた。
「心の欠片は主に人間……あと、人間だったあやかし。それに神々から取り出せる魂の一部であり、霊力の片鱗とも言われているの。灯矢から出せたのは元人間だったからよ」
「うんうん」
「で、各界隈の何処にでも、欠片の一部を持ち寄って換金する所があるの。美兎のもだけど、晴れ男になった灯矢のもなかなかよ? 人間の貨幣価値で言うなら……今日の灯矢のだけでも五万はくだらないと思うわ」
「ご、五万!?」
「……………………高いの?」
「まだ雨女からは、勉強教わってないの?」
「……うん。学校もまだだから」
あの大きな穴子一匹で高級料理店の金額が余裕で払えるとは。美兎のも気になり、火坑に頼んで今日の支払い分の欠片を取り出すことにした。
ガラララ!
と言う時に、引き戸が開く音が聞こえてきたのだった。
「灯矢!?」
鈴の音のような、綺麗な女性の声。
灯矢の名前を強く呼んだので、全員でそちらを見れば……灯矢のように白目が黒で金色の瞳を持つ着物姿の、綺麗な女性が息を切らしていた。その後ろには見覚えのあるピンクの小さな影が。
「あ……灯里ぃ。は……早!?」
「あ……ああ、すみません。宝来さん」
「お前さんの気持ちもわかるが、ここに居たんだし落ち着け」
「……はい」
どちらが歳上かは知らないが、まるで子供のようにあやされていた。
火坑から灯矢と言う名前が分かり、美兎の隣の席に子供椅子で腰掛けている。
外見は、八歳くらいの男の子。人間でない証として、目が人間とは違うのだ。白い部分が真っ黒で、瞳は薄い水色。肌も異様に白い。
あやかしの年齢としては何歳かはわからないが、可愛らしい年頃なので、美兎はついつい頭を撫でてしまう。髪は座敷童子の真穂に似た黒色で毛質も艶やかだった。
撫でられるのは嫌じゃないのか、灯矢は気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。猫ではないのに、少し猫っぽい雰囲気だ。
「灯矢君、何歳?」
「僕? んー……十八歳」
「え、見えない!」
「あやかしだから、成長速度は遅いのよ。つか、あんた人間からの転身でしょ?」
「え、人間?」
「うん。お母さんに会ってから、よーかいになったよ?」
「へ、へー……」
人間からあやかしに変わることが出来るとは。
なら、もし美兎もそうなれば火坑と……と言うところで考えてやめた。人間を出来ればやめたくないし、火坑とは店主と客の関係だ。嫌われたくないし、気持ちを伝えるのも迷惑だろうから言うつもりもない。
けれど、灯矢の場合はどのようにしてあやかしになったのか気にはなった。
じっと灯矢を見ても、それは伝わらないから言うのをやめようとした時。
「どーやって、あんたは雨女の息子になったの?」
「真穂ちゃん!?」
美兎が諦めようとしていた時に、真穂が先に聞き出そうとしていた。慌てて止めようにも、美兎も知りたいので本気で止めようとしていない。
「僕がよーかいになったの?」
「そうそう。手順がなきゃ、そこまで完璧になれないわよ?」
「んー……あんまり覚えてないけど、血の入ったお酒? を飲んだんだと思う」
「血の巡り……ね? けど、あんたは雨男じゃないわね?」
「うん。僕晴れ男」
「……それ妖怪さんなの?」
「れっきとしたね? 直系じゃない血の繋がりがないんじゃ、同じあやかしになれるとかは限らないのよ」
「そーなの?」
「僕もわかんない」
美兎はあやかし業界の知識についてはさっぱりなので、真穂の話に相槌を打つしか出来ない。灯矢の方も似た感じでいた。
人間のままだと高校生か大学生の年齢でも、こちらの世界で生きているからか精神年齢も幼い。
それでいいのなら、と思うが美兎が付け込む意味がない。
「さ。出来ましたよ? 灯矢君には以前も召し上がっていただいた、穴子天重です」
灯矢の心の欠片から作った、巨大穴子の天ぷらで丼。
しかし、重箱に収められたそれはとても美味しそうだった。揚げたての天ぷらは大きく、箸で持つとカリカリが伝わってきそうな。……タレも濃い茶色が輝いているようで、きっと甘辛くて美味しいのだろう。
真穂も一緒に、食べたいと顔に出ていたのか火坑は小皿に穴子天ぷらの寿司のようなものを、こちらに差し出してきた。
「穴子は鮮度が落ちてしまうのが早いので、お裾分けです」
「わあ!?」
「あら、換金する分には足りてるのね?」
「換金?」
「心の欠片が、あやかしの間では価値のあるもんなのは知っているでしょ?」
「うん」
説明はするが、早く食べようと出来立てのお寿司をいただくことにした。
灯矢の方は、既に食べ始めている。余程美味しいのか、口元をタレでベトベトにしていた。
美兎がおしぼりで拭いてやってから、美兎もお寿司を食べるのに手を合わせた。
「!?」
天ぷらの部分は、衣が想像以上にサクサクしていて……しかもクリスピーのような軽い食感だった。てっぺんに軽く塗られたタレは甘辛く、けれどしつこくなくて。言い方は悪いだろうが、回転寿司と比べようがないくらい穴子の部分もふわふわとしていて美味しかった。
シャリは酢飯ではなかったが、酢飯ではなくとも軽く握られた米だけでも十分。欲を言うともっとこの寿司を食べたかったが、灯矢から取り出したものをとやかく言えない。
それと、真穂の説明の続きも聞きたかった。
真穂も平らげた後に、ぺろっと唇を舐めている様が少し妖しく見えた。
「心の欠片は主に人間……あと、人間だったあやかし。それに神々から取り出せる魂の一部であり、霊力の片鱗とも言われているの。灯矢から出せたのは元人間だったからよ」
「うんうん」
「で、各界隈の何処にでも、欠片の一部を持ち寄って換金する所があるの。美兎のもだけど、晴れ男になった灯矢のもなかなかよ? 人間の貨幣価値で言うなら……今日の灯矢のだけでも五万はくだらないと思うわ」
「ご、五万!?」
「……………………高いの?」
「まだ雨女からは、勉強教わってないの?」
「……うん。学校もまだだから」
あの大きな穴子一匹で高級料理店の金額が余裕で払えるとは。美兎のも気になり、火坑に頼んで今日の支払い分の欠片を取り出すことにした。
ガラララ!
と言う時に、引き戸が開く音が聞こえてきたのだった。
「灯矢!?」
鈴の音のような、綺麗な女性の声。
灯矢の名前を強く呼んだので、全員でそちらを見れば……灯矢のように白目が黒で金色の瞳を持つ着物姿の、綺麗な女性が息を切らしていた。その後ろには見覚えのあるピンクの小さな影が。
「あ……灯里ぃ。は……早!?」
「あ……ああ、すみません。宝来さん」
「お前さんの気持ちもわかるが、ここに居たんだし落ち着け」
「……はい」
どちらが歳上かは知らないが、まるで子供のようにあやされていた。
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