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ぬらりひょん
第3話 界隈イルミネーション①
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おでんをたらふく堪能した後には……いよいよ今日のメインイベントである界隈でのイルミネーションを見に行くのに準備をした。
本当は可愛い服などでおしゃれをしたいところだったが、週末でも明日以降はもう片付けてしまうそうなので、金曜日の今日が最終日らしく。
仕方がないので、仕事の服装に加えてもこもことしたジャンパーとスヌード。ちっとも可愛くないが、名古屋でも界隈の寒さもなかなかなものなので、油断してはいけない。
風邪を引いたら、一人暮らしの美兎には大変で済まないからだ。実家とは違って看病してくれない家族がいないので、できるだけ体調を崩さないように心がけている。先日のトラウマについては、イレギュラーではあったけれど。
「では、行きましょうか?」
片付けを粗方終わらせた火坑も割烹着にジャンパーを着込んでから、店を出ようと言ってくれた。猫のあやかしでも寒がりなんだなと、意外な一面を見れて美兎の心が少し温まった。
電気と火の元を再確認してから、美兎と真穂には先に店の外で待つように言い、終わったら火坑も出てきて引き戸を閉め……鍵をかけるかと思ったら、手をかざしただけ。それでも、一瞬だけ戸が光ったけれど。
「自宅でもだけど、あやかしの場合は自分の持ち物には鍵は鍵でも妖術の鍵をかけるのよ? 真穂も自分の家ではそうしているわ」
「……真穂ちゃんの家があるのに、私と居ていいの?」
「座敷童子としての家があるだけよ? 真穂は美兎と一緒にいたいから、今は選んだんだもの」
「……ありがと」
火坑とは違う意味で、真穂といると心が温かくなってくる。それはかけがえのない、美兎と真穂との絆だ。まだ出会って一年も経っていないが、真穂の支えもあって今があるのだから。
「行きましょう」
鍵をかけ終えた火坑がそう言ったので、彼が先頭になってイルミネーションへと案内してくれる。錦三と外観が似ている界隈ではあるが……錦三だと開けた場所などほとんどない。栄のように、一部開けた場所でもあるのだろうか。
とりあえず、はぐれないようにしつつ、後ろから歩いてくれる真穂にぶつからないようにして火坑についていく。いくら、真穂達がいても質の悪いあやかしがちょっかいをかけないよう、二人が美兎を守ってくれているための並び順である。
ほんの少し前に、火坑がいるだけでもときめいてしまう。この前は手を繋がれたが、あの時の温かさを美兎はまだ忘れてはいない。ドキドキして、とても嬉しかった。
だから、もしかして……と思っても、高望みしてはいけないとその想像を否定した。
「着きましたよ?」
と、いきなり振り返ってきた火坑の顔に少し驚いたが、前方を見るようにと向けられた光景にも驚きを隠せなかった。
「……ステージ?」
しかも、現代風のバンドステージのような舞台が開けた場所に、どどんと立っていた。照明機材の代わりには、何故かお雛様で見るようなぼんぼりの街灯サイズがいくつか設置されている。
イルミネーションと言っていたから、てっきり装飾関連と思っていたのだが、趣向が違うようだった。
「あやかしが勝手にイルミネーションって呼んでいるだけで、ちょっとしたステージがあるのよ?」
教えてくれたのは真穂で、舞台が見えやすいように美女に変身したのだ。すると、周りから口笛の大きな音が聞こえてきた。
「真穂様だ!」
「では、あの人間が守護に憑かれた……?」
「いくらか妖気を感じる?」
「猫人の大将がいるからでは?」
「いやいやいや」
などと囃し立てる声が聞こえるが、小声なので内容まではよく聞き取れなかった。
「やあ、いらっしゃい?」
そんな中、男性の声が近くで聞こえてきた。美兎が振り返れば、思わず『あっ』と声を上げてしまう。数日前にお世話になった、清掃員の男性。
