スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第731話 基本的に自由行動なので

 温泉旅行に来たけど、基本的には『自由行動』。

 そのため、一応『護衛任務』としてきている『シリウスの風』全員ものびのびとしていることに変わりない。

 とくれば、エリーを誘ってまたお散歩デートくらい……しか、僕の恋愛偏差値では思いつかなかった。その程度しか、まだまだ行動的にはなれない。

 だから今も、エリーを誘ってお庭散策しているんだけど。


「「……」」


 気まずいというか、恥ずかしい空気が漂っている。多分だけど、朝の出来事を同室のシェリーが伝えたんだろうってことは想像がつく。僕が誘っても、『あ、うん』みたいな返事しかもらえなかったんだもん。

 歩きながら会話が出来ないとか……多分、初めてじゃないかな? 昨日は夜だったから遅かったし静かにしてたらいいかなと雰囲気的に思っていただけで。


(……なにか、なにか!! 会話!?)


 恋人らしい会話でなくとも、なにか話題がないと心苦しい!!

 かといえ、僕が浮かぶのってやっぱり『パン』とかだから……。


「……ここで言うのもなんだけど」
「あ、うん?」
「エリーに、今度試食してもらいたいパンがあるんだ」
「……新作? ラティストたちじゃなくていいの?」
「もちろん。皆にも食べてもらいたいけど。冒険者の意見も聞きたくて」
「どんなパンなの?」


 よしよし、いつもの調子ではあるけど無言でいるより悪くない。


「生地がね? 粉と水がほぼ同量なんだけど、発酵とかの手間を繰り返せば……ふわふわでもちもちのパンになるんだよ。僕のいたところだと、『高加水パン』って呼んでたんだ」
「……聞きなれない手法だし、面白い名前のパンね?」
「バケットとかバタールみたいに、単体で食べるよりも食事といっしょに食べるパンかな? 個人的にはスープやシチューの主食に提案したいんだよね?」
「まだ試作してないのなら。ポーションとしての効果はわからないって感じ?」
「そうだね。……軽傷回復とかそれくらいにしたいけど。まだコントロールが難しいし」
「ヴィンクスさんも同じこと言ってたわね?」
「こればっかりは、『ガチャ運』みたいなものかな」
「ガチャ??」


 普通に話が進んでて思っていたけど、エリーにも異世界用語はまだ全部教えていないからわかんない言葉が出て当然。だけど、ふたりだけだし教えても大丈夫なのとかは惜しみなく伝えるとも。


「エリーたちだと。任務先で宝箱とかって出るの?」
「え? まあ、そうだけど……ダンジョンの話と関係あるの?」
「ちょこっとね。宝箱の中身は開けないとわからないでしょ? 僕らの作るパンの効能もランダムだから似てるんだー」
「ああ、なるほど。ガチャって、いうのは?」
「それを楽しむ『ガチャガチャ』とかいう遊びなんだよ。くじとか景品を中に入れたカプセルを回すって意味に近いかな?」
「へぇ……ちょっと、面白そう」


 話題が色気ゼロでも……いいよね? ぎこちないよりずっといいはずだ! 

 だけど、ぽかーんとしているエリーとの距離は少し離れている感じだったから……昨日のように、『手』だけは繋ぐくらいはしますとも。またびっくりされたけど、すぐに照れた可愛い笑顔になって……何故か、僕との距離を詰めてきた?


「……エリー?」
「……じっと、してて?」


 と、ほぼゼロ距離になったかと思ったら。口じゃないけど、ほっぺの方にあったかくて柔らかい感触が!?

 なにかはわかったけど、先にしてやられた感が!? 自分が非常に情けなくなったが、これはまたとないチャンスじゃないか!!?

 離れていくエリーの肩を慌ててガシッと掴んだが……照れてそっぽを向きそうだった彼女の顔に、ゆっくりと近づけてみる。これで僕らも……と、あと数センチの距離で事件は起きた。


『いけいけ~!』
『エディさん、ばれますって』
『だいじょぶだいじょぶ』
『いやいや、この距離じゃ』


 エリーにも聞こえたのか、はっと振り返った場所には……エディとトラヴィスがしゃがみながら僕らの様子を眺めていた。慌てて離れたら、僕が声を上げる前にエリーがダッシュしてエディにげんこつをお見舞いしたのだった!?


「陛下と言えど、やり過ぎ!!?」
「ははは!! いいもの見せてもらったぞ~」
「……ごめん、ケント。一応止めたんだけど」
「……トラヴィスも同罪」
「え!?」


 止めてくれてもいっしょに来たことに変わりないので、僕も彼に軽くげんこつをお見舞いしたのです。
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