名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

櫛田こころ

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サンタクロース

第2話 名古屋の大雪②

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 そのためには、是が非でも頑張らないといけないので……美兎みうは重い雪をスコップでトラックの近くまで運んでいく。


「おや、湖沼こぬまさん」


 雪を運んでいたら、見覚えのある人物が雪をトラックに積む袋に入れていた。清掃員の三田みたである。朝っぱらから、しかも会社ではない場所で除雪作業とは少し驚きだった。


「三田さん!? お、おはようございます!!」
「おはようございます。わざわざ湖沼さん達まで、こんなところで除雪作業を?」
「三田さんこそ」
「はは。僕は清掃員ではあるんですが、うちの会社はここも契約先なもので」
「なるほど……」


 とは言え、初老を越えた三田にはいつも以上に重労働に思えるのだが。しかし、三田は歳を感じさせないキビキビとした動きで、クレーンが引っ張り上げる袋へとどんどん雪を入れていったのだ。

 それともう一つ。

 三田ではないが、似たような年代の男性スタッフが鼻歌を歌いながら除雪作業を進めていた。鼻歌がうまいのも気になったが、除雪に慣れていない美兎よりもよっぽど戦力になるくらいに。

 一瞬だけ目があったが、ついこの間界隈で出会った季伯きはくに負けず劣らずなロマンスグレーの男性だった。季伯に比べるとチャームポイントが高めな彼は、美兎と目が合ったらウィンクしてくれたのだ。

 少しびっくりしたが、見惚れててはいけないと美兎は田城たしろを手伝うべく持ち場に戻った。

 それから約二時間。美兎ら女性スタッフの労力は大したことはないが、三田や他の清掃員の男性らのお陰でデパートの搬入口や道路は確保が出来た。

 終わってからは、若い方の清掃員が差し入れだと温かい缶のココアを持ってきてくれた。

 受け取った時の温かさに、美兎もだが田城も蕩けそうになってしまう。


「あったか~い……」
「ほんと。頑張った甲斐があったね~?」


 プルタブを開けて、ひと口飲んだら思わず溶けてしまいそうになったほど。

 この後美兎らは、正午までは半休扱いなのでゆるやかに会社まで歩く予定だ。なにせ、今日の夜中の方が本番。ディスプレイや広告の変更などの雑務が待っている。

 けれど、移動中に転けて怪我をしたら元も子もないので、ココアをゆっくり飲んでからスコップを業者に返して荷物を取りに行く。

 ただ、移動前に三田にもう一度声をかけようとしたら……あの鼻歌を歌っていた男性と何かを話していた。三田と比較すると背丈もあり背筋もしっかりしている男性だ。


「美兎っち~、あのおじいちゃんスタッフかっこいいね?」


 少々惚れっぽい田城までこう言うくらいだから、やはりあの男性は素敵に違いない。しかし、目的はきちんとしなくてはなので、三田の前に立つと二人とも美兎を見てくれた。


「お疲れ様でした。私はこれで」
「はい。お疲れ様です。僕らもあとで向かうので」
「重労働したのに、お疲れでは?」
「なーに? まだまだ若い子達には、おじさん達負けないよー?」


 答えたのは三田ではなく、向かいの男性スタッフ。チャーミングな笑顔とウィンクに少しドキッとしたが、すぐに首を横に振ってからもう一度腰を折った。


「お疲れ様です。では、お先に」
「あ、そうそう。お姉ちゃん、西創の子だよね?」
「? はい?」
「僕は真鍋って言うんだけど……ちょっとだけお宅んとこにびっくりを届けておいたからよろしく!」
「? わかりました」


 びっくりとはいったいなんなのか。少々気になったが、真鍋と名乗った彼が言う感じだと会社に行けばわかるのだろう。

 美兎の荷物も確保してくれていた田城のとこに戻り、二人で転けないように地下道も使ってから会社に向かえば。


「えー!?」
「これって……」


 会社の玄関口の脇にだが。

 とてつもなく、大きくて精巧に出来ている雪だるまが立っていたのだ。美兎達も見上げてしまったが、他の社員達も通り過ぎずに写真をスマホなどで撮るくらい。

 あのロマンスグレーな男性は、見た目を裏切らずにお茶目なんだなと理解出来た。かく言う、美兎らもついつい写真を撮ったのである。
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