三田と共に除雪作業をしていた真鍋と言う初老の男性が紋付袴姿で、美兎達の前に立っていたのだから。
本当は可愛い服などでおしゃれをしたいところだったが、週末でも明日以降はもう片付けてしまうそうなので、金曜日の今日が最終日らしく。
仕方がないので、仕事の服装に加えてもこもことしたジャンパーとスヌード。ちっとも可愛くないが、名古屋でも界隈の寒さもなかなかなものなので、油断してはいけない。
風邪を引いたら、一人暮らしの美兎には大変で済まないからだ。実家とは違って看病してくれない家族がいないので、できるだけ体調を崩さないように心がけている。先日のトラウマについては、イレギュラーではあったけれど。
「では、行きましょうか?」
片付けを粗方終わらせた火坑も割烹着にジャンパーを着込んでから、店を出ようと言ってくれた。猫のあやかしでも寒がりなんだなと、意外な一面を見れて美兎の心が少し温まった。
電気と火の元を再確認してから、美兎と真穂には先に店の外で待つように言い、終わったら火坑も出てきて引き戸を閉め……鍵をかけるかと思ったら、手をかざしただけ。それでも、一瞬だけ戸が光ったけれど。
「自宅でもだけど、あやかしの場合は自分の持ち物には鍵は鍵でも妖術の鍵をかけるのよ? 真穂も自分の家ではそうしているわ」
「……真穂ちゃんの家があるのに、私と居ていいの?」
「座敷童子としての家があるだけよ? 真穂は美兎と一緒にいたいから、今は選んだんだもの」
「……ありがと」
火坑とは違う意味で、真穂といると心が温かくなってくる。それはかけがえのない、美兎と真穂との絆だ。まだ出会って一年も経っていないが、真穂の支えもあって今があるのだから。
「行きましょう」
鍵をかけ終えた火坑がそう言ったので、彼が先頭になってイルミネーションへと案内してくれる。錦三と外観が似ている界隈ではあるが……錦三だと開けた場所などほとんどない。栄のように、一部開けた場所でもあるのだろうか。
とりあえず、はぐれないようにしつつ、後ろから歩いてくれる真穂にぶつからないようにして火坑についていく。いくら、真穂達がいても質の悪いあやかしがちょっかいをかけないよう、二人が美兎を守ってくれているための並び順である。
ほんの少し前に、火坑がいるだけでもときめいてしまう。この前は手を繋がれたが、あの時の温かさを美兎はまだ忘れてはいない。ドキドキして、とても嬉しかった。
だから、もしかして……と思っても、高望みしてはいけないとその想像を否定した。
「着きましたよ?」
と、いきなり振り返ってきた火坑の顔に少し驚いたが、前方を見るようにと向けられた光景にも驚きを隠せなかった。
「……ステージ?」
しかも、現代風のバンドステージのような舞台が開けた場所に、どどんと立っていた。照明機材の代わりには、何故かお雛様で見るようなぼんぼりの街灯サイズがいくつか設置されている。
イルミネーションと言っていたから、てっきり装飾関連と思っていたのだが、趣向が違うようだった。
「あやかしが勝手にイルミネーションって呼んでいるだけで、ちょっとしたステージがあるのよ?」
教えてくれたのは真穂で、舞台が見えやすいように美女に変身したのだ。すると、周りから口笛の大きな音が聞こえてきた。
「真穂様だ!」
「では、あの人間が守護に憑かれた……?」
「いくらか妖気を感じる?」
「猫人の大将がいるからでは?」
「いやいやいや」
などと囃し立てる声が聞こえるが、小声なので内容まではよく聞き取れなかった。
「やあ、いらっしゃい?」
そんな中、男性の声が近くで聞こえてきた。美兎が振り返れば、思わず『あっ』と声を上げてしまう。数日前にお世話になった、清掃員の男性。
三田と共に除雪作業をしていた真鍋と言う初老の男性が紋付袴姿で、美兎達の前に立っていたのだから。
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