189 / 204
百目鬼
第3話 楽庵で再会
しおりを挟む
まだ気にはなっていたが、真穂の言う通り心配し過ぎも良くないだろう。
珠洲を助けたことで仕事は遅れたが、まだ許容範囲だった。むしろ、上司には緊急事態でも良く対処出来たとも褒められた。
美兎は大したことをしていないのに、と思ったが。沓木には素直に受け取っておけと言われた。とりあえず、定時を少し過ぎたくらいに仕事は終われたので。
当初の予定通りに、楽庵に行くことにした。
手土産はいつものrouge。季節のフィナンシェがあったので、隆輝に頼んで包んでもらい。
界隈に通じる小道を歩いたら、歩いて歩いて火坑がいる楽庵にと到着した。
真穂は今日海峰斗と会うのでここにはいない。だが、美兎には様々な加護があるので、あやかし達は不用意に近づいて来ないのだ。けれど、顔見知りになった一部は美兎を見ると気さくに挨拶してくれる。
「こんばんは~」
美兎が中に入ると、先客がいたのが見えた。
途端、のっぺらぼうの芙美もだが。あの百目鬼と言うあやかしの珠洲も。カウンターの席に座っていたのだ。
もう顔色は良かったが、まだ回復したてだからか酒ではなく、湯呑みでお茶を飲んでいた。
「いらっしゃいませ」
「美兎ちゃん! 昼間はありがとう~~!! 珠洲ちゃんもう完全回復だよ!!」
「ふ、芙美さん……!」
「……良かったです」
危うく力が抜けそうになってしまったが、珠洲が席を立ったのでシャキッとした。
「……あの。お礼にと思って……」
差し出されたのは、美兎が今手にしているのと同じrougeの紙袋。おそらく、情報屋でもある芙美が教えたのだろう。美兎がここの店のお菓子を良く買うのだと。
少し嬉しくなり、火坑に先に手土産の方を渡してから受け取った。中身を聞くと、マカロンシリーズらしい。
「昼は……本当にありがとうございました。まだ名古屋に来たばかりで……あんなにも暑いだなんて知らなくて」
さっきも思ったが、珠洲は背も高いし綺麗なストレートヘアだが、声は芙美よりも可愛らしかった。腕の目には驚いたが、今は長袖で隠れているので少し安心した。まだ全部ではないが、妖に慣れたわけではないのだから。
「いえ。無事で良かったです。改めて、湖沼美兎です」
「!……百目鬼の、珠洲……です。四国から来ました」
「わあ! 四国ってまだ行ったことないです!」
「温暖ですけど……ここみたいに凄い日差しじゃないので、過ごしやすいです」
「けど、名古屋に?」
「……こんなのですけど。一応人間達に混じって生活してるので。……仕事は、ドラッグストアの店員です」
「そうなんですか?」
とりあえず座ろうと、珠洲と美兎は隣同士で座ることになり。
年齢差はともかく、意外に話しやすかったのでだんだんと敬語も外れていき、真穂や花菜のように友達になれたのだった。
「じゃ! 親交も深まったし、今日は食べて飲もう!」
「芙美さん、珠洲ちゃんはまだ無理じゃ?」
「あ、そっかぁ? じゃ、食べまくろう!!」
「ふふ。僕の料理でよろしければ」
「あ、心の欠片出します?」
「お願いしますね?」
今日出た心の欠片は。
自然薯、と言う山芋の一種だった。美兎には馴染みがなかったので、見分けがつかないが。
「自然薯! 天ぷらも美味しいんですよね!!」
珠洲は大好物なのか、はしゃぎ出したので。せっかくだから、と火坑はその天ぷらを作ることになったのだった。
珠洲を助けたことで仕事は遅れたが、まだ許容範囲だった。むしろ、上司には緊急事態でも良く対処出来たとも褒められた。
美兎は大したことをしていないのに、と思ったが。沓木には素直に受け取っておけと言われた。とりあえず、定時を少し過ぎたくらいに仕事は終われたので。
当初の予定通りに、楽庵に行くことにした。
手土産はいつものrouge。季節のフィナンシェがあったので、隆輝に頼んで包んでもらい。
界隈に通じる小道を歩いたら、歩いて歩いて火坑がいる楽庵にと到着した。
真穂は今日海峰斗と会うのでここにはいない。だが、美兎には様々な加護があるので、あやかし達は不用意に近づいて来ないのだ。けれど、顔見知りになった一部は美兎を見ると気さくに挨拶してくれる。
「こんばんは~」
美兎が中に入ると、先客がいたのが見えた。
途端、のっぺらぼうの芙美もだが。あの百目鬼と言うあやかしの珠洲も。カウンターの席に座っていたのだ。
もう顔色は良かったが、まだ回復したてだからか酒ではなく、湯呑みでお茶を飲んでいた。
「いらっしゃいませ」
「美兎ちゃん! 昼間はありがとう~~!! 珠洲ちゃんもう完全回復だよ!!」
「ふ、芙美さん……!」
「……良かったです」
危うく力が抜けそうになってしまったが、珠洲が席を立ったのでシャキッとした。
「……あの。お礼にと思って……」
差し出されたのは、美兎が今手にしているのと同じrougeの紙袋。おそらく、情報屋でもある芙美が教えたのだろう。美兎がここの店のお菓子を良く買うのだと。
少し嬉しくなり、火坑に先に手土産の方を渡してから受け取った。中身を聞くと、マカロンシリーズらしい。
「昼は……本当にありがとうございました。まだ名古屋に来たばかりで……あんなにも暑いだなんて知らなくて」
さっきも思ったが、珠洲は背も高いし綺麗なストレートヘアだが、声は芙美よりも可愛らしかった。腕の目には驚いたが、今は長袖で隠れているので少し安心した。まだ全部ではないが、妖に慣れたわけではないのだから。
「いえ。無事で良かったです。改めて、湖沼美兎です」
「!……百目鬼の、珠洲……です。四国から来ました」
「わあ! 四国ってまだ行ったことないです!」
「温暖ですけど……ここみたいに凄い日差しじゃないので、過ごしやすいです」
「けど、名古屋に?」
「……こんなのですけど。一応人間達に混じって生活してるので。……仕事は、ドラッグストアの店員です」
「そうなんですか?」
とりあえず座ろうと、珠洲と美兎は隣同士で座ることになり。
年齢差はともかく、意外に話しやすかったのでだんだんと敬語も外れていき、真穂や花菜のように友達になれたのだった。
「じゃ! 親交も深まったし、今日は食べて飲もう!」
「芙美さん、珠洲ちゃんはまだ無理じゃ?」
「あ、そっかぁ? じゃ、食べまくろう!!」
「ふふ。僕の料理でよろしければ」
「あ、心の欠片出します?」
「お願いしますね?」
今日出た心の欠片は。
自然薯、と言う山芋の一種だった。美兎には馴染みがなかったので、見分けがつかないが。
「自然薯! 天ぷらも美味しいんですよね!!」
珠洲は大好物なのか、はしゃぎ出したので。せっかくだから、と火坑はその天ぷらを作ることになったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる