名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

櫛田こころ

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ダイダラボッチ

第4話 ダイダラボッチ①

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 あれが、そのダイダラボッチ。

 チカは美兎みうがポスターに近づくと、『ふふ』っと笑った。


「怪異ともあやかしとも違うようで近しい存在。大半の連中には恐れ多いけど……アタシは、あの人に惹かれたわん? 命の恩人でもあったし」
「恩人ですか?」
真穂まほも詳しくは知らなーい」
「けど、真穂様はさっちゃんと会っているでしょん?」
「はぐらかされているわよー?」
「さっちゃん?」
「ダイダラボッチのことよん。名前は更紗さらさ


 チカがオネエだから、勝手に想像していたが……ダイダラボッチは男性か女性からわからない。そもそも、この巨人からは性別がわからないのだ。彼氏か彼女なのか。

 以前だったら、美兎も同性愛者を苦手としていたが。名古屋の中心部で仕事をするようになり、人間の方もだがあやかしとも色々出会いがあった。個性の多い彼らを思うと、同性愛で差別化するだなんて些末なことだ。

 そう思えるくらい、成長している気がした。


「馴れ初めを聞いても?」
「ンフフ~! 聞いてくれるん?」


 話たいのか、チカは頬をピンクにするくらい上機嫌になったのだ。


「出会って、どんなけ?」
「最低三百年だわねぇ?」
「さ……!?」


 歴史はそんなに得意ではないが、たしか江戸時代だったような。あやかしだから、それくらい……いや、もっともっと生きているだろう。火坑かきょうは閻魔大王の補佐官だった前世以降も、今の日本で二百年以上は生きていると聞いた。彼らの時間軸を、美兎のような弱い人間と一緒にしてはいけない。


「あれはそうねん? 諏訪すわ……今の長野県にあるその町で、ちょっと人間らに襲われて逃げてた時よ」
「え?」
狐狸こりって言ったでしょん? 特にアタシの種族は白狐。神の使いに多く選出される……まあ、気位の高い連中の集まりだったのよ。で、おバカな人間がとっ捕まえて金にしようとしたのよ~」
「……ひどい」


 今も、日本だけでなく世界でも密猟などの犯罪は存在するとされている。だが、愛好家に高く売りつければ儲かるという考えを持つ人間もいる。あやかしはどうかはわからないが……彼らも人間を食べていた時代もあった。

 どちらが酷いと言うのも、美兎には簡単な想像しか出来ない。


「で、もうダメだって思った時に……助けてくれたのが、さっちゃん。……ダイダラボッチの彼だったの!」


 振り返るのも辛いはずなのに、ダイダラボッチの話題になると思いっきり顔を輝かせた。


(彼……なんだ?)


 さっきまで思っていた嫌な気持ちが吹き飛ぶくらい、チカの表情で……美兎はダイダラボッチの性別を知るとなんだか納得出来た。ポスターを見直すと、やはり男性のように見えたからだ。


「さっちゃんが人化して助けてくれて……あぁん! 今でも思い出せるわん! あの勇姿!! 人間どもを追い払って、狐姿のアタシを抱っこしてくれたのん」


 どんどんテンションが上がっていくチカにとって、更紗と言うダイダラボッチはとてもとても大事な存在。人間から怪我をさせられたのに、思い出はそちらで占められている。美兎も、恋愛事については元彼より火坑で占められているから……そこは同じだと納得出来た。

 それと、広告代理店のデザイナーなので、このポスターをもっと細かく見ようとしたら……巨人、ダイダラボッチの部分がゆらっと歪んだのだ。
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