73 / 204
ぬらりひょん
第1話『色々おでん』①
しおりを挟む名古屋中区にある栄駅から程近いところにある錦町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三とも呼ばれている夜の町。
東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。
そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。
あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。
小料理屋『楽庵』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。
クリスマス当日は、半分が災難。半分が嬉しい出来事ではあったけれど。
金曜日の今日、美兎はうきうきしていた。クリスマスではダメになってしまったが、座敷童子の真穂の提案で……錦の界隈で開催されるクリスマスのイルミネーションイベントに行くことには決まった。
猫人であり、今の美兎が想いを寄せている火坑と。あの時の体調はもう万全。元彼へのトラウマについても火坑の料理で落ち着くことが出来た。ならば、仕事にも復帰出来た今は、そのお出掛けに向けて頑張るしかない。
断固として、デートではないと自分に言い聞かせて。真穂も一緒だから、そもそもデートではないのだからだ。
定時過ぎに上がることが出来た美兎は、雪はもうないがビル街特有の突き刺すような風に耐えながら……丸の内から久屋大通。次に栄へとゆっくり足を進めて行く。
イルミネーションイベントの時間は午後の九時以降らしく、先に火坑が腹ごしらえをするのに料理を準備しておくと言ってくれたのだ。なので、今日は実質美兎と真穂が楽庵を貸し切り。
体調は戻ったので、前回とは違って心の欠片を手渡せる。前回のお礼も兼ねてたくさん渡したいところだが、美兎の心の欠片は至高の品らしく売り上げに大きく貢献出来ているらしい。
だからか、渡し過ぎも良くないと真穂には注意されているのだ。とりあえず、界隈の入り口を抜けていくと……二日前にクリスマスは終わったと言うのに、界隈にはまだイルミネーションの装飾などが残ったままだった。
美兎も簡単に話を聞いただけだが、今日のイベントのためかもしれない。
あやかし、つまり妖怪達のイベントは人間を模倣した事から始まっているそうだが、どんなイベントになるのか興味はある。あやかし達だから、きっとあの魔法のような妖術を使うかもしれない、と。
そうすると、ファンタジー感満載のイベントになるのなら。
火坑と見に行くだけでも、きっと楽しい。寒いのに自然とスキップになり、楽庵まであっという間に到着した。着いた時に、影から出てきた真穂には少し呆れられたが。
「その勢いで、大将に告白でもしなさいよ?」
「……無理」
それとこれとは別だと、首を横に振れば真穂にはさらに呆れたとため息を吐かれた。
とりあえず、中に入るとお出汁のいい香りが店内に充満していたのだった。
「いらっしゃいませ」
カウンターから、火坑がひょこっと顔を出してくれた。その表情はとても生き生きとしている感じである。
「たーいしょ! 今日のご飯はなーに?」
「クリスマスは終わりましたが、冬はまだまだ続きますからね? なので、おでんです」
「おでん!?」
「わーい!!」
ただ、大嫌いなこんにゃくが入っているかと思うと少し憂鬱になってしまう美兎である。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる