名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

櫛田こころ

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百目鬼

第2話 百目鬼・珠洲

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 偶然遭遇したとは言え、放っておけなかった。

 ランチはどうでもいいと横に置いておいて、美兎みう芙美ふみがあわあわしている横にいた女性に近づく。

 パッと見、人間かあやかしかはわからないが。綺麗なストレートヘアが特徴的な女性だった。


「大丈夫ですか!? 吐き気などは!」
「…………」
「えと、えと! 吐いたりはしてなかったよ~! いきなり目の前でふらついちゃってから、ずっとだんまりなの!」
「そうですか。芙美さん、こちらの方とはお知り合いか何か?」
「うん、知り合い! 百目鬼どうめき珠洲すずちゃん」
「あやかし……さん?」
「うん、そう」


 あやかしでも、人化をしたら熱中症のような状態になるのだろうか。ジェイクの場合は着込み過ぎていたせいもあったが。

 わからないが、ここは一応人間界のにしきだ。美兎は珠洲と言う妖の汗をハンカチで拭いてやりながら、もう一度芙美に聞くことにした。


「芙美さん、界隈に移動して、お医者さんに行きましょう」
「え……美兎ちゃんお仕事いいの?」
「ありますけど、人命救助優先です。あやかしさんだからって、死なないわけではないでしょう?」
「あ、うん」

 とりあえず、沓木くつきに通話で事情を話すと。あやかし以外のところは本当だから、頼むと言われたので。珠洲の両側を芙美と協力して支えてから界隈に移動して。

 ゆっくりゆっくりと、芙美の案内であやかしの診療所である、河童の水藻みずものところへ向かうと。


「あれ、美兎さん?」
「お久しぶりです! あの……急患なんですけど」
「はいはい。真ん中の女の子? 種族は?」
「百目鬼、さんらしいです」
「わかった、症状は……汗過ごいですね? 熱中症?」
「おそらく」


 とりあえず、詳しく診断をするとやっぱり熱中症だったようで。

 すぐに点滴で水分補給をさせようとしたのだが。


「さ、て。どこなら大丈夫かな……?」


 水藻はすぐに腕に針を刺さなかった。

 どう言うことだろうと首を傾げていたら。

 珠洲の腕に、数カ所切り込みが見え出して。

 傷かと思ったら、いきなりカッと開いて複数の目玉が出てきたのだ。


「う、わ!?」
「あれ~? 美兎ちゃん、百目鬼見るのはじめて~?」
「は……じめて、です。どうめきってどう言うあやかしさんなんですか?」
「両腕に、百くらいの目玉があるんだよ~? 今は弱ってるから、全部は見えないけどー」
「……うん。とりあえずここに」


 水藻は針を刺す箇所が見つかったようで、すぐに処置してから点滴の時間が始まった。

 目玉は針が刺さってから、だんだんと閉じていってまたまっさらな綺麗な腕に戻っていく。


「……びっくりしました」
「百目鬼は種族の関係で少ないですから。とりあえず、早期発見で助かりましたよ。一時間くらい様子見したら大丈夫ですね」
「……良かった」


 命の危機にさらされていないのなら、深く安心出来た。

 思わず深呼吸すると、芙美にぽんぽんと肩を叩かれた。


「美兎ちゃんがいてくれたお陰だよ~。私だけじゃどうしようもなかったし……とりあえず、美兎ちゃんは会社に戻ったら?」
「え。でも……まだ完全回復はしてないし」
「見た感じ、お昼ご飯とか食べてないでしょ~? 仕事は遅れていいとも言われてるけど、こっちはもう大丈夫だよ。私もいい勉強になったから~」
「……ありがとうございます」


 たしかに、美兎は珠洲とは知り合いでもなんでもない。

 それに、もう安心だとわかれば人間の美兎には用済みだ。いても何も役には立たない。

 だから、真穂まほが今日は影にいたので出てきてもらい。二人で人間界の錦に向かって、一緒に遅めのランチを取ることにした。


「だーいじょうぶ。熱中症だったけど、あやかしの生命力を舐めないでほしいわ。水藻も居るし、多分夜になる前にはぴんぴんしてるはずよ」
「……そうだといいけど」
「芙美がいるんなら、楽庵らくあんに連れてくるんじゃない?」
「……大丈夫かな?」


 あやかしでもあんな状態になったのだから、美兎は心配し過ぎてせっかくのランチを半分近く残してしまったのだった。
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